帰ってきたルル、おかえり!①
『婚約破棄する期間は、もう既に締め切りました!』をご覧くださっている皆さま、お久しぶりです。完結後の番外編として、久々に更新しております。
※前半と後半の視点は、別人物となっていますので、ご注意くださいませ。
「お久しぶりです!…皆さんも、お元気でしたか?」
この場に集まってくださった皆さまに、私は笑顔で挨拶を致します。久しぶりに見る懐かしい顔ぶれに、嬉しくて…ちょっぴり泣きそうになりました。私を見られた皆さまも、笑顔で迎えてくださいます。
「ルル、おかえりなさいませ。貴方がいらっしゃらないと、とても静かで…寂しかったことでしてよ。」
「ただいま、麻衣沙!…私も凄~く、寂しかったんです。麻衣沙が傍にいない辛さが、私もやっと分かった気も致します…」
ルルこと私『斎野宮 瑠々華』は、暫し海外に行っておりました。海外では私の暴走ぶりは珍しいと言うか、面白がられていたと言うか、兎に角私がどういう状況になろうと、完全に放置されておりました。適度に止めてくれる麻衣沙は、私の救世主だったんですね~。私にはやっぱり、麻衣沙が一番ですわ!
立木家の若奥様こと麻衣沙は、私の幼馴染で大の親友でして、現在1児の母となられておられます。彼女がご出産なさった時から、随分と時間も経過しておりますので、まだ赤ちゃんだったお子様も、大分と大きくなられたことでしょう。
「…まあ。わたくしの存在意義を、やっと理解してくださったのかしらね?」
「そうなの。誰も私の暴走を止めてくださらなくて。いい加減、私の方が疲れてしまいますわ。お陰で麻衣沙の有難みを、感じておりましたのよ。」
「…………(あ~なるほど。そういうことでしたか…)」
麻衣沙もにこやかに、私を迎えてくださいましたが、何とな~く遠い目をされたような気が、致します。私も人妻になったことですし、そろそろ彼女から離れねばならないのですが、私は一向に気にしていませんわ。そういうわけですから、今後もよろしくお願いしますわね?
「ルルお姉さま、おかえりなさい。本当にお元気そうで、何よりです。私も相良君も、相変わらず元気でしたよ。」
「まあ、エリちゃん!…お元気そうで何よりですわ。エリちゃんも短大をご卒業なさって、今はOLさんなのですよね?…私もこの世界でOLになって、バリバリ働いてみたかったですわ…」
わあ~い、エリちゃんも来てくださったのね?…ちょっぴり大人っぽくて、相変わらず可愛いなあ。彼女ももう、成人されていらっしゃいますものね。社会人かあ、私も憧れちゃいます。前世は一般家庭で育ちましたから、OLとして働いていたかもしれませんけれど、その辺りは今もぼんやりしているんですよね…。
「……ふふふっ。ルルお姉さまはご結婚後も、相変わらずですのね。ルルお姉さまがOLなんて、想像もできないですよ。だって……(あの王子が溺愛する奥さんを、野生動物が戯れる場所になど、送り出すわけがないし…)」
「…???…」
私もOLしたかったと申しましたら、何故かエリちゃんのお顔が……。私のOL姿が想像できないと、満面の笑顔で仰ったお顔が、何故だか怖い…。誰かさんに似た黒いオーラを感じて、私はビクリと肩を揺らしたぐらいで。
……っ!…エ…エリちゃん、どうなされたの?…何だかお顔が…いえ、素敵な笑顔が怖いのですが…。うん?…それに、どうして想像ができないのでしょう?…そんなに私のOL姿が、似合わないということかしら?…まあ、そうですよね。OL姿のエリちゃんをまだ拝見しておりませんが、私なんかよりもずっとず~っと、似合っておられることでしょう。一度ぐらいはそのお姿を拝み、堪能したいのです!
彼女の恐ろしいオーラを直視できなくて、私は帰国早々妄想の世界へと、旅立ったようでした。海外では誰も止めてくださらなかったけれど、今は麻衣沙も直ぐ傍におられますし、大丈夫でしょうとばかりに、安堵しておりました。
「…あらら、瑠々ちゃんったら…。また妄想モードに、突入されたみたい。」
「…そのようですわね。外国では面白がられていたようですし、いい加減に大人らしくなっていただきたいですわ…」
「…ふふっ。ルルお姉さまはマイお姉さまのこと、本当にご信頼されているんですね。ルルお姉さまがお変わりなくて、逆に安心しましたわ。」
「瑠々華さん、お幸せそうで…良かったですわ。一時期はご出産で、体調を崩されたとお聞きしておりましたので…」
「「「………」」」
私が聞こえていない間、4人の間ではそういう会話が、あったそうな…。申し上げるまでもなく麻衣沙を始め、『雨川 英里菜』ことエリちゃん、『霧島 美和乃』こと美和ちゃん、そして二之倉家のご令嬢・悠里様、此方4名の方々です。皆さまは私同様、同じく日本人だった前世の記憶を持ち、この世界が乙女ゲームと似た世界だと、存じておられます。
私達の友情は乙女ゲーム後も、現在進行形なのでしてよ、ふふっ……
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1年間の海外出張から、無事に昨日帰国された斎野宮家の若夫婦と、立木家の若夫婦と呼ばれるわたくし達夫婦との関係は、夫同士と妻同士が幼馴染で、且つ親友同士でもあると申しましょうか。
大学を卒業し結婚した後、あっという間に月日が過ぎていき、斎野宮家の若旦那となられた樹さんは、突如として海外赴任を命じられようでした。彼の妻になられたルルも共に、赴任先に付いて行かれ。これほど長い間、彼女と離れて過ごすこともなく、わたくしは密かに涙に暮れておりました。それなのに、ルルは実に呆気なく旅立って行かれたのです。本当に薄情なお人なのですから、ルルは……
知らない国で妊娠なさって、慣れない国でご出産をなさったと知って、今直ぐにでも飛んで行きたいと、願ったほどですわ。どうやら杞憂でしたと、安心致しましたが。誰とでも仲良くなれるルルは、海外生活も謳歌なさったようですね?
愚痴を零されたようでいて、其れなりに上手く地元の方々と、仲良く過ごしておられたようですわ。人付き合いの苦手なわたくしには、羨ましい限りでしてよ。恥ずかしながらわたくしも出産を経験し、ルルを気掛かりに思いながらも、慣れない子育てに忙しく過ごしておりましたのよ。
今日此処にお集まりの皆さま、英里さん・美和さん・悠里様とは、時折お会いしておりました。光条さまと悠里様は、ルル達が海外赴任なさる直前にご結婚をされ、悠里様は現在妊娠なさっておられ、今年の年末に出産予定とのことですわ。
矢倉君と美和さんは今年、ご結婚されるご予定でして、結婚式は来月迎えられるのですが、既に美和さんは妊娠中ですし、出来ちゃった婚となりますわね。お2人は大学卒業の直後に、同棲をされておられるそうですし、事実婚のようなものですわね…。妊娠が判明した時点で、籍だけは先に入れられたようですが。
そして…右堂さんと英里さんは、来年以降に結婚しようという、お約束をなされたそうですわ。わたくし達女性陣の中では唯一、今後もキャリアウーマンとして働くことを、結婚後もお仕事を続けると、宣言なさいましたのよ。
ルルもわたくしも悠里様も、名のある家の若奥様として、夫である若旦那さまを支えつつ、家や会社という繋がりのある方々と、お付き合いを優先していくことになりますわ。専業主婦でありながら、社長夫人などという肩書きを持ち、陰日向に夫を支えねばなりません。夫が職務に専念する為にも、妻のわたくし達は取引相手のご夫人の方々と、仲の良い関係を築くのです。そうして、家や会社と繋がりのある関係者と、縁を結び良い関係を繋ぐことが、わたくし達の職務でもありますの。
一般家庭に嫁ぐ美和さんは、大学卒業後はショップの店員さんとして、勤めていらしたようでしたが、妊娠なさって以降は仕事を辞め、今は家事手伝いという形で、お料理教室にも通っていらっしゃるそうでして。
生粋のお嬢様であるわたくしと悠里様は、専業主婦と申し上げながらも、家には家政婦さんも雇っておりますし、料理をすることはございません。ルルに関しては前世の頃から、意外にもお料理が得意でしたようで、普段は真登里さんが家事をされるのですが、偶に自らお菓子作りをされるそうですのよ。
英里さんは元々お料理が得意ですし、美和さん同様に一般家庭に嫁ぐことになりますから、家政婦さんは雇われないことでしょうね。このようにわたくし達の家柄には、格差が其れなりにございますけれど、仲良く致しておりますわ。
今日はルルを交えて、わたくし達は久々の女子会を開いております。何しろルルがご参加なさるのは、1年ぶりなのですもの。積もるお話も、沢山ございましてよ。やはりルルが戻られますと、単なる女子会と申しましても、賑やかで華やかな雰囲気になりましたわね。ふふふっ……
「…あうう〜!…あ、あう〜!」
「あらあら…リリったら、どうしたの?…お腹が空いたの?…それとも、オムツを替えてほしいのかしらね?」
流石、場を盛り上げるのがお上手な、ルルですわねえ…と、わたくしが感想を抱いておりました、その時。可愛らしい幼子の声が、わたくし達の耳に入って参りました。如何やら、ルルが連れて来られた赤ちゃんが、愚図り出された模様です。
ルルも母親になりましたのね…と、テキパキと我が子をあやすお姿に、お1人でも海外で頑張っておられたと、ご成長なさったルルに感銘致します。
「ルルお姉さまが、無事で良かったです…」
「本当にそうよね。難産と聞いて、ビックリしたわ…」
「そうですね。いつも元気な瑠々華さんが、意識をなくされるほどとは…」
わたくしも…樹さんから、このお話をお伺いした時には、驚きましたわ。ルルを失う可能性に、怖くなりましたのよ。本当に……
「…あっ、その話ですが…。初出産で陣痛が長く続いて、出産するまで半日以上かかりましたけど、お医者さんからの説明では、至極普通の出産みたいで。旦那様が、大袈裟でしたのよ。」
あっけらかんと申されるルルに、わたくし達の方が呆気に取られます。わたくし達の憂いは、何でしたの…と。
前半は瑠々華視点、後半は麻衣沙視点となります。前半・後半の再会は、同じ日の出来事です。本文中の( )内のセリフは、彼らの心中の声を表しています。
今回のストーリーは、62話『補足&おまけ話』の後日談となります。婚約者達が大学卒業したのを機に、樹と岬は大学院在学中にも拘らず、各々結婚しています。先に岬と麻衣沙が、その数か月後に樹と瑠々華が結婚。大学院卒業後、樹は斎野宮家の経営する系列企業に、岬は立木家の経営する企業に就職しました。就職1年目で樹が海外転勤となった為、夫婦で赴任し1年後に帰省しています。
※今回は同じ期間中の出来事を、各々の別の視点で見たり感じたり、そういう状況になるようにしようと、筆が赴くまま書いた次第です。
※タイトルに『①』と付けているのは、まだ予定段階で更新時期も未定ではありますが、近いうちに『⓶』を更新する予定が、あるからでして…。遅くとも来月中、更新予定で書いています。それまでは暫し、お待ちくださいませ。また『①』の続きではなく、同様に別視点となる予定ですので、ご承知願います。




