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婚約破棄する期間は、もう既に締め切りました!  作者: 無乃海
本編終了後の番外編
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後日譚3 平穏な幸せを手にして

 前回と同じ人物の視点での、後日譚です。但し、前日譚の内容に近い…というべきでしょうね。最後の方だけは、完全な後日譚が入ってます。

 あの後、俺達は樹達と無事に合流し、雨川(あまかわ)さんとも合流出来た為、彼女を紹介してもらう。樹は雨川さんに、「君の彼氏も、紹介してほしい。」と、右堂(うどう)君を紹介してもらえるよう頼み、呼び出してもらうこととなる。そして樹は既に、光条も呼び出しているようだ。ライバルでもある光条が、よく…了承してくれたな。


その上、樹は…何と、羽生崎(はぶさき)教授まで呼び出していたのだ。麻衣沙から教授も攻略対象だと聞いた時には、俺も心底驚いた。樹はどうやって、教授を呼び出したのだろうか?…そう不思議に思って、訊いてみると…。


 「例の浪人生ですが、教授の婚約者にも害を与える可能性が、出て参りました。ご足労ですが、この日のこの場所に来ていただけませんでしょうか?」


なるほど…。()()()()()()()()よな…。後は教授が信じて、来てくださるかどうかである。質の悪い冗談だと捉えられ、相手にされないかもしれない。しかし…生徒とは言えども、樹は斎野宮家の跡取りだ。その彼を丸っと無視するのは、教師として出来ない筈…。あの大学は一応、斎野宮家の関係者の経営だしな…。彼を怒らせるのは、得策ではないだろう。


羽生崎教授が合流されなくとも、あの女(ヒロイン)は…教授には興味がなさそうな気がした。教授の家柄はそう悪くもなく、良いとも言えない家柄でもある。然も、教授は今年28歳で、あの女(ヒロイン)よりも10歳年上となる。教授としてはまだお若いお人だが、学生から見れば…小父(おじ)さん扱いとなるだろう。


教授も攻略対象だけあり、それなりのイケメンでインテリだ。高学歴で高収入の男性を狙うならば、お得な物件というヤツだ。OL女性ならば、迷わず狙うだろう。しかし、あの女(ヒロイン)は高校を卒業したばかりの浪人生で、年上の大人の男性が好みであれば、教授は恋愛範囲だろうが、あの女(ヒロイン)は少なくともそうではなさそうだ。その上に自分が玉の輿になることを、一番に考えていそうである。それならば、俺達の方を狙うだろうな。高収入よりも玉の輿を、狙う筈である。


どちらにしろ、教授はもうすぐご結婚される予定だ。教授の気が変わることは有り得ないし、教授があの女(ヒロイン)と結婚すると仮定しても、あと4年は待たねばならない。その頃には、教授は30代になる。それだけでも、4年の差は大きいよな…。


その後、思ってもいない展開が待っていた。あの女(ヒロイン)が既に、鉢合わせしていたからである。俺達が今から会う予定の人物達に。何時(いつ)ものように意味の分からないセリフを吐き、矢倉(やぐら)君達に絡んでいた。今は…()()()()()()()()()()()お陰で、あの女(ヒロイン)のしたいことが、理解出来るようになった。…いやいや、理解はしたくないな…。不可思議な行動原理が、分かっただけだしな…。


不意に光条が瑠々華さんを守るように、あの女(ヒロイン)の前に颯爽と現れた。チラッと…樹と瑠々華さんの様子を、覗き見る。瑠々華さんは動揺している様子だが、樹は平然としていた。なるほど…。もう既に樹と光城の間では、決着がついているんだな。そうでなければ、この場に呼ぶ訳は…ないか。光条には決まった婚約者も居なければ、恋人も居ない。樹のことだから、瑠々華さんとのことでライバルとなるくらいならば、そう…考えるよな。光条あいつだけならば、困っても構わない…と。


しかし……。光条は…よく諦められたな。俺だったら、そう簡単に割り切れない。そうは思うものの、樹とライバルになるかと思えば、ゾッ…とする。樹は穏やかで優しい人物だと思われがちであるが、俺にとっては…相当に腹黒い奴にしか見えないのだ。彼が本心から優しいのは、瑠々華さんに…だけ。その瑠々華さんが、()()()()()()()()()…どうなってしまうのだろう。樹は……。


その光景を目の前で見ることになるとは、正直…思っていなかった…。あの女(ヒロイン)が出した蛇に、瑠々華さんが襲われそうになった時、樹が助けたまでは良かったが…。彼女は…樹が蛇に噛まれた直後、意識を失ってしまい…。俺達は本気で焦ったよ。彼女も…蛇に噛まれたかと、思って…。


案の定、樹が真っ先に正気を失い、「ルルっ!ルルっ!」と自分の身よりも彼女を案じ、顔が真っ青になって行く。俺が冷静になるように伝えても、樹には俺の声さえ届かず…。樹は突然ふらふらと立ち上がると、あの女(ヒロイン)目掛けて突進しようとした為、俺は咄嗟に樹の腕を掴んで止めるが…。正気を失った彼は、俺の腕を払い除けようとし、あの女(ヒロイン)に殴りかかろうと怒り狂って。


俺は必至で止めようとした。教授が駆け付けてくれたお陰で、何とか…樹を羽交い絞めにして止めたのである。その間に、光条達があの女(ヒロイン)を取り押さえてくれていたのは、ナイス・アシストだったな。






    ****************************






 羽生崎教授と婚約者さんが来てくださって、本当に助かったよ。教授は、毒蛇かどうかも見抜かれたし、樹の治療を教授の婚約者さんに診てもらえた。お2人には感謝しても、し切れないくらいだな…。瑠々華さんも診ていただいたが、単に樹が噛まれたショックで…と分かり、皆ホッとした。


樹の家に移動した俺達は、漸く冷静になった樹と話し合う。あの女(ヒロイン)の処罰を、どうするかを。当然、樹は極刑を望んでいた。しかし、それはあまりにも重い罰であろう。それに、あの女(ヒロイン)には反省をさせた方が、効果がありそうだ。…いや、反省というより…後悔の方を、だな。乙女ゲームのヒロインと言えども、悪役令嬢のような言動は厳罰を受ける、と知らしめたい。その為には何としてでも、()()()()()()()()()()ならないのだ。


最終的には、孤島の離れ小島の中にある、他に住民も住んで居ない、観光客も全く訪れないという、『地獄の収監所』と呼ばれる刑務所に、収監されることとなる。これが、攻略対象全員の願いである。もう2度と関わりたくない…と。あの場の全員が、樹の気が狂うような現状を見て、自分もそうなるかもしれないと、思ったようである。麻衣沙を失えば、俺も……。そう…ひしひしと感じるのだ。


あの事件の後、樹は…妙にご機嫌である。なるほど、そういうことか。如何やら、樹の身体を張った作戦は、功を奏したんだな。無論、意図してやった訳ではなく、彼女を必死で守ろうとしてのことだ。


それにしても…何故、あの女(ヒロイン)は最後まで瑠々華さんを、狙っていたのだろうか?…麻衣沙に確認しても、全く心覚えがないと言うし、()()()()()()()()()()心に残されていた。


 「わたくしも…実は、疑問に思っておりますわ。本来ならば、わたくしも憎悪されても、仕方がございませんのに。瑠々華にもお尋ねしましたが、何も…心当たりがないご様子でしたわ。」

 「そうか…。以前に何か、接点でもあったのかと思ったが、違うみたいだな。」


そういう内容の会話を、麻衣沙と2人で話していた矢先に、樹から報告があると呼び出され、樹の家に彼女と共に向かう。しかしその場には、瑠々華さん以外の人物が全員集まっていた。瑠々華さんだけが来ていないのを、不思議に思っていると、態と呼んでいないらしく…。何となく、不穏な空気を感じる俺……。


俺達が全員席に着くと、急遽今日全員が集められた理由を、光条が説明し始めた。あの女(ヒロイン)が孤島の刑務所に送られる前に、彼は面会しに行ったようである。その彼が語る内容には、俺達は…。誰もが完全に…言葉を失ってしまう。特に…最後に語ったという、元ヒロインの言葉には。


 「……瑠々華?…ああ。あの…樹さんの婚約者。彼女は乙女ゲームの中では、特に私に酷い仕打ちをしてくるから、やられる前にやり返しただけ…よ。私は、何も悪くないわ。」


あの女(ヒロイン)は、そんな理由で…瑠々華さんだけを、敵視したのか?…俺自身怒りを感じながらも、麻衣沙の方を振り返れば、彼女の顔からはすっかり…血の気が失われている。肩を小刻みに震わせる彼女に、俺は肩を引き寄せ落ち着かせようとして…。いや、俺自身も…落ち着きたかったのだろう…。


その時、俺達全員の前方に座っている人物から、ブリザードのような殺気が湧き起こり、この部屋の空気を1~2度下げたように…感じた。…うわあ~。久々に…これは、嵐だな……。今の樹ならば、視線だけで射殺せそうである。


 「あの女……。やはり、処刑すべきだったな…。俺のルルを、何だと思っているのだ…。清らかな心根のルルに…。(たか)が…それだけの理由で…?」


…はあ~~。あのあの女(ヒロイン)は、何を仕出かしてくれているんだ…。樹の声は普段よりも、1オクターブ以上下がった低い声だった。普段から彼の傍に居る俺でさえ、()()()()()()()()声音である。これは…相当に怒っている証拠、だな…。


今この場には、瑠々華さんだけが居なかった。彼女が居る前では、樹も嫌われたくない一心で平静を保つことだろう。元ヒロインのこんなセリフは、彼女には…聞かせられないよな。樹の怒り狂う剣幕に全員が慄き、黙り込む。


この重過ぎる空気の中、唐突にバ~ンと扉が開け放たれ、「樹さん、皆さんが来られていますの?」と笑顔で入って来たのは、紛れもなく…瑠々華さん本人である。この場の全員が呆気に取られ、樹は明らかに慌て出す。何故…彼女にバレたのか。お陰で重い空気はなくなり、終わり良ければ全て良し、という風にして置くか…。


その後は…俺と樹が大学を卒業し、婚約者が卒業するのを待って、樹は瑠々華さんと、俺は麻衣沙と…結婚したのである。俺は立木家に婿入りし、『立木 岬』となる。麻衣沙と瑠々華さんは、お互いの子供が生まれた場合は、男女の子供ならば婚約者にしようか…と、盛り上がっている。


…おい、おい。2人共…。もし、俺達の子供達が…乙女ゲームとやらに生まれて来たら、どうするんだよ…。あまり縁起の悪いことは、言わないでくれ…。そう思いながらも、平穏な幸せを充分という程に…噛み締めている、俺である。

 岬視点の続きで、後半の途中までは本編の裏側の内容ですね…。これもメインはその後からなので、副タイトルは後日譚としています。


ルル視点や樹視点では見られない、樹の様子が見られます。光条視点でも見られる樹の様子を、より詳しく友人視点で語らせました。


相変わらず、ルルは…変わっていませんけどね…。

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