第27話 4人目悪役令嬢、現る!
いつも通り、ルル視点となります。
今回は後半部分から、電話でしか出番のなかった…新キャラが、登場します。
麻衣沙から告げられた岬さんは、意外な一面を持たれたお人でした。
乙女ゲームでの岬さんは、真面目な性格の為、自分に厳しく苦言される麻衣沙に、出会った当初は頑張られておられたのですが、途中からこれが辛くなられて、一切向き合えなくなられたのでしたわね。そんな時にヒロインと出逢うことで、自分を受け入れてもらい、別の道を選択され、ヒロインと共に歩まれて行くのでしたわ。元々は純粋な性格のお人でしたのに、ルート次第では最も腹黒くなるキャラでしたのよ。本当に、真っ黒に……。
私、受け入れられませんでしたわ。だって…ゲームの麻衣沙は、とてもかっこいいんですもの!…私、悪役令嬢では、麻衣沙が一押しでしたわ。だから、現実でも麻衣沙とお友達になっている、と気が付きました時には、とっても嬉しかったんですのよ。でも…現実の麻衣沙は、私と同じ転生者で、一番…私の気持ちを理解してくださっていて、乙女ゲームの麻衣沙より、大・大・大・大好きなのです!
そんなカッコイイ麻衣沙を、振ってしまわれますのよ、ゲームの岬さんは…。勿体無い…ではなくて、酷いのですわ!…確かにゲームでの麻衣沙は、結構キツイ口調で厳しい言葉を仰られます。でも…それは全て、彼の為でしたのよ。立木家に入られる彼の為に、心を鬼にして、厳しく接しられていたのですわ。どうして私が、そんなことを知っているのかと言いましたら、ゲーム終了した後に発売された、ファンディスクで明かされる秘密なんですのよ。
ファンディスクの存在は、今のところ…私しか、知らないみたい…です。麻衣沙も「そのようなもの…ありましたかしら?…わたくしの記憶では全く、覚えがございませんわね…。」と、首を傾げておられましたもの。エリちゃんにも、ご確認致しましたところ、「えっ?…ファンディスク…ですか?…う~ん。私も全く…覚えていないですね…。」というご返答が。…あれれっ?…おかしいなあ…。何で、私だけ…知っているんだろう……。
前世のゲーム愛好者からは、悪役令嬢である麻衣沙も、それなりに人気がありまして、ヒロインよりも人気があった」ぐらいでしたのよ。他の悪役令嬢と比べても、堂々とされておりましたし、何しろ…ヒロインを唯一虐めない悪役令嬢でして。
一部のゲーマーからは、あれも虐めと同じだと言われておりましたが、トンデモありませんわ!…彼女は自分にも常に厳しく、他人にもそれを求めてしまっただけなのです。それを理解出来なかったヒロインは、正直言いましたら、私はあまり好きには…なれなかったんですのよ。私がヒロインになりたくない理由の1つでも、ありますわ。麻衣沙と対決なんて、嫌ですわ!
そういう理由で、ゲームでの岬さんも…好きになれませんでした。現実の岬さんはゲームとは異なりますし、常に完璧なお人として、麻衣沙のフォローもされておられます。私にも、友好的なのですわ。ですから、ゲームを通してお2人を拝見するのは、止めましたの。…えっ?…樹さんはゲームを通して拝見している?……そう言えば…そうですわね…。あれっ?……う~~む。
確かに…樹さんには、悪いことをしたかなあ…と、自分でも…思っておりました。気が付いては…いるんですよ、本当は。ゲームの樹さんとは、違う性格のお人なのでは…と。少なくともゲームの樹さんは、誰とでも仲良くなるお人では、なかったんですよね。取り巻きの男子生徒達とも、距離を置かれておりましたし…。
現実の樹さんは、完全に砕けた雰囲気の優しいお人ですものね。見かけはゲームの樹さんと同じに見えますけれども、現実の樹さんを知れば知る程、心底明るいお人だなあと思いますし。要するに、ゲームの樹さんは優しいのではなく、あれは…優柔不断だったんだと、思います。本当に優しいお人ならば、あんな酷い復讐などしませんものね。前世での私は、ヒロインに成り切ることで、ゲームをしておりましたから、樹さんが好ましいとでも、思っていたんでしょうね…。
…ん?…好ましい?…樹さんが?………。好ましいって…前世の記憶ですよね?…んん?……いや、まさか…押しだったなんてことは……。いえいえ、冗談ではございませんわよ!?
現実の樹さんに絆されたからって、私…悪役令嬢として、生まれて来たんですからね!…ヒロインではないんですから、樹さんを好ましく思うのは、危険でしてよ。絶対に…有り得ないでしょう!?…樹さんルートは……。
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愈々、この日がやって参りました。私達は、とあるお店を貸し切って、そこで待ち合わせをしております。私と麻衣沙が横に並んで座り、エリちゃんが向かい側に座られ、そのお隣には『霧島 美和乃』さん、今来られたばかりの最後の悪役令嬢さんが、座っておられます。
ショートヘアの天パの黒髪で、エリちゃんとも麻衣沙とも違う雰囲気を持つ、美人さんです。お店に現れた彼女を拝見した時には、一見して…甘えたがりなぶりっこ風に見えてしまいましたよ。でも、実際にお話した彼女は、裏表のない天真爛漫っぽい元気な女性だと、感じましたわ。麻衣沙と電話で語っておられた通り、どこか天然っぽい部分が見られまして。えっ?…私、天然ではないですわ!ちょっと…他の皆さんと、感覚がズレているだけですの。えっ?…それが天然なのですって?…いえいえ、私と霧島さんとでは、微妙に違うのですよ!…本当ですからね!
「皆さんも、私と同じ…転生者の方々なんですよね?…お会い出来て、光栄です!私、自分以外の転生者に会うのは、初めてなんですよ~。今日会うのを、とても楽しみにしていたんです!」
霧島さんは挨拶し終わると、早々にこう言われまして。それはもう…満面の笑顔をされて。まだ私達が、挨拶もしておりませんうちに。麻衣沙が仕切り直され、改めて私達は順番に、ご挨拶を致します。彼女は…私達のお顔を見る度に、「あっ、あのキャラですよね~。」と、小声で相槌を入れておられまして、超…やりづらいです…。霧島さん…丸聞こえですよ。
「やっぱり…ヒロインの代わりに、注意されに来られたんですか?…そういうことでしたら、私…何も邪魔していません。寧ろ…ヒロインとの恋を、応援していたんですよ。でも…何故か、私が聖ちゃんと…付き合うことになって……。」
…ああ。何とな~く、分かるような気が致しますね…。彼女、私以上の天然さんですよね…。それなりに絆されて放って置けなくて、彼女から目が離せない、というものでは…。攻略対象の気持ちが、よおく理解出来ましてよ。
最後の攻略対象は『矢倉 聖武』君で、ごく一般的な家庭のご子息で、彼のご両親は、父親が会社員で、母親がパート勤務の専業主婦です。矢倉君と霧島さんは今年から、成井沢大学の1年生として通われております。お2人は同窓生として、小中高と同じ学校・同クラスになったことも、あるそうです。彼女のお話では、彼は…真面目だけど、お調子者タイプなのだそうでして。それなりのイケメンでもあり、女子には相当モテているご様子ですわね。
「聖ちゃんから、私と同じ大学を受験する…と聞いた時は、私の方が逆に…驚いたんですよ。大学受験が無事終わって合格した後、『付き合おう』と聖ちゃんから告白され、私が迷っているうちに…いつの間にか、付き合うことになっていて…。そりゃあ、私は…前世から、聖ちゃん一筋でしたけど。ヒロインの愛らしさには、勝てませんからね。私は、ヒロインとの恋を応援して行くつもりだったのに、何故だか…こうなっちゃったんです…。だから、貴方達から連絡が来た時は、ヒロインを敵に回したのかと、焦っちゃって…。」
霧島さんが彼を攻略した状況を、語ってくださいます。なるほど…。彼女の受験する大学を、矢倉君も受験したのですね?…ということは、彼は…確信犯ですのね?ふんふん、なるほど…。彼から告白されたのですね?…迷っている間に、付き合うことになったって、彼が押し切った形なんでしょうねえ。なるほど、なるほど…。彼女の一押しは、矢倉君でしたのね。前世からの想いが、伝わったのですのね?
「……厳密には違いますわ。この現実のヒロインは、あの乙女ゲームのヒロインとは、正反対の性格なんですのよ。然も…転生者ですわ。ゲームでは、逆ハーレムルートはございませんでしたのに、狙っておられるみたいでして。わたくし達は、何もしておりませんのに、ヒロインに敵視されましたのよ。わたくし達の婚約者は攻略対象ですが、寧ろ…彼女に対して、本気で怒っておられましてよ。」
「……えっ?……逆ハーレムですって?……逆ハーレムされる気…なの?」
麻衣沙が代表して、彼女とお話されておられます。乙女ゲームのヒロインと、例のケバいヒロインとは、全く別人なんですのよ…ということを。逆ハーレムも狙っている、転生者なんですよ…と。これには、霧島さんも驚かれておりますわね。
ヒロインの情報をお見せした方が早いと、わたくし達がお調べしたことや、これまでのヒロインの行動をお伝え致しましたのよ。流石の天然さんも、唖然とされておられましたわ。そうですわよね…。実際に…何度か拝見しております、私も麻衣沙も…唖然としたぐらいですもの。
「これが、ヒロインの正体なんですか?…ゲーム通りのヒロインなら兎も角も、こんな…人を馬鹿にしたような彼女に、大事な聖ちゃんを…渡したくありません!私、全面的に戦います!…そして、大事な聖ちゃんは…私が守ります!」
ルルによりますと、ファンディスクが…存在したようですが。何故か、他のキャラ達は知らないという…不思議な現状で。
漸く後半部から、新キャラの美和乃が登場しました。彼女もルルの次に、濃い天然キャラとなりそうです。
 




