第26話 親友の意外な一面
いつも通り、瑠々華視点となります。
今回は、旅行先での出来事です。
宿泊先は一応、この辺りでは大きめなホテルでして、この辺は特に観光地、という訳ではありませんが、窓からの景色はまあまあ良いですね。周りには高い建物がないので、割と遠くまで見渡せますし。都会ではないですけれど、田舎でもない感じが、丁度良い雰囲気ですわね。
エリちゃんも最初は驚いて、戸惑っておいででしたけれど、私達2人がお話掛けたりしているうちに、慣れて来られたご様子です。ちょっと、一般家庭出身の人間には、遠慮したいお部屋ですよね。…うん。私も前世の感覚が強すぎて、ちょっと…ビクビクしましたわ……。今は、社長令嬢なんですけれどね。まだ慣れないんですよねえ。余程…私には、一般市民感覚が根付いているんでしょう…。単に…根っからの貧乏性なのでしょうが。……悲しい性ですね…。
そのような私に比べますと、麻衣沙は前世もお嬢様だったそうですから、お嬢様っぷりは堂に入っておられますわね。普段から常に冷静に対応されていて、親友である私も鼻が高いですわ。私のお嬢様っぷりは、身体の中身が似非ですからね。
そういう点で言いましても、彼女は本物のお嬢様なのです。麻衣沙がおられますから、私も堂々とお嬢様をしていられるんですのよ。彼女とお友達になっておりませんでしたら、疾うの昔に…似非お嬢様だと、化けの皮が剥がれておりましたわね。
「ルル、言葉が乱れておりますわよ。」
「もう!…社長令嬢は、そのように飛んだり跳ねたりしませんわよ。」
「また急いで来られたのでしょう!…服装が乱れてしまっておりますわ。ご令嬢として恥ずべきことですわよ。」
……などなど。いつもいつも、ご忠告してくださいましたのよ。口調は厳しめなものでしたけれど、麻衣沙の言葉には温かみがありますわ。遠目で見られていたお人達は、麻衣沙が私を虐めている…とか、そんな麻衣沙を私が許して寛大だ…とか、言われていた時期もありました。麻衣沙の冷静な態度から、冷酷な心の冷たい人みたいに、噂されましたのよ。
彼女は、私を一度も虐めておりませんし、私も流石にそこまで寛容ではないので、虐めて来るようなお人には、二度と近づきませんわよ。それに…彼女は、冷酷でも心が冷たい訳でもありません!とっても面倒見が良くて、心の優しいお人なのですわ。ただ…天邪鬼なだけで…。素直になるのが…恥ずかしいだけで。可愛いお人なのですのよ、ふふふっ…。
今も…なんだかんだと言いながらも、私とエリちゃんのお世話をしてくださっておりますわ。でも…何となく、いつもの麻衣沙とは…違うような…。ホテルに着いたばかりの時も、キョロキョロされておりましたし、その後はこの付近の散策に行きましたが、その時も…ソワソワと、されておられましたわね…。一体、どうされたのかしら?
「ねえ、麻衣沙。今日は…どうなさったの?…ずっと、ソワソワと言いますか、何かを気にされていらっしゃるような、素振りですけれど…。大丈夫ですの?」
エリちゃんには聞こえないように、少し離れた場所で、小声で訊いてみましたの。麻衣沙の行動は、長い付き合いの私だから、気がついたようなものであり、決して私の挙動不審な行動とは、異なりましてよ。自分で…そう考えて、少々凹みそうですが。仕方ありませんのよ。私は…完璧令嬢ではありませんもの。どうせ…似非お嬢様ですわ。
「……えっ?!…わたくし、そんなにも…ソワソワとしておりましたの?…ルルが気が付かれるとは…。わたくしも、まだまだ…ですわね…。」
「もう…!…付き合いが長い私だからこそ、気付きましたのよ。エリちゃんは、気付かれておられませんわ!」
私が心配してお声を掛けますと、麻衣沙は、ぎょっとされたようなご様子でして。私が気付いてはいけないような、そういう意味に聞こえましてよ。…思わず半眼になりまして、麻衣沙を見つめましたが、彼女は…落ち込んでおられるご様子でしたわ。…ああ、これは…私に心配を掛けまい、という時の…麻衣沙ですわね…。
落ち込んだ彼女を励まそうと、私だからこそ…気が付いたことを、お告げしたのですけれど…。麻衣沙は、苦笑されておられますわね…。もう…。こんな事では、私が気が付かないとでも、思っていらしたのね…。失礼な…。私だって、気が付く時は、気が付くのです!
…ふふふふ…と、今度は…麻衣沙が笑っておられます。何でしょう。嫌な予感が…致します。…ああ、これ…気が付かない方が良かった、というヤツですかねえ…。もう…遅いですが……。
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「岬さんが、いらっしゃっておられるような気が、致しましたのよ…。」
「………。」
何で岬さんが…ここで出ていらっしゃるの?…まさか、麻衣沙の口から、岬さんという言葉が出て来られるとは、予想外でしたわ…。今までの彼女は、乙女ゲームに関すること以外で、ご自分から彼のお話をされることは、滅多にありませんでしたし、何故この旅行先で…という感じですわね。折角、彼らのことは忘れておりましたのに、また思い出してしまうではないですか…。
…と言いますか、此処には…来ておられませんわよね?…麻衣沙ったら、不吉なことを仰らないでくださいな…。もしも、岬さんが…おられるのなら、誰かさんも…と考えてしまいますのに…。
「もしかして、樹さんも…と、ご心配をされておられますの?…それでしたら、大丈夫ですわよ。あの方は、どちらかと言いましたら、他の人に見張らせる方ですわよね。」
「……いや、それはそれで…怖いのですが…。知らない間に、見張られているのですよね?…私の行動は、全て筒抜けですのよね?…絶対に…怖いですわ!」
私の行動が、樹さんに筒抜けなんて、絶対に…嫌ですわ!…樹さんのルートでの私は、それはそれは…酷い目に遭いますのよ!…まあ、半分以上は…自業自得では、あるのですが…。それでも、そこまでしなくとも…というぐらい、凄まじい復讐でした訳で…。ヒロインが進むルートによっては、私の嫌がらせも少なかった、というルートもあった筈なのに、樹さんルートのバッドエンドでも、私だけは…幸せにはなれないのです、一生涯…。悲しい……。
「ルル、ごめんなさいね?…冗談ですわよ。そのような気が…しただけですわ。この前から、岬さんらしくない行動を拝見しておりましたから、被害妄想が出てしまいましたのよ。きっと…。」
「マイお姉様!…そのお話、詳しく教えてくださいなっ!」
「「………。」」
私がまた、挙動不審になり掛けたものですから、麻衣沙が慌てて否定なさいましたのよ。…はい、そこまでは…良かったのです。麻衣沙のその否定されたセリフに、食い付かれたお人が…約1名……。
「…エリちゃん。今のお話、いつから…聞いておられましたの?」
「えっ?…ああ、そうですね〜。今さっきですよ。買物が終わったので、お姉様達の方へ戻って来たら、マイお姉様が、岬さんらしくない行動が…と、仰っているのが聞こえたので、そのお話の続きが聞きたいなあ〜、と思って。」
「「………。」」
流石…エリちゃん、一般市民の高校生です。当初の印象は、大人しく見えておられましたが、一般市民だけあって、私達より逞ましいです。私も前世はそうだった筈なのに、エリちゃんと比べましたら、私も一般市民からは見れば、浮世離れしておりましたのね…。
肝心の麻衣沙は、目を泳がせておられます…。あれっ?…こんな麻衣沙は、初めて拝見致しましたわ。そう言えば…岬さんの行動が、と仰っておられましたわね…。これは…もしかしまして、何か…ございましたのね!?
…きゃあ!?…もしかして、愛の告白でも…ありましたの?!……と、私も…期待してしまいますわ!麻衣沙からは一向に、恋愛っぽいと言いますか、艶っぽいお話をお聞きしたことが、全くありませんのよ。乙女ゲームの推しも、「誰だったのかしら?」と、覚えておられないようなことを仰っておられますが、あれは…やっぱり嘘でしたのね?…他のことはよく覚えておいででしたのに、変だとは思っていたんですよね〜。確信犯でしたのね…。
ホテルに戻ってからは、エリちゃんの…怒濤の猛追撃が始まりましたわ。いやあ…凄かった…。汗が、ダラダラと……。猛追撃されるのが、私ではなくて…本当に良かったですわ…。これが…私でしたら、魂が抜け出て行ってしまいそう…です。
しかし、今回の件に関しては、エリちゃんには感謝致します。…いやあ、出るわ、出るわの大放出でしたもの…。私では、麻衣沙には叶いませんから、途中から誤魔化されておりましたわね。…ううっ。いつの間に!?……というほどに、岬さんとのご関係が、進んでおられましたのね…。岬さん、生真面目っぽいキャラだったのに、案外と押せ押せタイプなのですね?……ふふふふっ。
あれから麻衣沙は、金魚のように目を泳がせっぱなしでしたのよ。…ふふっ。普段では絶対に拝めない彼女が、拝見出来ましたわ。エリちゃん、さまさま…ですわねえ。エリちゃん…貴方、お顔付きが…悪くなっておりますわよ…。お主も…悪やのう〜、の状態でしてよ…。
ですが、彼女も現役女子高生でして、そういうお顔付きをされておられても、瞳の輝きは…キラキラ輝かせておられましたのよ。…ん?……只今のは訂正致します。ギラギラの間違いでございます…。キラキラでは…ございませんでしたわ…。
エリちゃん…。貴方って、結構なサディスティックな面が、お有りでしたのね…。私達…貴方を甘く見ておりましたわ…。この現世では、一番敵に回してはいけないのは、樹さんではなく…貴方かもしれません…。御見逸れ致しましたわ……。
副タイトルは、どちらかと言いますと、麻衣沙のことというよりも、エリちゃんに対してのものですね。勿論、麻衣沙も含まれておりますが。
ルルの中では、既に年下の彼女も、親友の立場ですので。




