↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄する期間は、もう既に締め切りました!  作者: 無乃海
【前半】 乙女ゲームのフラグを折りたい…編
PR
31/66

番外④ 本物の恋とは気付かずに

 番外編なので、他の人物の視点となります。


さて、今回は…誰でしょうか?(読めば…直ぐに分かりますが。)

 俺には、母親が違う兄弟がいる。父は最初、父の家よりも家柄の上の女性と結婚した。所謂、愛のない政略結婚である。それで生まれたのが、この家の長男であり俺の兄に当たる、5歳上の異母兄である。大学を卒業した後、父の会社ではなく、他の会社で修行中である。子供の頃は異母兄弟ということもあり、俺が事実を知ってからギクシャクしていた時もあったが、基本的に兄は俺達弟を大事に思ってくれており、それを理解してからは、俺も異母兄弟とか関係なく、兄として尊敬しているんだ。父の会社を継ぐのは、兄が相応しいと思っている。


兄の母親と父は政略結婚ではあったものの、仲が良かったようである。ただ、兄の母親は身体が弱かったそうで、兄が幼いうちに亡くなってしまった。父は会社の社長として再婚を余儀なくされ、俺の母と知り合い結婚したのだが。俺の母は…父のお金目当てで、結婚したようである。まあ、仕方がない。俺の母は元は…キャバ嬢だったのだから。貧乏で苦労したらしいから、お金に執着するのは仕方がないだろうが、あまりにも…酷過ぎた。


子供の面倒は見ない、義理の息子を邪見にする、そして…贅沢三昧をした挙句に、ホストクラブの年下イケメンと浮気したんだ。我が母親ながら、同じ血が混じっているかと思うと、自(・)分(・)が(・)生(・)ま(・)れ(・)て(・)来(・)た(・)ことに…後悔したこともある。生まれて来た意味が分からない、と思っていた。


だが、父が再再婚をした女性は、彼女も再婚で子供はいなかったものの、子供が大好きな人であった為、俺達兄弟を可愛がってくれた。彼女に子供が出来た時、俺達は要らなくなったと言われるんじゃないかと、正直言えば怖かった。しかし、彼女はその後も変わらず、自分の産んだ子供と同じように、俺達のことも扱ってくれている。


父とは恋愛結婚したので、今でも夫婦仲が良く、俺達の前でも平気でベタベタしているのは、止めてほしいけどね。それでも、彼女のお陰で、俺達家族の絆は深まった。周りは異母兄弟ばかりだと、勝手に複雑だと思い込んでくれるが、俺達にはそんな垣根は…疾(と)うに無いというのに。


今でも忘れた頃に、俺の実母が父に金を無心しに来るが、俺が本気でグレなくて済んだのは、今の母が俺の心配をして、本気で怒ってくれたからである。本当に感謝してもし切れない。


そんな風に育った俺は、少々異性に対して身構えてしまう。女性に対して、厳しい目で見てしまっている。あの子は性格が悪そうだ…とか、この子は我が儘みたいだな…とか、あっちの子は気が多いから浮気するだろう…とか、そういう異性の嫌な部分しか見ていない。少しでも難がありそうだと思うと、どうしても恋愛の対象には見られなくて。俺の母は顔だけは良かったから、俺も兄弟の中で一番美形ではあるし、お陰で…顔や家柄で寄って来る、異性が多かった。


相手がそう思っているんなら、俺もそうしよう…と思ったから、女子と真(・)剣(・)に(・)付(・)き(・)合(・)っ(・)た(・)こ(・)と(・)は(・)一度もない。母親がキャバ嬢だからその血を継いだんだろうと、俺を悪く言う親戚達も居るが、俺は実母と違って、結婚した後まで遊ぶつもりはない。


今は、その為の準備期間のようなものだ。来るもの拒まずで、周りを油断させて置くだけだ。チャラ男と呼ばれている方が、今は楽なんだよ。今は…本気で異性と恋をするのは、怖いんだ。本気の恋愛を、本当は…知りたくなくて。


チャラ男でいた方が本気の恋愛をしなくて良くて、気が楽だったんだ。相手も遊んでいる子達ばかりで、本気になるような子達は寄って来ない。今はまだ…それで良かった。実母のようになるつもりはないが、今はまだ自信がない。父のように再婚したいとも思わない。実母と父親の所為で、一度は女性不信にもなりかけた。


今の母に救われても、だからと言ってすぐに女性不審が、直る訳ではない。今の母以外の異性は、ハッキリ言ってまだ信用できないし、まだ恋(・)を(・)知(・)り(・)た(・)く(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)。今すぐに恋を知ってしまうと、相手を束縛してしまうかもしれない。


そう思っていたから、チャラ男でいたかったのに。知らなければ良かった、こんな気持ちは。一度気が付いてしまったら、後に戻れない。これが…恋なんだろうか。だけど、俺が好きになっていい相手では…ない。彼女は…俺とは違う世界にいる。彼女には…家柄が釣り合う幼馴染も居る。然も彼女の周りには、彼女に惹かれた人間ばかりが寄って来る。俺の出る幕は…ないだろうか…。俺は恋をした途端に、失恋したということに、なってしまうのだろうか?


それでも…俺は、少しでもいいから俺の方を見て欲しい、俺を好きにならなくてもいいから、せめて…俺の気持ちを受け取って欲しい、と…彼女に近づいて。






    ****************************






 現実の世界の彼は、乙女ゲームとは色々と異なっている。先ず、異母兄弟ではなく、実の兄弟である。父親は勿論のこと母親も、3人の母親である。そして政略結婚ではなくて、大恋愛の末の結婚であった。親戚中には、結婚を反対されてはいたが、父親は根気よく説得を続けて、漸く結婚したのである。母親が浮気をすることもなければ、離婚をすることもない。現実での彼は…グレてもいないのだから。


だが、ゲームの設定が何か影響しているのか、彼は自分がモテることに何の疑問も持たず、ただ単に女性には優しくを、地(じ)で行っていただけである。乙女ゲームでは異性とかなり遊んでいたが、実際の彼はそ(・)う(・)思(・)わ(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)だ(・)け(・)で、遊びでは手は出していない。チャラ男とは呼ばれているが、本気でも遊びでもなく、単に女性に優しくする主義なだけである。今迄に本気で恋愛したこともない、とも言う。


彼はある日、自分の後をつけていると思われる存在に、気が付いた。用があるからと女友達とは別れて、1人…大学の中庭の奥へと向かって行く。やはり、自分をつけて来ていると思った彼は、振り返ってその人物に近づいた。逃げ損ねたらしいその人物は、この大学では有名な人物であり、今迄自分とは全く接点のない人物で。


彼女に何の用か問い掛けても、探し物をしていた、偶然だったと話すのだが、どう見ても嘘を言っていると分かるような素振りである。目線が泳いでいるし、顔に直ぐ出るタイプみたいだったし。彼はこう見えても、ただのチャラい男だけではなくて、人を見る目はある人間だ。彼女と少し話しただけでも、彼女が色々とズレている思考の持ち主であると、気が付く程に。


彼女には、彼女を溺愛しているお似合いの婚約者が、傍らにいる。彼女の言動は、その婚約者でさえも…予測がつかない状況なのだろう。だから、婚約者は裏に手を回して、彼女の敵になる人物を全て潰して来た、と…予想がつく。そのくらい、彼女を大切に思っているだろうに、彼女は婚約者のことを、自分には出来過ぎた婚約者だと、思い込んでいる。婚約者の本心に…気付いていない?…彼女は…人の気持ちに鈍いというだけでなく、婚約者と距(・)離(・)を(・)置(・)こ(・)う(・)と(・)し(・)て(・)い(・)る(・)ように見えた。


その割に…婚約者を庇うというか、どちらかと言えば、婚約者を過剰にヨイショしているというのも、腑に落ちないのだが。彼女は本気で、婚約者が心底優しいだけの人物だと思い込んでいる。婚約者が自分だけに優しいとは、少しも気付かない彼女に、彼も…興味が湧く。彼女が1人になるのを見測るようにして、彼女の前に現れたり声を掛けたりしているうちに、もっと彼女のことが知りたくなった、自分がいて。


家柄も容姿も愛情も全て、文句のつけようがないほどの婚約者と、その婚約者に引けを取らない家柄と、可愛いらしい容姿も持っていながら、自分に自信が持てない彼女。自分は絶対勝てない相手と知りながらも、気になって仕様がない彼は。これが恋とは知らずに、無意識に手を伸ばす。



彼女の瞳の中に、自分が写っていたい、と。彼女の顔が声が…見たいし訊きたい、と。何かと…彼女との接点を、確実なものにしよう、と。彼女の領域にまで踏み込んで…。これでは、まるで…恋をしているみたいだ。そう気付いても、自分ではもう…ブレーキが効かなくて。


どうせ彼女は…彼には手が届かない相手だ。彼女の婚約者が、彼女を手放す筈がないし、彼女の婚約者には彼も敵わない、と知っている。今のところ、彼女の気持ちは分からないが、振り向いてもらえる可能性が低いことぐらい、今の彼女を見ていれば、彼にも…嫌でも分かってしまっていた。それでも、彼は…彼女の傍に居続けることに、躊躇しなかった。彼女が本気で恋愛するまでは、傍(かたわら)で1人の友人として見守りたい。彼女が誰を選ぼうとも、自分が選ばれなくとも、今はそういうことを無視してでも、彼女の近くに居たいと決心して。


彼女の傍は居心地が良く、退屈しない毎日だ。彼女は常に全力で生きており、自分の思うままに…それでいて、他人への思いやりを忘れずに、素直で真っ直ぐな瞳で前を見つめて。それなのに、彼女自身は何て不器用で、危なっかしいのだろうか。婚約者が過保護に溺愛する気持ちが、彼にもよく理解出来てしまう。


これが恋なのかは、彼はまだ…理解出来ない。恋だとしても、彼女に彼の方を振り向いてほしいとも、思う訳でもない。抑々、彼女と自分では…色んな意味で、違い過ぎている、何もかも…。育った環境も考え方もが、全てが違う。後で嫌われるぐらいならば、最初から好きにならない方が良い、と…無意識に気付かないように、と。彼は…本気の恋が、ど(・)う(・)い(・)う(・)も(・)の(・)か(・)知(・)ら(・)な(・)い(・)で(・)。


今の彼は、この現実の世界が乙女ゲームの世界に似た世界だと、知る由もなくて。この想いも、ゲームと似た感情であるようで、また全く異なるものであることを、知る由もなく。

 今回は、あの人視点でした。前半と後半は、同じ人物の人生ですが…。


恋に変化しそうな予感が…。同じ気付かない恋でも、想う相手も…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。