58:ひとりぼっち
王に謁見。
いやいや、話すことなんて何もないだろう。それに、俺達は生まれてからずっと狩人の子どもとして育ってきた。王の前で必要な礼儀作法なんてさっぱり知らないわけで。
王の癇に障ったから斬首!死刑!なんて展開は嫌だ。
[よし、ユリウスさんや。断りましょう]
[ええ……いいのかな?王様の命令みたいだよ?]
[王様と喋ることも別にないだろ?《塔人》……だったか。あいつとの戦いだって、話せるほどのことを覚えてないしな]
[そりゃそうだけど……一度聞いてみるよ]
「あの、それって断わーー」
「ちなみに、組合に登録して一日で第十階層まで到達した方も王に報告することになっているんです。お二人はお若いのでそれだけでもお呼びがかかったと思うんですけど、そのうえ《塔人》に遭遇したとなると……」
「あ、はい……わかりました……」
逃げ道、なし!!
どうやら、いつのまにか地雷を踏みぬきまくっていたようだ。そんなマイナールールみたいなやつは登録したときに言ってください。
「ユリウスくん、行くしかないみたいですよ」
「だね。はあ、なんだか本当についてない気がしてきたよ……」
早々に諦めた俺達は、しっかり魔石を換金してから組合を出た。
ーーーーーー
「王塔に3日以内に、か。結構急ぎだね」
「どうします?魔法を使ってそこまで行くのは気が引けますし……」
街の中で魔法が禁止されているわけじゃない。けど、街の中で魔法を使うのはダメだって暗黙の了解みたいなのはある。
何故、法で規制されることがないのか。それは国を造った王がそう決めたからだ。この世界の国はどこも専制君主制だからね。諦めるしかないよね。俺は政治とか全然興味ないし。
まあ、そんな王がそう決めてしまったけど、街中で馬鹿みたいに魔法を使ったらいつか大事故が起きる。いや、もしかしたら既にどこかで起きたのかもしれない。
そんな危機感からか、いつしか国民達は街中ではあまり魔法を使わなくなった。そうして自然とできた暗黙の了解。
王は禁止することを禁止したわけじゃないからね。ましてや魔法の行使を強制しているわけでもない。実のところ、国民に決定権がないから法で規制されないだけで、多数決を取ったら確実に規制される。
ま、そんな世の中でも幾つかの職業の人達は魔法を使うことを許されている。
「バーシャさん、今空いてるかな」
「とりあえず行ってみましょう。少なくとも、誰もいないなんてことはないでしょうし」
そう、人車だ。
あの人達は《強化系》で身体を強化して、《生成系》でゴーレムを使役して人を運んでいる。資格とかはないんだけどね。この世界はガバガバなことが多いんだ。
ーーーーーー
「おお!お二人ともお久しぶりでさぁ!」
ということで、早速やってきました人車屋さん。食料とかはまだ魔法袋に入ってるからそんなに準備することもなかったからね。
バーシャさんは普通に事務所みたいなところの中にいた。ナイスタイミングです。
「すいません。ちょっと急用ができてしまって……王塔の近くまでお願いしたいんですけど」
「あっしも丁度帰ってきたばかりでさぁ!今すぐ向かわれやすか?」
「それはよかった。今すぐでお願いします。あ、でもそこまで切羽詰まってもないので、焦らずで大丈夫ですよ」
「わかりやした!ちょっと待っててくだせえ!」
そう言って、豪快に笑うバーシャさん。
他にも従業員らしき人はいるけど、どの人もバーシャさんのようにムキムキだった。体育会系って感じだ。
「お待たせしやした!さ、行きやしょうか!」
「はい。よろしくお願いします」
ーーーーーー
2日後、俺達は王塔の前に来ていた。
嫌なことは先延ばしにしてもロクなことにならない。ということで、早速王塔にお邪魔します。ちなみにバーシャさんは王都の支店で待機してもらっている。帰りもお願いするからね。
塔の前にいる兵士に確認を取り、中に入る。
王塔の中は外観と同じように真っ白で、塔とは違って至って普通の建物といった様子だった。
王が住んでいるというのに、塔内には人の気配がない。外には結構人がいたんだけど。
兵士には、中に入って真っ直ぐ進めと言われたので、広い塔内を言われた通りに進んでいると、懐かしい感覚に襲われた。
転移魔法陣だ。
ここにもあるのか……。まあ、王も転移魔法が使えるのかもしれない。なんせ、この世界で最初に塔を制覇した人物なんだし。
転移した先でユリウスが正面に目を向けると、そこには1人の人間がいた。
周りには誰もいない。
ただ、その人物から放たれる空気から、あの魔物ーー《塔人》に匹敵する実力を持つことが察せられた。
この人が、この国の王だ。
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