55:物語に同年代の強いやつがいたらそうなるよね
「ま、オイラはそろそろ行くとするぜ。次に会うときはもっと強くなっとけよ」
「うん。ほんと、ありがとな。この恩はきっといつか返すから」
そうして、レナードは出て行き、俺は部屋に1人になった。
もっと強くなっとけよ、か……。
レナードには勝ったんだけどな、なんて野暮なことは言わない。言わないったら言わない。
異能ではなく、魔法を使う魔物ーーあいつには全く歯が立たなかった。
正直、何年も訓練をしてあそこまで何もできない魔物が出てくるなんて、想像もしてなかった。最初から楽に塔を攻略できるなんて、そんな甘い期待はしていない。でも、登るにつれてどんどん実力つけて、なんとか最上階まで。そう思っていた。だけど……
「本当に俺に……俺達にそんなことができるのか……」
胸の中を不安が渦巻く。
この先、どうやってもあの魔物に勝てるビジョンが思いつかない。
ユリウスの最強の魔法。俺とメアリーちゃんの最強の身体強化。そのどれもが、何も通用しなかった。
「って、ダメだ。1人になるとどうにもネガティブになっちゃうな」
とりあえずは2人の目が覚めるのを待たないと。
この際、レナードがしょうもない嘘をついているとは思わない。メアリーちゃんは無事だろう。
ユリウスは……俺が無事だし、身体も無事な以上、そのうち目を覚ますだろう。
「とは言っても、様子は見ておくか」
そう思い、俺はようやくベッドから出た。
身体の調子は……まだ痛むところもあるけど、思ったより大丈夫そうだ。
「たしか、隣の部屋にいるんだったか」
まあ、いくらレナードを信用できるようになっても無事な姿を確認するまでは安心できない。
そっと部屋の中を覗き込むとーー
「よかった……ちゃんと生きてる……」
メアリーちゃんはベッドの上でスヤスヤと眠っていた。
ほんと、レナードには感謝してもしきれない。あの言いがかりの件を入れても、あいつに作った借りは大きすぎた。
ひとまず無理に起こしてもロクなことにはならなそうだし、俺は音を殺して部屋に戻った。
ーーーーーー
[ん……あれ?僕らは……]
[ーーッ!ユリウス!目を覚ましたか!よかった……]
翌日、ユリウスの意識が戻った。
本当によかった……。俺が目覚めて丸一日、誰もウンともスンとも言わないもんな。このままみんなが起きなかったらどうしようとか、暗いことばかり考えてしまった。
たまに巡回に来る看護師さんは大丈夫ですよって言ってくれたんだけどね。それでも心配なものは心配だ。
[アキト……ここは?]
[ああ、そのことなんだけどーー]
そのとき、隣の部屋から物音がした。
[メアリーちゃんも目を覚ましたみたいだ。これまでのこと、一緒に話すよ]
2人が無事に目を覚ましてくれた安心感からか、涙が溢れそうになるのを堪えながらメアリーちゃんの元へ向かった。
ーーーーーー
[そっか、レナードが……]
「あの人がいなかったらと考えると……」
レナードから聞いた事の顛末を2人に話した。
なお、再会したときに泣いてしまった話は割愛させていただきます。
「ま、そんなわけで俺達は一命を取り留めたってわけだよ。何はともあれ、生きててよかった」
[僕ら、まだまだ強くならないといけないね]
「私、あの魔物に何もできませんでした……」
落ち込む2人。
そりゃそうだ。俺には2人がやられたときの記憶はないけど、どうやら2人も何をされたかわからないままに意識を失ったらしい。3人揃って瞬殺。へこむよね。
かと言って、また父さん達の元に戻るわけにはいかない。甘えてばかりではいけない。父さん達にも仕事が、この世界の人々ために今日も食料を調達しているんだ。まあ、2人にこんなに支えてもらってる俺が一番甘えてるんだけど。
「えっと……それで、2人に話があるんだ」
[どうしたの?]
「私はぜんぜん諦めてませんよ!意地でも塔を攻略しますからね!」
「違う違う。諦めるなんて、そんなつもりはないよ。話っていうのは……」
俺は2人が目を覚まさなかった間、ずっと考えていた。
このままじゃさすがにまずい。せめてあと1人、いや、欲を言えば2人仲間がほしいと。
いけると思ってた。力を合わせていけば、俺達だけでも通用するって。
でも、全然ダメだった。だからーー
「レナードと一緒に、塔を攻略しよう」
俺がこの結論に至るのは、当然のことかもしれない。




