01:エピローグ
俺は昔から身体が弱かった。
物心ついた頃から外で遊んだ記憶はないし、数年前からはずっとベッドの上での生活が続いている。
外で遊べないのはそんなに辛くはない。外の楽しさを知らないから。なにが辛いかというと、日に数度訪れる激痛だ。神経が焼き切れてるんじゃないかと疑うほどの痛みを、正直、我ながらよく耐えてきたと思う。
そんな俺でも生まれてきたことを後悔したことはない。両親がいたからだ。
両親は外に出れない俺のために漫画やライトノベルをたくさん買ってくれた。そして、一緒に読んで、その内容を話して盛り上がったりした。好きな漫画がアニメ化したときには一緒に喜んだりもしてくれた。
俺が痛みに苦しんでるときにはずっと側にいてくれた。
『辛い思いをさせてごめんね。丈夫に産んであげれなくてごめんね』
両親が好きで俺の身体を弱くしたわけもない。だから恨む理由なんて俺にはない。むしろ、迷惑ばかりかけて俺の方が申し訳ないぐらいだ。
『でも、生きていてくれてありがとう』
涙を流しながらそんなことを言う両親のおかげで、俺は普通の人達のような人生は送れなくても幸せだと胸を張って言える。言えた。今日このときまでは。
そう、それもここまでみたいだ。
今日は17歳の誕生日という記念すべき日だが、身体が動かない。自分はもうここまでなんだってわかる。
医者の余命宣告よりも長く生きることができたけど、どうにもならないことはこの世界にはいくらでもあるみたいだ。
目の前では両親がまた涙を流していた。俺の胸に顔を埋めて、謝っているようだ。そんなに悲しそうにしないでほしい。最期くらい笑って見送られたいじゃないか。
俺の人生に悔いはない。
まあ、全くないと言えば嘘になる。
普通の学生生活を送ってみたかったし、恋人なんかもつくってみたかった。
憧れはある。
けど、両親のおかげで生きていて楽しかったと、心の底から思える。
だから、この人たちのためにもこんな悲しい終わり方じゃダメだと思う。
俺は動かない身体をこのときだけは恨みつつ、最期の言葉を残すために力を振り絞った。そして、2人と目が合う。
『父さん、母さん…俺…もう…死んじゃ……ごほっ……死んじゃうみたいだけど………生まれ変わっても2人の…子供になりたいよ…産んでくれてありがとう』
なんとか笑顔を作れているだろうか。もっと言いたいことはたくさんあったけれど、もう限界だ。
2人は俺のことを抱きしめてくれた。泣きながら、笑いながら。
ありがとう、父さん。母さん。
俺、2人の子供に生まれてほんとに幸せだったよ。
でも、もう2人に心配かけたくないから、次は丈夫な体に生まれたいなーーーー。
そんなことを考えていると、俺の瞼はゆっくりと落ちてきた。