第7章:最初の訓練
# 第7章:最初の訓練
創業時代3528年6月26日。
朝の光がカーテンを通り抜け、エリアンの部屋を徐々に満たしていった。窓の外では木々がざわめき、冷涼な風が湿った土と夏の草の香りを運んでくる。エリアンはいつもより早く目を覚ました。今日はギャレットの指導のもとで初めて訓練を行う日だった。昨日の夜、導師は彼の剣術の腕前や持久力、そして魔法の才能を試すと約束していたのだ。
少年はベッドに腰掛け、伸びをした。眠気で少し乱れた白銀の髪を整え、用意された服に薄灰色の瞳を向けた。彼は手早く身支度を整え、袖の短い頑丈な明るいシャツと、暗い色のズボン、そして訓練用のブーツを身につけた。動きを制限せず、これからの運動にぴったりの服装だった。
扉がノックされた。
「若様、もうお目覚めですか?」ミレルの声が響いた。
「ああ、入っていいよ」エリアンが答えた。
侍女がトレイを手にして部屋に入ってきた。彼女は清潔な白いエプロンをつけた黒っぽい服を着ている。長い灰銀色の髪はきつく三つ編みにされ、長いエルフの耳には小さな銀の耳飾りがきらめいていた。
「お朝食をお持ちしました。今日はギャレット様との初めての訓練ですから、しっかり食べておいたほうがよろしいですよ」ミレルはそう言って、トレイを机の上に置いた。
そこにはオートミール、新鮮なパン、木の実、そして温かいミルクの入ったマグカップが乗せられている。
「ありがとう、ミレル。彼はもう僕を待っているかい?」エリアンが尋ねた。
「私の知る限りでは、ギャレット様は訓練場の準備をなさるご予定でした。おそらく、もう中庭にいらっしゃるのではないでしょうか」と侍女は答えた。
「心配しないで、朝食を抜いたりしないからさ」エリアンは微笑みながら言った。
ミレルも微笑み返し、彼を一人残して部屋を出ていった。エリアンは落ち着いて朝食をすませると、食器をトレイにまとめて中庭へと向かった。焦りはなかったが、ギャレットが今の自分の実力をどれほど高く評価するか、確かめてみたかった。
(最初の訓練が終わったあと、彼が何と言うか見ものだな)
訓練場にはすでにギャレットがいた。その傍らには、長さの異なる木剣がいくつか置かれている。導師は武器にひびや損傷がないか確認するように点検していた。足音が聞こえると、彼は顔を上げた。
「おはよう、エリアン。時間通りに来てくれて嬉しいぞ」ギャレットが声をかけた。
「おはようございます、ギャレット様」少年が答えた。
「今日は、お前が何を学んできたかを見せてもらいたい。わざわざ自分をよく見せようなどと思わなくていい。ただ、自分の持っている通りに課題をこなすんだ」導師が説明した。
エリアンはうなずいた。ギャレットは長さと重さの合った訓練用の剣を彼に差し出した。
「まずは準備運動からだ。最初に、この訓練場の周りを何周か走る。それからバランスの訓練だ。そのあとで剣に移ろう」導師が指示した。
エリアンは武器を受け取り、訓練場の端に置いた。それから指定されたルートに沿って走り始める。ギャレットは彼のスピードだけでなく、呼吸の仕方にも注意深く目を光らせていた。エリアンはいきなり最高ペースを出そうとはせず、呼吸を整えながら徐々にスピードを上げ、無駄に体力を使わないように心がけた。
何周か走ったところで、導師が彼を止めた。
「そこまでだ。では、バランスをどう維持できるか見せてみろ」とギャレットが言った。
エリアンはいつもの構えをとった。両足を軽く曲げ、上体をまっすぐに保ち、いつでも進行方向を素早く変えられるように重心を配分する。ギャレットが彼の脇に回り込んだ。
「前ばかり見るな。自分の体重がどう分散されているかに気を配れ。相手に後退を強いられたときでも、反撃の機会を残しておかねばならない」導師が説明した。
ギャレットが少年の肩を手のひらで軽く押した。エリアンは重心をずらし、体勢を崩さずに踏みこたえた。
「よし。今度は、私が押す方向を変えたときに姿勢を維持できるか試してみろ」とギャレットが促した。
導師は彼の肩をさまざまな方向から数回押してみせた。エリアンはその都度、足と胴体の位置を修正する。だが一度、あまりにも後ろに体重をかけすぎてしまい、ギャレットはそれを見逃さなかった。
「今のところだ、バランスを崩したのは。何が何でも元の体勢を維持しようとするな。時には小さな一歩を踏み出すだけで十分なこともある」と彼は指摘した。
エリアンはもう一度その動作を繰り返した。今度は適切なタイミングで足を動かし、安定性を保つことができた。
「上出来だ。では、剣を取れ」ギャレットが命じた。
エリアンは木剣を拾い上げ、戦闘態勢をとった。導師はその姿勢を注意深く見つめる。
「いつもの正面突きを見せてみろ」ギャレットが頼んだ。
エリアンは一歩踏み出し、突きを放たれた。動きは素早く正確だった。剣は仮の目標の直前できっちり止まる。
「もう一度だ。だが今度は、武器を戻すのを急ぐな」導師が要求した。
エリアンは再び突きを繰り出し、今度は動作の終わりに一段と注意を払った。攻撃を終えたあと、肩を上げず、バランスを崩すこともなく、剣を元の位置に戻す。
ギャレットはうなずいた。
「突きがどうあるべきかは分かっている。だが、動きの中でそれをどれほど適切にコントロールできているかを見せてもらう必要があるな」と言って、彼は自分の訓練用の剣を持ち上げた。「身を守れ。ゆっくり攻撃する。私が許可するまで反撃はするなよ」
ギャレットは最初の攻撃をまっすぐ繰り出した。エリアンは剣を翻してそれを側方に逸らし、自分の腕全体でその威力をまともに受け止めないようにした。2撃目は斜めからの斬撃だった。少年は一歩下がり、剣の角度を調整して、再び導師の武器を攻撃線から外した。
「悪くない。だが、腕を大きく動かしすぎだ。もっと少ない力で同じことをやってみろ」とギャレットが指摘した。
エリアンは彼の剣をじっと見つめた。
(その通りだ。動きを小さくすれば、胴体を開けずに済む)
次の攻撃は先ほどと同じだった。エリアンはより短い動きでそれを受け止めた。木剣同士が激突したが、今度は無駄に後退することはなかった。
「これでいい。毎回力任せに対応する必要はない。時には軌道を少し変えるだけで十分なこともある」と導師は褒めた。
二人はその訓練を続けた。ギャレットは徐々に速度を上げ、正面からの突きと斜めからの斬撃を織り交ぜてくる。エリアンは相手の肩と腕の位置に目を配り、次の攻撃の軌道をあらかじめ予測しようとした。何度か的確に刃を逸らすことに成功する。しかし、ある攻撃の最中、彼は少し早まって反撃に移ってしまった。ギャレットは剣の軌道を変え、彼を後退へと追い込んだ。
「なぜ今、攻撃しようと判断した?」導師が尋ねた。
「隙が生まれたように見えたので……」エリアンが答えた。
「『見えた』だけでは不十分だ。攻撃の好機だと思ったなら、それが本当に安全かどうかを確かめなければならん」とギャレットが説明した。
エリアンは剣を下ろした。
「つまり、相手の次の動きが続くのを待つべきだったということですか?」と確認する。
「必ずしもそうとは限らん。だが、まず相手の状態を評価しろ。相手がまだ武器を完全にコントロールしているなら、お前の反撃は命取りのミスになりかねん」と答えた。
エリアンはその言葉を噛み締めた。ケイルの記憶には露出した隙をつく手段が数多く残されていたが、今の自分の肉体に合うものはそのうちのごく一部だった。
「わかりました。もう一度やってみます」と彼は言った。
ギャレットは元の構えに戻った。二人は再び演習を繰り返す。今度は、エリアンもうまくいったパリィの直後にすぐ攻撃しようとはしなかった。彼はバランスを保ち、導師の次の動きをじっと待った。
「よし。これなら、少なくとも焦ることはなくなったな」ギャレットが満足そうに声をあげた。
いくつかの演習をこなしたあと、導師は短い休憩を提案した。エリアンは剣を地面に置き、額の汗を拭った。
「僕の技術をどう評価しますか?」少年が尋ねた。
「距離感の把握は上々だし、動きのコントロールも悪くない。日頃から鍛錬を積んでいるのがよく分かる。だが時折、相手の意図を先読みしすぎているきらいがあるな」とギャレットが答えた。
「それは悪いことですか?」エリアンが聞き返す。
「お前の予測が当たっていればな。だが、実際の戦いでは、相手が土壇場で動きを変えることだってある。お前が予測したことだけではなく、目の前で起こっている現実に対応できなければならん」と導師は説いた。
エリアンは黙ってうなずいた。
「お前の父親から、飲み込みが早いとは聞いていた。今ならその理由がよく分かる。だが、いくら技量が高くても、それだけで勝利が保証されるわけではないからな」とギャレットは付け加えた。
「分かっています」とエリアンは答えた。
「それじゃあ、魔法に移ろうか」
エリアンは背筋を伸ばした。彼がこの訓練の中で最も楽しみにしていたのは、まさにこの部分だった。ギャレットは彼に広場の一角へ立つよう促した。
「まずは、普段どうやってマナを使っているか見せてみろ」と導師が言った。
エリアンは意識を集中させた。原初を感じ取り、細心の注意を払いながら微小なマナの流れを体内の経絡へと送り込む。それから頭の中で紋様の幾何学を構築した。
彼の手のひらの上に、小さな銀白の球体が現れた。エリアンが集中力を保っている間、その形は崩れることなく安定していた。
ギャレットはその現象をじっと観察する。
「詠唱なしで紋様を構築したのか?」導師が尋ねた。
「はい」エリアンが答えた。
「いつからそんなことができるようになった?」さらにギャレットが問う。
「もうしばらく前からです」と少年は答えた。
導師はそれ以上追撃の質問をせず、エリアンにその球体を数秒間維持してから消去するように頼んだ。少年は指示通りにし、形成した紋様を外側へと流すと、球体は消え去った。
「上出来だ。流れをコントロールできているし、必要以上に長く紋様を維持しようともしていない。だが忘れるな、無言詠唱の魔法には極めて高い集中力が要る。ちょっとしたミスが逆流を引き起こしかねんのだぞ」とギャレットは警告した。
「わかっています」とエリアンは答えた。
ギャレットはさらに探るような目で彼を見つめた。
「では、通常の呪文がどういうものか見せてやろう」と言って、導師は自分の手を前に突き出し、こう唱えた。
「イグニエル・トル・ヴァラ」
彼の手のひらの上に炎の球体が形作られた。炎は揺らめくことなく穏やかに安定しており、構築された紋様の外へ広がることはない。エリアンはそのマナの動きを注意深く追った。ギャレットが呪文を詠唱して魔法を形成しているものの、そのプロセス自体は少年が使っていた無言魔法とは異なっていた。
「呪文は魔法の形成を助けてくれるが、マナを制御し続ける必要性そのものがなくなるわけではない。そして覚えておけ、いったん紋様を形作ったなら、正しく解放しなければならん。ただ集中を切って、自然に消えるのを祈るなどということはしてはならんのだ」とギャレットが説明した。
説明を終えると、導師はその炎の球体を木々から離れた開けた地面の方へと向け、外側へと解放した。それはごく短い破裂音とともに地面の近くで消滅した。
エリアンはその球体の動きを細かく観察していた。
「つまり、大切なのは、構築した後に紋様が体内に残らないようにすることですね?」と確認する。
「その通りだ。この段階でのミスは痛い代償を伴うことになる。だから、すべてのステップを完全にコントロールできるようになるまでは、決して手順を急ぐな」とギャレットが答えた。
エリアンはうなずいた。
「わかりました」
「よし。今日はここまでにしておこう。剣の訓練のあとで魔法の練習まで詰め込むのは感心しないからな」と導師が言った。
そのあとで、ギャレットは模擬戦を行おうと提案した。彼は木剣を手に取り、エリアンの向かい側に立った。
「これは勝負ではない。今日私たちが反復したすべてのことを、お前がどう実践できるかを見たいのだ」と導師が説明した。
エリアンは構えをとった。
「始めろ」とギャレットが命じた。
少年はいきなり突撃したりはしなかった。彼は距離感、ギャレットの足の位置、そして剣の持ち方を注意深く見極める。最初に仕掛けたのは導師だった。その一撃はまっすぐ放たれたが、エリアンは間に合って刃を逸らし、横へと身をかわした。
生まれた隙をつこうと試みたものの、ギャレットは難なく彼の反撃の進路を塞いでしまった。エリアンは後退し、体勢を立て直して再び次の機会を待つ。
次には、より慎重に行動することにした。正面からの強襲に代えて短い踏み込みを見せ、ギャレットに剣の位置を変えさせようとする。導師はその攻撃を受け流したが、エリアンはバランスを崩さずに素早く距離を取ることができた。
「さっきよりはいい。攻撃のことばかりでなく、そのあとにどう動くかも考えるようになったな」とギャレットが評価した。
模擬戦が続いた。エリアンは何度も間合いを変えようとしたが、ギャレットはその意図をすぐに見抜いた。少年が相手の武器に気を取られすぎた瞬間、導師が一歩踏み出し、彼を後ろへ退避せざるを得ない状況に追い込んだ。
エリアンは荒い息をつきながら足を止めた。
「そこまでだ」と言ってギャレットは剣を下ろした。
少年も自分の剣を下ろした。
「どうでしたか?」と尋ねる。
「初めてのレッスンとしては悪くない。冷静さを保てているし、相手の動きの変化にも素早く気づけている。だが、防御と攻撃をよりうまく組み合わせる方法を学ぶ必要があるな」と導師が答えた。
「ミスを修正するように努めます」とエリアンは言った。
「それを期待している。すべてを一度に習得しようなどと思わないことだ」とギャレットが返した。
導師は剣を他の武器の傍らに置いた。エリアンには疲労の色が滲んでいたが、失望はしていなかった。この訓練によって、ケイルの記憶があったとしても、自分にはまだ改善すべき点が数多く残されていることがはっきりと分かったからだ。
(知識だけでは足りない。今のこの肉体の限界を考慮して、それを応用する方法を学ばなければ)
昼食時、エリアンは屋敷へと戻った。食堂にはすでにメリッサとリオールがいた。弟は子供用椅子に座り、興味深そうに周囲を見渡している。メリッサは襟元に繊細な刺繍があしらわれた淡い緑色の長袖ドレスを着ていた。明るい髪は緩やかにまとめられている。
「エリアン、最初の訓練はどうだった?」彼女が尋ねた。
「よかったよ。ギャレットが僕の技術と魔法を確かめてくれたんだ。そのあとで模擬戦もやったよ」と少年は答えた。
「あまり無理をしていなければいいけれど」とメリッサは心配そうに言った。
「大丈夫だよ、母さん」とエリアンは答えた。
テーブルに座っていたアーウェンが息子に目を向けた。
「ギャレットは満足していたか?」と尋ねる。
「動きのコントロールは悪くないけれど、防御と攻撃の連携をもっと磨く必要があるって言われました」とエリアンが答えた。
「有益な指摘だな。優れた技術があるからといって、不断の鍛錬を怠っていい理由にはならないぞ」と父が言った。
「間違いを直すように頑張ります」とエリアンは約束した。
メリッサが微笑んだ。
「一番大切なのは、ちゃんと休むことよ」
まもなくミレルが昼食を運んできた。テーブルには根菜と一緒に煮込まれた肉料理、野菜スープ、焼きたてのパン、そして青菜が並ぶ。その傍らにはベリーのジュースが入った水差しが置かれていた。兄の姿に気づいたリオールが嬉しそうに手足を動かし、エリアンの方に手を伸ばして何か喃語を発する。エリアンは微笑みながら、そっと弟の手のひらに触れた。
「やあ、リオール。お利口にしていたかい?」
赤ん坊は彼の指を掴もうとする。
「寂しかったみたいね」とメリッサが言った。
「そんなみたいだね」とエリアンが返す。
家族は昼食を続けた。会話は次第に日々の雑事へと移り変わり、エリアンはしばらくの間、両親の話に静かに耳を傾けていた。食事のあと、ミレルがメリッサの手伝いをしてリオールを連れていった。アーウェンは自分の仕事に戻り、エリアンは休息をとるために自室へと向かった。
自分の部屋で、エリアンはゆったりとした明るい色のシャツと柔らかいズボンに着替えた。それから窓辺に腰掛け、先ほどの訓練について思いを巡らせる。ギャレットはきめ細やかな指導者だった。やたらと褒めそやすこともなければ、意図的に課題を难しくすることもなく、すべての指摘が具体的なミスに即していた。
自分にはまだ直すべきところがたくさんある。たとえ彼の記憶が熟練剣士の知識を宿していたとしても、現在の肉体には独自の制限があったのだ。模擬戦の記憶がよみがえる。何度かギャレットの動きを先読みすることには成功したが、それだけでは優位を築くには至らなかった。
(相手の動きを予測するだけじゃなく、すべてが予定通りにいかなかったときにどう対応するかを学ばなければならない)
エリアンは目を閉じ、瞑想に入った。原初に集中し、チャンネルを通るマナの流れを慎重に感じる。朝の訓練のあとだったため、複雑な紋様を展開するつもりはなかった。今はただ、呼吸を整えて心を落ち着かせればそれで十分だった。時間の経過とともに、窓の外の太陽は沈み、庭を暖かな色合いに染め上げていく。
夕方になり、エリアンは再び服を着替えて食堂へと向かった。夕食の席にはアーウェン、メリッサ、ギャレット、そして彼自身が揃っていた。リオールはすでに寝静まっている。メリッサは深い青色のドレスに身を包み、髪を綺麗にまとめていた。テーブルにはハーブ焼きの鶏肉、煮込み野菜、焼きたての平焼きパン、そして温かいベリーのハーブティーが用意されている。
「今日の調子はどうだった?」アーウェンがギャレットに問いかけた。
「順調でしたよ。才能があります、特に動きのコントロールと魔法の面でね。ですが、いくつか改善すべき癖も見つかりましたから、そこはこれから取り組んでいきます」と導師が答えた。
「例えば?」とアーウェンが詳しく尋ねる。
「あいつは時々、早合点して反撃に転じすぎてしまいます。敵の位置をより正確に評価し、自分の予測だけに頼らないようにしなければなりませんね」とギャレットが説明した。
エリアンは冷静に導師の言葉を聞き入れた。
「気を付けます」と彼は言った。
「疑いはしないさ。肝心なのは、理由も分からないまま同じ過ちを繰り返さないことだ」とギャレットが返した。
メリッサが息子を見つめる。
「あまりきついレッスンになっていなければいいけれど」
「大丈夫だよ、母さん。ちゃんとやれているから」とエリアンが答えた。
「そう。でも、休息も同じくらい大切だということを忘れないでね」と彼女が念を押す。
ギャレットがかすかに笑みを浮かべた。
「お母上の言う通りだ。明日も続けるが、負担は少しずつ増やしていこう」
エリアンはうなずいた。まだ先が長いことは分かっていたし、たった数日で全てを成し遂げられるなどとは思っていなかった。夕食は和やかな雰囲気の中で続いた。アーウェンとギャレットが今後の教育方針について話し合い、メリッサが時折息子に他愛のない質問を投げかける。
食事が終わると、ギャレットは家族に平穏な夜を告げ、用意された自室へと引き下がった。アーウェンがしばらく彼と言葉を交わしたあと、エリアンも自分の部屋に戻った。
夜遅く、エリアンは窓辺に腰掛けた。部屋の中は静まり返っている。ガラスの向こうでは木々がざわめき、遠くから夜の森の物音が響いていた。最初のレッスンは有益だった。ギャレットは画期的な何かを教えてくれたわけではないが、以前は見落としていた、あるいは取るに足らないと考えていたミスに気づかせてくれた。
彼は自分の両手を見つめた。前世の記憶にある数々の技を繰り出すには、今の少年の指はまだあまりにも小さかった。
(ケイルの記憶だけに頼るわけにはいかない。自分のスキルを育て、この肉体を鍛え上げなければならない)
エリアンは再び原初に意識を集中させた。複雑な紋様を描こうとはせず、経絡に沿って微量のマナを慎重に流し込む。数分間の瞑想を経て、緊張が徐々に解きほぐされていく。
彼には分かっていた。前途は険しく、長い道のりになるだろう。だが、今や自分にはミスを正し、才能を伸ばしてくれる導師がついているのだ。エリアンは目を閉じ、瞑想を続けた。
明日もまた新しい訓練が待っている。そして彼は、強くなるためにすべてのレッスンを完全に自分のものにするつもりだった。




