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家事代行先は闇堕ち寸前魔法少女の家でした~貧乏一人暮らしの俺は生活力を買われて内緒の焦れ甘同棲生活を始めることになる~  作者: 水瓶シロン
第七章~無自覚好意編~

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第76話 見る人が見るとわかりやすいらしい

「うんうん、なるほどねぇ」


 たっぷり沈黙を作って望と妃菜の様子から真偽を確かめた香澄が、好奇心たっぷりに目を細めて言った。


「嘘はついてなさそうですなぁ~?」

「ああ、誓ってな」


 嘘は――そこに香澄が含みを持たせているのかいないのかは結局のところ本人のみぞ知るところだが、どちらにせよひとまずは望の説明に納得した様子を見せる。少なくともこれ以上望と妃菜事情の詮索をしてくることはなさそうだった。


 流石は運動神経以外はハイスペックな少女。

 その辺りの引き際もきちんと弁えているということなのだろう。


「うんうん。ひなちーが一人暮らしなのは知ってるし、なんせ月ヶ瀬のお嬢様だからねぇ。お手伝いさんの一人や二人雇ってても、別におかしいことはないしね~」


 こんなところで妃菜の実家の名前が説得力に繋がったのは望も想定していなかったことだが、それが納得する理由の一つになったのであれば結果オーライ。


 望がチラリ横目に妃菜の様子を窺えば、少しぎこちない笑みを浮かべていたので、やはり家には複雑な事情があるだろうことが察せられる。


「悪いな、黙ってて。別に二人を信用してないワケじゃないんだ」


 望が申し訳なさそうに力なく微笑むと、香澄は腕を組んで意図せずその豊満な胸を持ち上げた。


「フッ、良いってことよ。誰しも人には言えない秘密の一つや二つ、持ってるってもんさ……」

「ただ者がただ者じゃない感ある台詞を言うな」

「えぇ~! 私もただ者じゃないんだけどぉ!?」

「黙れただ者」

「ねぇ、酷い~!」

「おっと、心はワレモノか……」

「誰が上手いこと言えと!」


 ビシッと香澄からキレ良くツッコミが得られたところで、未だ驚愕の余韻に浸っている俊也にも一言謝っておく。


「シュンも、すまんな」

「ホントだぜぇ、望ぅ!」


 信頼している友人に隠し事をされていたことへの怒りを感じているのか、固く握り込んだ拳を震わせ、眉間にシワを寄せる俊也。


 望はその怒りの捌け口になることくらいは甘んじて受け入れる覚悟でいたが――――


「月ヶ瀬みたいな美少女とプライベートでも一緒にいられるなんてっ、羨ましすぎて発狂するぞッ!?」

「思ってたベクトルの怒りと違う!」


 拍子抜けとはまさにこのことを言うのだろう、と望はその身をもって体感することになった。


「お前はもっと下心隠せ。そんなだからイケメンなクセにモテないんだぞ」

「五月蠅いやい! 素直で良いだろ!」

「素直な下心はただキモいのよ」


 呆れた望が半目を向けると、俊也は「ぐはっ……!」とわざとらしいダメージボイスを自演してみせた。


 ひとまず香澄と俊也に簡単に謝罪を済ませたあとに望が隣を見ると、ちょうど妃菜もこちらを向いており、互いに顔を見合わせて小さく笑った。


(関係がバレたとか聞かされたときはどうなることかと思ったが、一応は丸く収まったな……)


 同棲していることや、妃菜が魔法少女であることは隠しているが、それでも香澄と俊也を納得させることは出来た。


 望も妃菜も一安心……と、完全に油断していたところに、香澄がパンッと両手を叩き合わせる。


「はい、じゃあ前置きはこの辺にしてさぁ~」


 てっきり今までの流れの話が本題かと思っていた望と妃菜は、香澄の口から出たその言葉に思わず目を丸くした。

 そんな二人の反応を楽しむようにニヤニヤと笑う香澄は、少し上体を前のめりにして聞く。


「で、で、ホントのところ二人はどんな関係なの? もしかして、付き合ってる感じ~?」


 望と妃菜が学園外で何かしらの関りを持っていてその理由は何かという点に、最初から香澄の興味はなかったらしい。香澄が本当に気になっていたのは、その関係性。


 友達なのか、恋人なのか、それとも先程話した雇用関係のようなものなのか。


 望がその答えを口にするより先に、カァと顔を紅潮させた妃菜が唇を震わせながら言葉を漏らす。


「つ、付き合うって、こっ……こここ恋人ってことっ……!? 私と望くんがぁ……!?」


 あまりに突拍子もない質問に無反応だった望に対して、そうそう学園内で見せることのない動揺を露わにする妃菜。


「どっ、どう……なんだろ……!?」

「い、いや……どうもこうも……」


 なぜそこで聞いてくる? と、望はどこか遠慮がちな上目遣いで淡紅色の瞳をジッと向けてくる妃菜に戸惑いの顔を向けてから、正面に視線を戻した。


「そんな期待に満ちた目を向けてくれてるところ悪いが、別に付き合ってるとかはない」


 好意の有無はひとまず置いておくにしても、望の記憶違いでなければ、こちらから妃菜に告白した事実も、逆に妃菜から告白された過去もない。


 魔法少女的なマジカルパワーか何かで記憶が改竄されている――などという状況でない限り、恋人関係を成立させるような出来事はなかったと記憶している。


「だよな?」


 望がわかりきった確認を一応妃菜にしてみると、なぜか錆びついた機械がぎこちなく駆動するような笑みを向けられて、


「だ、だよね……」


 案の定肯定した――と、妃菜が本当にそのニュアンスで言ったかどうかを疑うことなく、望は当然とばかりに「この通り」と香澄に顔を戻した。


 たかだか数秒。

 されど数秒のそんな二人のやり取りを目敏く観察していた香澄は、パチクリと瞬きを二、三度繰り返してから――――


「はぁ~あぁ~」


 それはもう盛大なため息を吐いてから、同情するような半目で妃菜を見つめた。


「ひなちー、これは大変ですなぁ~」

「っ、何のことっ……!?」


 この瞬間、四人の中で最も正確な関係図を脳内に描き出せているのは間違いなく香澄であり、当然他三名はそんなことを知る由もないのだった――――

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