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家事代行先は闇堕ち寸前魔法少女の家でした~貧乏一人暮らしの俺は生活力を買われて内緒の焦れ甘同棲生活を始めることになる~  作者: 水瓶シロン
第三章~悪の組織襲撃編~

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第38話 幹部倒したあとに出てくる幹部はさらに強いと相場が決まっている

「ちょこまか動きやがってっ!!」

「ウオォオオオッ!」


 ヒットアンドアウェイで致命傷にならない攻撃を繰り返しては魔法少女の機動力を活かして三次元的に移動する妃菜に、アラゾニアがこめかみに青筋を立てて叫ぶ。


 呼応するように雄叫びを上げた巨人が巨大な拳で右フックを繰り出した。


「はぁっ……!」


 妃菜は長杖を身体の前に持ってきて魔力による障壁を展開。巨人の拳を受け止めてガァン、と腹の底に響くような重たい音が響く。


「潰れちまえぇえええ!」


 気付けば巨人のもう一つある右拳が振り上げられていた。


「……っ!」


 妃菜は障壁を押し込んで受け止めていた拳を弾くと、すぐさま横っ飛びでその場から離脱。靴底を滑らせて体勢を立て直す頃には、先程まで立っていた地面は振り下ろされた巨人の拳によって大きく凹んでいた。


「はぁ、はぁ、はぁ……ふぅ……」


 確かに巨人の攻撃は見切れているが、同時に妃菜も攻めあぐねている。


 大技があと二、三度使える程度に魔力は残っているが、適当なタイミングで使ってまた腕一本吹っ飛ばす程度では割に合わない。


 とはいえ、魔法少女をおびき寄せる餌として発生させられた大量のシャドウを相手にしてからの連戦なので、流石に体力もそれなりに削れてきており、このままではジリ貧。


 そして、アラゾニアもその戦況を見通していたようで、愉快そうに口元が歪む。


「ようやく疲れが見えてきたかぁ? あと何回オレ様の攻撃を捌けるかな、ギャハハ!」


 アラゾニアが手を持ち上げる。

 それに応えるように巨人が右側の双腕をグッと身体に引き付けると、硬く拳を握り締めた。


 妃菜は荒くなっていた呼吸を落ち着かせると、淡紅色の瞳を油断なく細めて構える。


(魔力もある。決め手もある。タイミングは……きっと望くんが作ってくれる……!)


 隣で戦うことは出来なくても、その物理的な距離が離れていても、妃菜は魔力的な繋がりを通して望の存在をいつだって傍に感じている。


 その感覚はこれ以上ない心強さをくれた。


「ほらっ、ぶっ潰れろッ!」


 バッ、とアラゾニアが手を振り下ろすのを指示として、巨人が引き絞っていた矢を放つように二つの右拳を妃菜に向かって放つ。


 次の瞬間――――


「妃菜、跳べっ!」

「……っ!」


 突如背中から望の声が聞こえた。

 妃菜は一瞬驚いたものの、すぐに何か戦況を決定づける一手を打つんだと確信めいたものを感じて、ほぼ反射的に高く跳躍した。


 巨人の拳は寸前のところで妃菜を捉えられず、空を切る。


「お前ら、外すなよ!?」


「もちろんですっ!」

「当然よ!」

「わ、わかりましたぁ!」


 望の声に、両手を突き出して構えていた桃色魔法少女が、ハンドガンの照準を合わせていた黄色魔法少女が、弓矢を引き絞っていた緑魔法少女が答える。


 そして、その返事が嘘偽り出なかったことを証明すべく――――


「「「はぁぁあああああッ!!」」」


 力を合わせるというまさに魔法少女らしい構図で、三人それぞれの大技が相乗効果を生んで威力を増幅させるように集束し、一筋の光となって真っ直ぐ駆け抜けた。


 脅威になり得ないと既に他の魔法少女を意識の外に置いていたアラゾニアが気付いたときには時すでに遅し。

 対応が間に合わず、三人の合わせ技が巨人の右脚にクリーンヒット。


「なぁっ……雑魚が余計なことしやがって……!?」


 樹齢何百年の巨木のように太い脚に大穴が空き、巨体が誇る体重を支えられなくなって身体を大きく傾けた。


 無様に顔面から倒れ込むということはなく、寸前で二つの右腕を地面に突き立てて体重を支えて耐えるが、その恰好こそ望の狙い。


「妃菜、決めてやれ」

「……もちろん」


 離れていて望の声は届かない。

 しかし、確かに妃菜はそんな望の呼び掛けに頷いた。


 宙に跳び上がっていた妃菜は、腕をつく巨人とその肩に乗るアラゾニアを見下ろしながら、長杖を大きく掲げる。


 すると、巨大な魔法陣が頭上に展開されると共に、その中心に魔力がどんどん集まっては球を形成し、その大きさを瞬く間に肥大化させていく。


 圧倒的な魔力の量と密度ゆえに、時折プラズマが弾ける様子も見せながら、気付けば三階建てのアパート一棟程度なら丸々飲み込める大きさに。


「あとで由菜のことを教えてもらわないといけないから、消し飛んじゃわないように頑張ってね」

「ふざ、けるなっ……ふざけるなよ雑魚がぁあああああっ!!」


 ビュン、と妃菜が長杖を振り下ろすと、生成された巨大な魔力の球がゴォウと唸りを上げて放たれた。


 巨人が唯一空いていた左手を突き出して受け止めようとするが、球に触れた瞬間指先から崩壊していき、そのまま手首、肘先、二の腕――と飲み込まれていき、叫び声を上げるアラゾニア諸共巨人を丸々飲み込んだ。


 今後川の流れからを変えてしまうほどの巨大なクレーターを抉り取りながら爆発する白い光の中で、巨人を形成していた黒魔力は輪郭を溶かして消滅。


 地面と大気を震わせるような轟音が収まったあとには、満身創痍ながらも死んではいないアラゾニアがクレーターの真ん中で仰向けに倒れていた。


 パラパラ……と、大きく抉れた地面に小石が転がる音を聞きながら、望は妃菜のもとに駆け寄る。


「妃菜、大丈夫か?」

「うん、流石に疲れたけどね……」

「だよな」


 お疲れ、と望が労いの言葉を掛けると、妃菜がコテンと頭を傾けて望の肩に乗せた。


 特に何の心の準備もしておらず突然のことだったため、望は驚いてビクッと身体を震わせてしまった。


「ひ、妃菜さん……!?」

「あっ、ゴメン……汗臭かったよねっ……!?」

「いやいや、それはないけど! というかビックリするくらい良い匂いだけどそういうことじゃなくて……!」


 二人がクレーターの上でそんなやり取りをしていると、意識も朧に倒れていたアラゾニアが指先を動かしてザリッ、と土を掻いた。


 とてもこれ以上戦える状態でないにせよ、油断は出来ないと望と妃菜の表情が強張る。


「アイツ、どうするんだ?」

「取り敢えず、拘束して魔法少女協会に連行だね」


 魔法少女協会にも牢屋のようなものがあるんだろうか、と望が想像している間に、妃菜がクレーターを飛び降りてアラゾニアに近寄ろうとする。


 そして、拘束しようと手を伸ばしたところで――――


 ヒュンヒュンヒュン――ズガッ……!


「……っ!?」

「妃菜っ!?」


 倒れるアラゾニアと妃菜の間に、どこからともなく飛んできた深い紫色の大鎌が突き刺さった。


 慌てて飛び退いた妃菜。

 望は無事を確かめるように声を出すが、妃菜が空を仰ぎ見ているのを確認し、望もその視線の先を追った。


 すると、空に黒い裂け目が出来ているのが見えた。


 一体その向こうがどこに繋がっているのかはわからないが、大鎌がその裂け目から飛んできたのは間違いなさそうだった。


 仰向けに倒れるアラゾニアも薄らと開いた目でそんな裂け目を確認し、ボソッと声を漏らす。


「ハッ、来たか……強欲(アフィスティア)……」


 空間の裂け目からスゥ、と静かに姿を現したのは、灰色の長髪と黒と紫を基調としたドレスを揺らす、目元を黒銀のマスクで覆った少女。


 纏う雰囲気こそ黒魔力特有の禍々しく威圧感のあるものだが、その少女は紛れもなく――――


「魔法少女、なのか……?」


 そんな直感が、望の口から自然と零れ出ていた。

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