↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『魔法適性ゼロのインテリ眼鏡(元・市役所職員)、異世界ギルドの労働環境を改善して最強の「兄貴」になる。』  作者: げりっぱ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/24

第24話:最強のゼネコン一家(ファミリー)と、俺のモテ異世界ライフはこれからだ!

第24話(最終話):最強のゼネコン一家(ファミリー)と、俺のモテ異世界ライフはこれからだ!


よく晴れた、グーテン街の朝。

澄み切った青空の下、アニキ一家の『現地対策本部』の前には、圧巻にして異様な光景が広がっていた。


「第一班、本日のタスクは領主の城壁の耐震補強工事! 安全帯の着用を徹底しろ!」

「第二班は東の森の生態系調査および、不法投棄のパトロールだ! 魔物が出ても絶対に深追いせず、定時退庁を厳守すること!」


俺がメガホン片手に事務的な指示を飛ばすと、整列した五十人の男たちが、腹の底から響くような野太い声で一斉に応えた。


「「「了解しやしたァァァァッ、アニキィィ!!」」」


グーテン街の裏社会を束ねていたドノバン。

街の最高戦力であるBランクの狂戦士ゼノと、魔法剣士のシルヴェスター。

そして、筆頭舎弟の巨漢ガルドをはじめとする、むさ苦しい屈強な男たち。

彼らは今、全員が全員、俺が支給した『清潔な作業着』と『安全第一ヘルメット』を身につけ、ピシッと直立不動で整列している。

血の匂いと暴力に塗れていた彼らの顔には、今や『充実した労働(ホワイト環境)』による爽やかな汗と、偉大なるパパ(俺)への絶対的な忠誠心が輝いていた。


「よし。装備の点検確認! 安全帯ヨシ! 手袋ヨシ!」

俺が指差呼称を行うと、五十人の男たちがピッタリと息を合わせて復唱する。


「「「安全帯ヨシ!! 手袋ヨシ!!」」」

「今日も一日、ゼロ災でいこう!」

「「「ゼロ災でいこう、ヨシッ!!!」」」


完璧な朝礼である。

かつては血で血を洗う抗争を繰り広げていたならず者や冒険者たちが、今や完全に統率された『超優良ゼネコン企業(最強の武闘派集団)』へと生まれ変わったのだ。


「あっ、パパ! おはようございます!」


朝礼が終わったタイミングを見計らったように、ギルドの制服を着たクロエと、ローブ姿のエララちゃんが、大きな木箱を抱えてやってきた。


「やあ、二人とも。朝早くからどうしたんだい?」

俺が中指で眼鏡を押し上げ、極力『大人の男の渋い声』を作って微笑みかけると、二人は満面の笑みで木箱を差し出した。


「今日も五十人の子供たちのお世話、お疲れ様です! これ、ギルドの女性陣で手作りした『特製・青汁スムージー』です! みんなの健康管理(ベジファースト)に役立ててくださいね!」

「パパも、自分の体調管理はしっかりしてくださいね! 無理しちゃダメですよ!」


「……ああ。ありがとう」


俺は、一切の恋愛感情(フラグ)を含まない、1000%の『純粋な敬意と母性』に満ちた二人の笑顔から、そっと目を逸らした。

受け取った青汁スムージーは、ずっしりと重かった。それはまるで、俺がこの異世界で背負ってしまった『家長としての重圧』そのものだった。


「うぉぉぉん! 街の姉ちゃんたち、いつも俺たちの健康を気遣ってくれてありがてえ!!」

「よしお前ら! アニキと姉ちゃんたちに感謝して、青汁を一気飲みしてから現場に出るぞ!!」


ガルドたちが青汁を飲み干し、「おっしゃァァ!」と気合いを入れて次々と現場へ出発していく。

俺はその頼もしい(暑苦しい)背中を見送りながら、手元のバインダーと、懐に入った『五億円の確約書』の重みを感じていた。


(……おかしいな)


俺はマイ水筒の蓋を開け、温かい白湯をゆっくりと喉に流し込んだ。

魔法適性ゼロ。剣の才能ゼロ。

チートスキルは『病気にかからない身体』『反威圧』『読み書き』という、事務員専用の地味すぎる三点セットだけ。

そんな俺が、ただソノママゾンで購入した『Bunkoid版・絶対にすべらない!合コンでの必勝会話術100選』を片手に、可愛い女の子とイチャイチャする甘酸っぱいハーレム・ライフを目指した結果。

手に入れたのは、街の裏社会の完全支配。

神話の古竜すら退ける、最強の軍団(ゼネコン)のトップという絶対的権力。

そして、俺のためなら一秒で命を投げ出す、五十人の狂信的な『息子たち』。


「……これって、ある意味、俺が公務員時代に夢見ていた『究極のホワイト労働環境(天下り先)』なんじゃないか……?」


利益は莫大。

部下は文句一つ言わずに命令(シフト)通りに働き、定時退庁を遵守。

俺自身は一切の危険を冒さず、一番安全な本部からバインダー片手に指示を出しているだけ。

異世界転生者として、これほどまでに『安全で、豊かで、権力に満ちた生活』を実現した者が、過去にいただろうか。

大成功だ。俺の異世界ライフは、間違いなく頂点を極めている。


しかし。

しかし、だ。


「……ちくしょう、違う!! 俺が求めていたのは、こんなむさ苦しいオッサンたちの現場監督(パパ)の地位じゃない!!」


俺は誰もいなくなった本部の前で、天を仰いでギリッと奥歯を噛み締めた。

富も名声も権力も、すべて手に入れた。だが、俺の心の中にある『甘酸っぱいロマンスへの渇望』だけは、未だに1ミリも満たされていないのだ。


「負けるもんか……! 『Bunkoid版・必勝会話術100選』がダメだったなら、今日ソノママゾンで『Bunkoid版・エルフをオトす究極の心理学』をポチってやる!(脳内で) PDCAサイクルを回し続ければ、いつか必ず、この『偉大なるパパ』という呪縛(レッテル)を打ち破れる日が来るはずだ!!」


俺は白湯を飲み干し、決意に満ちた目で、どこまでも高く青い異世界の空を睨みつけた。

そうだ。俺の人生計画(プロジェクト)は、まだ終わっていない。

五十人の息子たちの食費を稼ぎながら、いつか必ず可愛いヒロインとデートをするその日まで。俺は絶対に諦めない。


「俺の甘酸っぱいモテ異世界ライフは……ここからが本番なんだァァァァッ!!!」


俺の魂の叫びは、グーテン街の青空へと虚しく(そして力強く)吸い込まれていった。


魔法も剣も使えない、一人の元・公務員。

彼がただ『事務処理の常識』と『勘違いモテテク』だけを武器に異世界を制圧し続ける、愛と筋肉と汗の匂いにまみれた終わらない日常は、これからも続いていくのである。


(完)

皆様からのご意見・ご感想をお聞かせください。

誤字脱字もあればお知らせ頂くと嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。