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ルシア戦記  作者: 泉水遊馬
プロローグ

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ルシア大陸

挿絵(By みてみん)


この大陸には、かつて「ルシア」と呼ばれる存在があった。

それは天より降りた機械の神か、それとも人類が作り上げた最後の希望か

今となっては誰にもわからない。

ただ一つ確かなことは、ルシアが目覚めて以来、この世界は「使命」という名の鎖に繋がれたということだ。

大陸中央には巨大なクレーターが穿たれ、その上空に浮遊都市〈エリュシオン・コア〉が静かに輝いている。

そこから放たれる光の柱は、夜空を裂き、地上のあらゆる者に「使命紋」を刻み込む。


選ばれた者は戦乙女となり、選ばれなかった者もまた、使命の声に耳を傾けながら生きることを強いられる。


西方では、聖導院国家アルマ=セラが鉄のような信仰で大陸を統べようとしている。


白聖都セラフィアの黒い塔は高くそびえ、使命に逆らう者を「凍結」の刑に処す。


慈悲と狂信が表裏一体となったこの国は、戦乙女たちを育成し、ルシアの意志を地上に執行する矛として機能していた。


東方、果てしない砂海を支配するヴァル=アザル帝国は、使命を拒絶する反旗を翻した。

魔導銃と残響核技術を武器に、古代の遺産を掘り起こしながら「自由」を叫ぶ彼らは、聖導院と冷たい対立を続けている。


砂都アザル=メサの工廠では、日夜、新たな兵器が生み出され、いつか訪れるであろう決戦に備えていた。


北方の氷の王国フロストヴェイルは、使命を「天啓」として尊び、厳格に生きる。


氷晶の大聖堂に集う戦士たちは、使命に従うことを誇りとし、侵攻してくるエイドロンと日夜戦い続けている。


南方、霧に包まれたレムナント群島では、霊視士たちが未来の断片を読み取りながら、使命とは異なる道を探ろうとしている。


彼らはエイドロンとさえ共存の可能性を模索し、聖導院からは危険視される異端の地となっていた。



そして、大陸の至るところで、「エイドロン」と呼ばれる異形が現れるようになった。

使命の声に逆らう者、使命を果たせなかった者、または使命そのものに疑問を抱いた者の心に生まれる、歪んだ残響。

最初は小さな影だったそれらは、今や巨大な災厄となり、都市を、村を、人の心を蝕み始めている。

聖導院はこれを「背信の罰」と呼び、帝国は「ルシアの暴走」と断じる。

だが真実は、まだ何も明らかになっていない。


今、この時代、黒鐘の街ノクティスで、一人の少女が使命を授かった。

彼女の名はアリア・ルミナリス。

黒髪を短く切り、赤い瞳を持つ、小柄で可憐な元シスター。

彼女はまだ知らない。

自分が、これからこの大陸の「使命」という名の枷を、根底から揺るがす存在になるとは。

光の柱は今日も大陸の中央で輝き続け、浮遊都市エリュシオン・コアは、無言で全てを見下ろしている。

やがて、鎖は軋みを上げ、世界は大きく動き始めようとしていた。



挿絵(By みてみん)

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