第21話
それなりに充実した休日を過ごした俺は、再び学業に精を出し授業が始まるまでに教科書を読み予習をしている。
こうして授業に向き合えるのは、やはり秋臣の記憶を共有していて授業の内容についていけるためというのが大きい。
…………もし共有できたものが秋臣の能力のみで、言葉やこちらの常識がわからない状態だったと想像するだけでゾッとするな。
それと最近自覚できた変化だが、本当に前の世界は異常だった思えるようになった。
なぜなら、この秋臣が生きている世界に来て、まさに別世界を知った事で前の時には何も疑問に思わなかった戦場で一生を終える生活がおかしいのだと理解できたからだ。
動物でも食べて・寝て・仲間と関わり・家族を持ち・子を育てて次代へ血をつなげていくのに、戦場の俺達はそんな当たり前の事ができていなかった。
もしかすると前の世界の俺の知らない場所ではそういう自然な生き方をしている人々がいたのかもしれないが、戦った戦場の数や聞いた事のある噂話を合わせると、俺の生きていた前の世界に平穏はほとんどなかったはず。
…………そういえば子供が戦場に出るのはおかしいと必死に交渉して保護をしていた人がいたな。
今思うと、あの人は恐ろしく命の価値が低かった前世の世界で珍しくまともでやさしい人だったのだろう。
……いや、命の価値が低いのが当たり前だった前の世界で弱い命を守ろうとしていたのだから異常と言えるのかもな。
おそらく何度も損をして何度も無力感を味わっていたかもしれないが、それでも自分の意思を貫いていたのはすごいと思える。
今の俺は一度死んで別の世界に生きる事になったのだから、今回くらいはあの人みたいに自分の意思を貫く生き方をしてみても良いのかもしれない。
俺が今後の生き方について考えていると唐突に放送の合図があった。
『器物級の鶴見 秋臣、今すぐ生徒会室まで来なさい。繰り返す。器物級の鶴見 秋臣、今すぐ生徒会の部屋まで来なさい』
「「「「「…………」」」」」
学内放送が終わると、教室にいる全員が俺を見てきた。
誰も何も言ってこないが、明らかにこいつ何をやった……? みたいな疑問をヒシヒシと感じる。
さすがに生徒会からの呼び出しは無視できないか。
俺は教科書を片付けて席を立ち学級委員に次の授業までに帰ってこれない場合は、次の授業の先生に俺が生徒会に呼び出されていると伝えてほしいと頼み教室を出た。
本当に俺は何で呼び出されたんだ?
◆◆◆◆◆
生徒会の部屋まで行く途中の廊下でもすれ違う奴らからも教室で受けた視線と同じものを受けたものの、特に騒ぎは起こる事なく無事に生徒会室に着いたので、軽く身だしなみを確認し生徒会室の扉をノックする。
「器物級の鶴見 秋臣です。入っても良いでしょうか?」
「どうぞ」
中からの返事を待ってからドアを開けると生徒会全員がそろっていて俺を見ていた。
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