第10話 親父
アランの驚愕の正体が明かされます!
今まで地味に張った伏線が分かるでしょうか?
その後俺はアランとステラと家族水入らずで過ごした。
二人とも予定が入っていたのにも関わらず俺のためにキャンセルしてくれたのだ。
何でも、スーベルおじさんがアラン同様外で盗み聞きしていたらしく、あの後
鼻水を垂れ流し、目を真っ赤に染めたスーベルおじさんが真顔で
「後は私に任せてください。」と国王の所に報告に行ってしまったのだと。
家族の愛に心打たれたらしい。
そのため思ったより出発が早まり1週間後ということになった。
それまではこうやって三人で遊んだり、
森まで出かけて一緒にピクニック(狩り)に行ったりなど楽しい時を過ごした。
夜寝る時も二人とも俺の兄弟を作る作業を一時止めて俺と一緒に三人で寝た。
ベットは狭かったが嫌な気持ちはしなかった。
風呂を入る時も、二人とも俺と一緒に入ってお互いに背中を洗いっこした。
特に驚いたのが、アランの背中が大きかった事だ。
親父の背中は大きいと言うが、アランの場合は二重の意味で大きかった。
俺は思わず親父の事を思い出して、泣きかけたほどだ。
その背中は大きく、暖かく、頼もしく、そして何より愛おしい。
これが家族なのかと再認識させられた。
時折、授業も、稽古も付けてくれてその度に俺の事を
思っていてくれたことへの感謝の気持ちで一杯になった。
そして後2日を残すばかりとなった所でアランに呼び出された。
その時ちょうどステラが買い物に出ており、これは重要な話だなと思い気を引き締めて向かった。
ドアを開けて中に入ると椅子に腰掛けているアランの姿が目に映る。
此処は俺の部屋、俺がこの世界に来た事を認識した特別な空間であり
始めて二人にあった懐かしい場所でもある。
昔俺が寝ていた小さなベットはなく、この部屋には本棚と机、木刀、
服を収納するクローゼット、それに大きめのベットが一つ。
そして思い出の等身大の鏡がおいてあるだけの極めて最小の物しか置いていない場所だ。
そしてアランは鏡を挟んで向かい側の机とセットの椅子に座っている。
その表情はどこか辛そうな、でも決心したような顔だった。
そしてアランは単刀直入に俺に質問した。
「何時から俺の息子になってた?」
俺はその質問に血の気が引いていく感覚を覚えた。
「な、なにを言ってるんですか、お父様。僕は――」
「そういうのいいからさ、俺はお前は誰だって聞いてんだよ。
考えても見ろ普通のガキが4歳で魔法を習得し、
5歳になる頃に山を消し去る魔法を放つ。
この時点で常人離れしすぎてんだよ。
4歳児だぞ、そんな子供魔法の構造なんか理解できるもんか。
それが、6歳になる時には独自で魔法の改良まで行いやがった。
俺達の血を引いてるからだと、笑わせんな。
バカいうんじゃね、その歳であんな事できる分けないだろ。
俺だって信じたくなくてずっと見守ってきたさ。
そしたら剣の腕までステラに4割出させたって言うじゃねーか。
俺は自分の耳を疑ったよ。
でもな、ステラに透明化の魔法を使ったのは不味かったな。
これはいくらなんでも事実から目を背けることができないって思ったよ。
そしてあまつさえお前はその技でステラに一瞬全力を出させ、
教えてもいない算術や礼儀作法をこなしやがった。
そしてあの成長っぷり、もう常人じゃない。
俺の言いたい事分かるよな?天才って一言でかたずければ楽なのかも知れない。
けどな、俺は知ってんだよもう一つその天才に近い行為が出来る方法をな。」
「・・・・・・。」
知ってる。
アランは知っているんだ、俺が転生者だって事。
何処でそんなことを聞いたのかはどうでもいい。
俺を責めてくれて構わない。
だから、だからそんな辛そうな顔をしないでくれ。
頼む、頼むからせめて俺を殴るとかしてくれたら、
「俺の子供を返せ」って怒鳴ってくれたらどんなに楽か。
「・・・お前転生者だろ?」
これだ。
やっぱり知ってた。
どうしてアランが転生者の事を知ったか。
もしかしたら俺以外にもいるのかもしれない。
前例があるのかもしれない。
でも、そんな事はどうでもいい。
今は目の前の事実だけに目を向けるべきだ。
「俺はさ、別に自分の息子が転生者だからってよ、嫌いになることはないさ。
だって俺にはそんな事する資格すらないからな。」
「・・・どういう事ですか?」
「俺は、転生者なんだよ。」
「!?」
「驚いたろ、俺も最初は驚いたぜ自分が生きてることがな。
通りで俺結構裏技的なの詳しかったろ?」
「なるほど、そうだったのか・・・」
「皮肉だよな、俺の息子が転生者だなんてな。
俺はお前が生まれた時心底感動したよ、この子は俺の子だ。
こっちの世界で出来た初めての俺の子だと。
その時はお前が転生者なんて夢にも思わなかったよ。」
「こっちの世界?」
「ああ、俺は向こう世界でも親やってて一人息子がいたんだ。
でもよ、俺がドジって病気について伝え損ねたせいであいつには辛い思いをさせた。
きっとよっぽど辛かっただろうな。」
アランは懐かしい過去を思い出すように遠くを見つめ、その瞳に涙を浮かべた。
「わりーな、当たっちまってよ。
お前も自分の意思じゃなくて此処に連れてこられたんだもんな。
もし差しさわりがなければ、お前の事も聞いていいか。
俺だけ話すのも忍びないしな。」
「ああ、俺こそすまない。あんたの大切な息子がこんなんだったら
俺はてっきり怒鳴られるかと思ったよ。
でもあんたはこんな俺にでも心底愛を捧げてくれた。感謝してるぜ。」
「よせやい、そんな柄じゃねーよ。それよりお前さんはそっちの方が地なのかい?」
俺は彼に全てを話す事にした。
たとえ俺に捧げたんじゃないとしても、愛を、
親としての愛を捧げてくれたこの人に俺は全てを話したい。
今まで溜まっていた気持ちを吐き出したい。
そして俺は話した。
自分が親父をどれほど慕ってかを、そして親父の死にどれほど悲しんだか。
母親の連れてきた新しい父にどれほど心抉られたか。
そして俺がどれほど親父に貰った世界に救われたか。
そして最後は赤ん坊を助けて死んだ事まで洗いざらい全て話した。
話し終わった後、俺の心はスッキリした。
溜まっていた気持ちを綺麗さっぱり流れさせた事への開放感で一杯だった。
俺の話を聞いて、彼はただ一言こういった。
「お前は、俺達の息子になれて幸せだったか?」
だから俺も応える、俺の正直な気持ちで、最高の笑顔で。
「ああ、とっても最高だったよ。」
俺がその言葉を言い終わる前に彼は俺に抱きついてきた。
その両目からは涙が溢れてる。
「よしてくれ、俺はたいした人間じゃない。」
そして俺は次の彼の返事に耳を疑った。
「お帰り、竜也。」
気づいた時には俺も両目から信じられないほどの量の涙を流していた。
「う、嘘だろ・・・親父、親父なのか?」
「ああ、そうだ竜也。精一杯生きたんだな、ごめんな父さん、
病気の事知られるのが怖くてずっと黙ってたんだ。
ごめんな、ごめん。」
「俺も、俺も、ごめんな親父・・・俺、親父より早く死んじまった。
ごめんな、ごめんな親父・・・・」
俺達はステラが帰ってくるまで泣いて泣いて泣き続けた。
俺は2度も親父の息子として生まれるという体験をし、
親父は2度も同じ息子を持つという奇妙な関係になった。
それでも今までどおりの接し方で行く事になった。
でも、二人の時は存分に昔話をするつもりだ。
俺達はこうして親子なった。
ちょっと分かり難いと思う人は是非二度見ていただけると分かると思います。
感動シーンを書いたつもりなのですが・・・分かりますよね?
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