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ドオオオォン!
艦体が歪む、といって過言ではないほどの衝撃が、ブリッジの全員を襲った。無重力のはずが、立っていた者たちは一斉に薙ぎ倒された。
巨大な光の波が艦尾から発せられ、無数にも思われたミディオン艦隊へと突き刺さった。
着弾した一本の点から波紋を生じ、津波のごとく、敵の戦艦隊を次々に飲み込んでいく。
やがてホワイトアウトしていた視界が戻ると、ミディオン艦隊は一枚の美しい布から、ボロギレのような姿に変わっていた。
「す、すげえ・・・・・・」
オペレータが声を出す。
ミリエルも、思わず声を忘れて見入った。
これほどの力、果たして人類が手に入れても良かったのだろうか。
「ABC魚雷を全弾発射せよ。残敵を掃討する」
「了解。ABC弾発射」
「ジェネレータの様子はどうか」
「航行は可能です。シールドも展開可能。・・・・・・しかし、もうビームは一発も撃てません」
「そうか。予想通りだな」
提督がまた、ふ、と笑うのが見えた。
「全艦へ通達。・・・・・・全速前進、敵艦隊へ突入せよ。全男性乗組員は宇宙戦用アーマースーツを着用、白兵戦の準備をせよ」
「了解」
「女性乗組員は救命艇へ移せ。直ちに月基地へ戻れ」
「て、提督!わたしたちも戦います!」
ミリエルは叫んだが、アラン・ケレスは提督席からふわり、と降りると、肩にぽん、と手を置いた。
「もう本艦に戦闘能力はない。メインエンジンも失った。あとはもう、動くだけのマトだ」
「しかし」
「敵さんはまだまだ多数、僕たちは少しでも敵を沈めてくる。スーツは全員分を揃えてないし、君たちは帰りたまえ」
「でも」
「少尉。・・・・・・女性は10人いれば、子供を10人産める。君たちにはまだ、やることがあるだろう?」
「・・・・・・」
「さあ、君の役割は、他の乗組員を速やかに退避させることだ。もうバリアの効きも弱い、今すぐ脱出してくれ。一刻の猶予もない。・・・・・・僕の子供が産まれたら、いい子に育ててやってくれ」
「わ、わたしは提督の子など、身ごもって」
ミリエルは周囲を見た。
オペレータのシータ、操舵士のロリエ、砲撃担当のカナン。
そうか、提督は、このために。
涙が溢れた。
「きっと、きっと戻ってきて下さい!提督閣下!」
「ああ。きっと今度こそ、君をベッドに誘ってみせるさ。その時まで死ねないな。・・・・・・さあ、暴れ足りない奴らは第3艦橋へ移れ。アーマースーツ着用、接敵して乗り込むぞ!」
「おおおおおっ!」
男たちは一斉に歓声を上げた。
きっともう地球に、故郷に帰ることはできないだろう。
だが、ここまでやったのだ。もう、誰の顔にも後悔はなかった。
今まで散々地球を荒らしたミディオン相手にやってやった、絶対的な戦力差を覆して。その高揚感で満たされていた。
「提督、カザマ隊より通信!・・・・・・ワレ、転舵装置不調につき、今からミディオン艦隊へ突入せり」
「あいつめ・・・・・・素直に帰れ、と言ったのに」
「祭りに招待されない覚えはない、との伝言がついています」
「勝手にしろ。・・・・・・では少尉、頼んだぞ」
ブリッジの扉が開き、気炎を上げて男たちが出ていった。
「少尉、ご命令を」
シータに呼ばれて、ミリエルは自分の役割を果たすべく、救命艇の場所を指差した。
「みんな、生きて帰るわよ」
「「はい!」」
2033年、8月5日
火星外軌道上での地球防衛軍艦隊、ミディオン主力艦隊による決戦、集結
被害
地球防衛軍艦隊 戦艦21隻中撃沈3、帰還18隻。うち大破5、小中破13
カザマ別動隊 小型艦18隻中18隻全艦帰還。大破2、小中破5
敵戦艦の鹵獲23
人員被害 アラン・ケレス提督以下、未帰還者758名 生還者75名
ミディオン艦隊 戦艦129隻中撃沈78、大破20、帰還3、鹵獲23
人員被害 なし
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