第44話 彼氏にプレゼントしたいおもちちゃん
夜。祖母の家にある一室で、おもちはとある物を作っていた。
すると、ドアが開き、パジャマを着たあずきが入ってきた。
「おもち。お先に」
「あっ……うん」
作業を中断すると、あずきはおもちの方をチラッと見る。
「何作ってたの?」
「これは……その……」
おもちの頬が赤くなり、もじもじする。
「これって……しおり?」
「うん……大翔君にプレゼントするために……」
それを聞いて、あずきがふふっと微笑む。
「そっか」
「え、えっと……とりあえず入ってくるね」
深掘りされるのを避けたいのか、逃げるように部屋を出た。
(おもちは恥ずかしがり屋だから知られたくなかったかな?)
体を洗ったおもちは湯舟に入り、ふ~っと体を整える。
(疲れた……集中し過ぎちゃった……)
体を伸ばすと、力が抜ける気がした。
(大翔君……私手作りのしおりが欲しいって言ってくれた……)
その理由は使う度に自分を思い出したいからと言ってくれた。
(嬉しいな……そう思ってくれるなんて……)
大翔からプレゼントされたスノードームは自分の部屋に飾られている。
視界に入るたびに、大翔の顔を思い出してドキドキしている。
(大翔君も……プレゼントしたら、私みたいにドキドキしてくれるのかな?)
その瞬間、ハッとなり両手で顔を抑える。
(な、何考えてるの!私!)
一人になったらすぐ大翔君のこと考えちゃう……
(やっぱり私……大翔君のこと好きだなぁ……)
すると、体がのぼせてきた。
(そろそろ上がらないと……)
お風呂から上がり、部屋に戻るとあずきが既に眠っていた。
最近、仕事が続いていて疲れていたのだろう。
「……」
おもちはスマホを取り出して、誰かに電話をかけた。
『もしもし?』
「もしもし大翔君?今大丈夫?」
『うん。大丈夫だよ。どうしたの?』
「えっと……その……」
恥ずかしくてもじもじする。
「大翔君と……話したくて……」
そう言った瞬間、心臓の鼓動が大きく聞こえた。
迷惑だったかな……そんなことで電話かけられるの嫌だったかな……
そんな思考が頭に浮かぶ。
『そっか……僕もおもちちゃんと話したかったから嬉しいよ』
「……!」
それを聞いて、心臓の鼓動がどんどん聞こえなくなっていく。
『今何してるの?』
「今……おばあちゃん家に来ていて……」
『そうなんだ。こっちは……』
大翔が話そうとすると奥から杏の声が聞こえる。
『お兄ちゃん誰と話してるの?』
『誰でもいいだろ』
『あっ!隠すってことはお姉ちゃんでしょ!代わって!』
『嫌だよ』
『なんで!』
『話したかったら後で自分からかけろよ』
『え~っ!』
二人のやり取りを聞いて、おもちがクスッと笑う。
『ごめんごめん。すぐ黙らせるから。ほらあっち行け』
『もう……』
「二人共仲良いね」
『喧嘩は多いけどね』
「それで……大翔君は何してるの?」
『今じいちゃんの家にいる。親戚の集まりがあって』
「一緒だね」
『おもちちゃんは親戚の人と仲良い?』
「まぁ……それなりには」
『僕の場合は集まったらすぐ仕事の話だからさ。可愛がられもしなかったからつまんないんだよね』
「そうなんだ……」
『そんな時にかけてきてくれたから嬉しいよ』
嬉しいと言われて、胸にじわっと熱い何かが広がる。
「大翔君……」
『何?』
ごくりと唾を飲みこむ。
「好き……」
「……!」
大翔の体が固まる。
すると、杏が我慢の限界が来たのか、怒りながら大翔の方に向かう。
「お兄ちゃん!まだ⁉早く……」
「僕も好きだよ。おもちちゃん」
それを聞いて、杏の動きが止まる。おもちも聞いた瞬間、頬が赤くなる。
「冬休み会えなくてごめんね。家の事情で忙しくて……でも春休みは必ず時間作るから。その時、一緒にデートしよう?恋人として」
『……!うん!』
大翔が再び口を開こうとすると、鎌足の声が聞こえる。
「大翔。こっち来てくれ」
「……ごめん。もっと話したかったけど……」
『ううん。行ってきて。始業式会えるの楽しみにしてるね』
「うん。じゃあ……またね」
『またね』
電話を切ると、急ぎ足で鎌足の方へ向かった。
最後まで会話を聞いていた杏も大翔の方へと向かう。
(二人の空気壊すの嫌だからまた今度にしようかな)
きっとおもちは大翔と話せた時間をかみしめているはずだから。
「……よし」
おもちは再び、しおり作りを再開した。
始業式当日。SHRが終わるとすぐに、おもちのクラスへと向かう。
おもちを呼ぼうとすると、教室を出ようとしたおもちとぶつかりかけた。
「うわっ!ご、ごめん!」
「ううん……大丈夫。どうしたの?」
「その……会いたかったから……急いじゃった……」
「……そっか」
おもちが微笑む。
「大翔君」
スクールバッグから綺麗に包装された箱を取り出す。
「これ。この前のお返し」
「……もしかして」
「開けていいよ」
包装紙を開けて、箱を開けると……中にはしおりが入っていた。
水彩紙に押し花がデコレーションされていた。
「……!」
「その……どうかな……?」
「ありがとう!綺麗なしおりだね」
「えへへ。ちょっと張り切っちゃった」
照れくさそうにすると、少し恥ずかしそうに言う。
「その……箱にもう一つ入ってるものがあるから見て?」
「うん?」
箱を見ると、しおりの他にもう一つ、何かが入っている。
「これは……」
箱から取り出し、よく見ると貸出カードだった。
発行日は去年の11月13日。そして返却期限はNo expiration date.(有効期限なし)
「図書室のカード?」
「ううん」
「じゃあ何の貸出カード?」
「それは……」
恥ずかしがって言わなかったが、決意したように言う。
「私の……貸出カード……」
「……えっ?」
大翔がポカンと固まる。
「そのカードで……私を借りることができる……」
おもちの顔がどんどん赤くなっていく。
「大翔君が一緒にいたい時とか……一緒に楽しみたい時とか……そのカードがあれば……私はずっと大翔君のそばにいる」
大翔はじっと貸出カードを見つめる。
(発行日……もしかしてこれ……)
去年の11月13日。文化祭だった日。そして……大翔とおもちが恋人になった日……
「大翔君は……困ったら自分を頼ってほしいって言ってたよね?私も……大翔君が困ってたら……力になりたいって思ってるから……いつでも頼ってね?」
大翔の両腕がプルプル震える。
(本当に……おもちちゃんには心を動かされてばかりだ……)
初めて出会ったあの日から……ずっと……
「……今借りたい」
「えっ……今?」
急にカードを使われることで、戸惑っている。
「う、うん……何?」
聞いた瞬間、大翔がおもちをギュッと抱きしめる。
「……!!!」
「……やっぱり僕の彼女はおもちちゃんじゃないとダメだ……」
「あっ……えっ……ふぁっ……」
急に抱きしめられたことでパニックになっている。
「絶対……絶対幸せにする……!」
「……!」
おもちは大翔の言葉から強い決意を感じ取った。
そんな二人を隣の校舎から見つめる人物がいた。
「……」
篠塚御萩。おもちのクラスメイトで、真奈美の元取り巻き。
「篠塚。どうした?」
担任に声をかけられると、御萩は視線を外し、担任の方を向いた。
「……何でもありません」
「そうか。気を付けて帰るんだぞ」
担任が去ると、再び二人の方へと視線を向ける。
「……」
その後、フロアを去った。まるで幸せそうな2人を見たくないように……




