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リヴァイス・リヴァイバル〜果てなき世界の調律録〜  作者: 琥珀
第1章 『The Maiden's Requiem』
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39.対キメラ①

 再び繰り出された『テイル・スコーピオ』の尾撃を紙一重でかわしたマキナは、あえて反撃に転じず、ひたすら回避に徹し続けた。


 毒の雫が地面を焼き、焦げた匂いが鼻を刺す中、彼女は呼吸を乱さぬよう動きを最小限に抑え、戦場全体を見据える。



「(とにかく被害を最小限に留めないと……!!まずは皆が撤退する時間を稼ぐ!!)」



 三体のキメラが持つ能力はいずれも脅威ではあるが、それは討伐を前提とした場合の話であり、現状のように回避に専念すれば、対処は不可能ではない。


 『シェイド・リザード』の能力で姿を消す個体と、『モア・ウルフ』の機動力を持つ個体は確かに厄介だが、『グラウム・ビースト』と『ストーン・タートル』の特性を併せ持つ個体の動きは鈍く、対処は残る二体に集中すれば済む。



「(警戒しないといけないのは、『テイル・スコーピオ』の毒と、『ウイング・バッド』の超音波……それに『シェイド・リザード』の保護色(ステルス)。毒と保護色は当たり前として、超音波もまともに受けたら数秒は動けなくなる。絶対に避けないと)」



 初見では驚きを隠せなかったマキナだが、『英雄』の名は伊達ではなく、瞬時に状況を分析し、その動きは完全に冷静さを取り戻していた。



「(全員キメラだと、頭の中が混乱しそう……一旦、名前を付けて整理しよ)」



 それぞれの特性を結びつけながら、『モア・ウルフ』+『フロート・ジェリー』+『テイル・スコーピオ』の個体を『ヴェノム・ストーカー』。


 『シェイド・リザード』+『ウイング・バッド』の個体を『スカイ・ブラー』。


 そして『グラウム・ビースト』+『ストーン・タートル』の個体を『ヘヴィ・ブロッカー』と、それぞれを名前を仮付けた。


 個体ごとの整理が一気に進み、マキナの視界から迷いが消えていく。



「(兵団の人たちが意図を汲んで、負傷者と非戦闘員を下げてくれてる。もう少し時間を稼げば、周囲を気にせず戦えるようになる!)」



 戦況は少しずつではあるが確実に好転しており、自身の呼吸や心拍も、平静を保てている。



「う……むむむ……なんだ今の爆発は……」



 だがこの男の覚醒が、再び事態を急転させる。



「ロス国王、あちらをご覧ください」

「なんだアークル……一体何が……ま、魔物だとぉ!?」



 視線の先に三体の魔物(キメラ)を認めた瞬間、ロスの顔色は一変し、理性が音を立てて崩れ落ちた。



「な、なぜまた魔物が!?や、やはり結界が破られて……!?だ、だが結界はマキナが調査して……ま、まさかマキナが魔物を結界の中に招き入れて!?」



 半ば反射のように責任を転嫁するロスを、隣のアークルが静かに制する。



「ロス国王、落ち着いて下さい。それは早計に過ぎます。現にマキナ様は、いま魔物と戦っておられます」

「し、しかし!!あれが演技という可能性もあるぞ!!この後奴らを使役して、国内を暴れ回るやも……」



 その言葉を遮るように、マキナとキメラの激突によって大地が揺れ、激しい衝撃とともに土埃が舞い上がる。


 瞬く間に視界は白濁し、誰の姿も捉えられなくなる。


 そして、その誰の目にも留まらぬ土煙の中で────



「はぁ……めんどくさいですね……」



 アークルは深い溜息を吐き、心底うんざりしたような、それでいて冷たい侮蔑を宿した表情を浮かべていた。


「ん……?なんだ、なにか言ったかアークル」

「いえ……何も。ただマキナ様がここで魔物と戦うメリットは無い、と申し上げただけです」



 立ちこめていた煙がゆっくりと晴れ、その揺らぐ白の向こうで、アークルはすでにいつもの静かな面持ちへと戻っていた。


 感情を押し殺したまま、周囲に聞こえぬようロスの耳元へ身を寄せ、低く囁く。



「仮にこれがマキナ様の示威行為だとしても、わざわざ目の前で手の内を晒す利点はありません。ましてや、マキナ様に国を陥れる理由など存在しないのです」

「だが……ならば、なぜ……!?」



 動揺に揺れるロスの呼吸は荒く、視線は定まらない。アークルはそれをなだめるように、さらに声を落として語りかけた。



「理由が何であれ、マキナ様はいま魔物と戦っておられます。まずはその事実を受け入れ、いま我々に必要なのはこの状況への対処です」

「そ、そうか……そう、だな……」



 ようやく思考の霧が薄れたのか、ロスはぎこちなく顔を上げ周囲を見渡し、視界に入った一人の所員を乱暴に呼び止めた。



「おい、そこのお前!!ただちに国内の兵団と衛兵、すべてに伝達し、ここへ集結させろ!!」

「は、は……!?ぜ、全軍を、ですか?!」

「そうだ!!一人残らずだ!!急げ!!」



 鋭い怒号に背を押され、所員は反射的に敬礼すると、足音を乱してその場から駆け去っていった。



「どれほど異形であろうと、魔物は魔物だ……!数と力で押し潰してくれる!!」



 焦燥に突き動かされた拙速な決断に、しかしアークルはそれを敢えて嗜めることはしなかった。



「(……まあ、この流れに任せましょうか。この程度は乗り越えてもらわなければ()()()()()()())」



 口元はベールに隠れ見えないが、それでもなお、覆いの奥で密やかに歪む気配と表情からは、どこか愉悦を含んでいるように思える。


 そのやり取りの裏で、マキナは三体のキメラを同時に相手取りながら、なおも時間を稼ぎ続けていた。



「(速い、硬い、時々見えない……でも、よく観察すれば今まで戦ってきた魔物の特徴を繰り出しているだけ。落ち着けば対処できる……落ち着け、落ち着け……!!)」



 乱れかけた呼吸を必死に整えながら、マキナは極限まで集中力を研ぎ澄ませ、四方から迫る無数の攻撃を、紙一重の動きでいなし続けた。


 反撃に転じる余裕はないが、そもそもの目的は注意を引きつけ続けることであり、綻びは生じていない。



「(少しずつ目も慣れてきた……このまま時間を稼げば、反撃に移れる隙も作れるかも。避難も進んでるはず……あと少し……!!)」



 わずかながら、勝機の光が見え始めた、その瞬間だった。



「撃てぇぇぇぇぇぇ!!」



 遠方から怒号が響き、その直後、無数の様々な攻撃がキメラたちへ目掛け、激しい衝撃と閃光とともに降り注いだ。



「ッ!?」



 マキナが振り返った視線の先では、ロスの号令のもと、統制もなく攻撃を続ける兵士たちの姿があった。



「撃て!!撃ち続けろ!!そのまま化物を仕留めろ!!」



 魔物を排除しようとする本能としては間違いではないが、作戦も連携もなく、ただ数と火力に任せた猛攻は致命的な悪手。


 何より、マキナが必死に集め続けていた注意をすべて奪い去る行為に他ならない。



「ダメ!!」



 状況が崩れたことを悟り、マキナは即座に制止しようと叫ぶ。



【ギィ゙────────!!!!】

「ッあ゛!?」



 次の瞬間、耳を裂くような超高音が頭蓋の内側を貫き、視界が大きく揺れ動き、全身の力が瞬時に奪わるとともに痺れたように身体が動かなくなる。



「(しまっ……!!『ウイング・バッド』の超音波……!!)」



 これまで高い集中状態のなか、牽制によって封じ続けていた攻撃を、意識を兵士たちへ向けた一瞬の隙に直撃を許してしまう。



「ッ!?ぅあ゛!?」



 追い打ちをかけるように、『ヘヴィ・ブロッカー』がその巨体をもってしてマキナの上へとのしかかった。


 『グラウム・ビースト』と『ストーン・タートル』が融合した事により、その質量は五トンにも及ぶ。


 本来のマキナであれば退けられない重さではないが、『スカイ・ブラー』の超音波によって力が入らず押し潰されぬよう耐えるだけで精一杯だった。



「……!!待って!!ダメ!!」



 マキナがキメラの視界から消えたことで、三体の標的は完全にロスと兵士達へ移ってしまう。


 食い止めようと必死に『ヘヴィ・ブロッカー』を押し退けようともがくも、力を込めるほどに巨体は逆に深く押し込まれていく。


 そしてついに、残る二体のキメラが、ロスと兵士たちの方へ向けて動き始めた。

※後書きです



ども、琥珀です。


お知らせなのですが、このVSキメラ編は変則的な更新になります。

都度お知らせはさせていただきますが、差し当たって先ず来週が週5日更新になります。


一応補足の理由として、キメラ編はちょい長めなのと、戦闘シーンが多いため、一気に投稿して体感して頂ければという思いがあったからです。


なので、是非VSキメラ編を楽しんでいただければと思います。


本日もお読みいただきありがとうございました。

次回の更新は水曜日の朝七時頃を予定しておりますので宜しくお願いします。


評価やブックマーク登録、リアクションも大変励みになります。


もし面白い!面白そう!と思っていただけたら是非宜しくお願いします!

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