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リヴァイス・リヴァイバル〜果てなき世界の調律録〜  作者: 琥珀
第1章 『The Maiden's Requiem』
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36.処理

 国内全域の調査が始まってから、間も無く一時間が過ぎようとしていた。


 人海戦術による徹底した掘り起こしは想像以上の成果を生み、すべてとはいかずとも無数の種が土中から掘り上げられ、国の中心部へ次々と運び込まれていく。


 そこには、乾いた土の匂いと、種から漏れ出す微かな魔力のざらつきが漂っていた。


 途中、いくつかの種が孵化しかける場面もあったが、幸いにも一斉孵化という最悪の事態には至っていない。


 その度にマキナが即座に動き、肉体強化により圧倒的な速さで対処していくことで、混乱は最小限に抑えられていた。



「それで、この後の対応は?」



 マキナが声をかけたのは、集めた種の解析を進めていた数名の所員たち。白衣に染みついた土埃が、この数時間の慌ただしさを物語っている。



「はい。微量ではありますが、種は周囲の自然の魔力も吸収していることが分かりました。種の形状を取っていたのは、我々の目を欺きやすいことに加え、人から直接魔力を得るため、さらに地中に埋めることで、より安定して大地の魔力を吸収するためであったと思われます」



 専門外の分野にもかかわらず、この短時間でここまで分析をまとめていることにマキナは感心し、続きを促すように軽く顎を引いた。



「いくつか処理方法を試してみたのですが、まずそのまま魔法で処理するのは危険です」

「種が魔法の魔力を吸ってしまい、孵化してしまう可能性が高いからですね?」



 マキナの推測に、分析官は深く頷いた。



「もう一つは物理的に破壊する方法です。魔力を使わず破壊すれば、孵化するリスクは確かに減らせます」

「……ですが私の所感では、あの種の硬度は……」



 言い終える前に、分析官が悔しさを滲ませて頷いた。



「ご懸念の通り、種の硬度は非常に高く、常人の腕力では破壊は不可能です。武器……特に鈍器の類が必須となります」



 実は既に素手で握り潰したことがあるーーーその記憶がマキナの脳裏をかすめたが、さすがに今この状況で口にするつもりはなかった。



「ですが、それらの武器を今から十分な数集め、人の手だけで処理していてはとても時間が足りません。そこで、これらを用いて破壊を試みます」



 そう言って分析官が懐から取り出したのは、白に近い灰色の鉱石と、宝石のようなベビーブルーの光を宿した鉱石だった。



「それは……?」

「灰色の鉱石がソニック・オア、そして青色の鉱石がフロスト・オアです。オアと呼ばれる鉱石は極めて特異な物質構造を持っているのですが……ご存知でいらっしゃいますか?」



 じっと鉱石を見つめたあと、マキナはわずかに首を傾げて静かに横へ振った。分析官は理解したように頷き、説明を続ける。



「鉱石にはいくつか種類があります。一般的に宝石として加工・流通している鉱石は『クリスタル』に分類されます。『クリスタル』にも品質や用途で多くの等級があるのですが、今回は関係がないため省略しますね」



 分析官の説明を聞きながら、マキナはラヴィスと出会ったあの日――詐欺宝石を見破った出来事を思い出し、そっと記憶の断片を繋ぎ合わせていった。



「では、『オア』鉱石はどのような性質を持つかと言うと、鉱石のなかに新たな鉱石が構築されるんです」

「鉱石のなかで……?」



 マキナが問い返すと、分析官は改めて深く頷いた。



「鉱石の中に新しい鉱石が構築されていく過程で、古い箇所……つまり外皮となった鉱石は砕けていくのですが、そこである反応が起きるんです」



 そう告げた分析官は、手にしていた鉱石よりさらに一回り小さい、団子ほどの大きさのベビーブルーの鉱石を取り出し、それをトンカチで軽く叩き砕くと、彼はすぐにその破片を手放す。


 すると次の瞬間、砕け目から白い霧が弾けるように噴き出し、強烈な冷気が地面へ広がっていく。


 落下点を中心に、半径一メートルの範囲が音もなく氷へと変わり、霜が瞬く間に地面を走って空気がきしむように冷えた。



「これは……鉱石が冷気を?」

「内部で構築された鉱石は、外気に触れる機会が一切ありません。そのため、構築過程で情報が不足し、このような反応が起こるそうです」



 マキナは凍りついた地面を指でそっと撫で、その冷たさに小さく息を吸い込みながら、興味深そうに目を細めた。



「つまり……無知が故に突拍子もない行動をする子どものような感じでしょうか」

「言い得て妙ですね。ニュアンスとしては正しいと思います。『オア』鉱石がどんな条件を経て特定の性質を持つようになるかは、希少性ゆえに未だ完全には判明していませんが……今回の種の処理には最適だと思います。何故なら……」

「この鉱石の反応は、()()()()()()()()()()()()、ということですね?」



 マキナの鋭い理解に、分析官は目を丸くしたあとで満足そうに頷いた。



「この鉱石の反応を利用すれば、種は魔力を吸収することもありませんし、冷気で固めれば孵化の可能性は大幅に下げられます」



 きわめて理にかなった提案であったが、マキナの胸にひっかかるものが残る。



「……つまり、種は冷却するだけで、破壊は行わないということですか?」



 問いかけると、分析官はにやりと笑い、もう一つの灰色の鉱石ーーー先ほど名前が挙がったソニック・オアを手に取った。



「破壊は、このソニック・オアで行います」



 フロスト・オアが宝石のような美しさを持っていた一方、こちらは鈍い灰色で内部も濁り、見た目だけならばごくありふれた鉱石にしか見えない。


 分析官は懐からさらに小ぶりのソニック・オアを取り出し、同じようにトンカチで砕くと、その破片は――小刻みだが力強く手のひらの上で震え始めた。



「このソニック・オア鉱石は、内部で構築された鉱石が外気に触れると、このように強い振動を起こします。今のは小サイズなので振動だけですが、サイズが大きくなればより強い振動波を発生させます。さらに、個数を増やして同時反応させることで……」

「『共振』を起こして、凍結した種を破壊することが可能になる……?」



 意図を言い当てられ、分析官は満足げに頷いた。短時間でここまで合理的なプランを組み上げたことにマキナは感心しつつも、懸念が胸に浮かぶ。



「ですが、先程あなたはこれらの鉱石が希少であるとおっしゃいました。凍結させ、砕くほどの量を確保することは可能なのですか?それに、それだけの規模の破壊活動をして、周囲に影響は出ないのですか?」



 マキナにとって種の破壊は必須だが、何より優先すべきは国への被害を最小限に留めることだ。そもそも魔物の侵入を掴んだのも、国王からの重大な命を受けてのことーーー失敗は許されない。



「ご安心ください。まず鉱石ですが、先日の祭りに使用する目的で仕入れていたこともあって、十分な量が残っています」



 示された方向へ視線を向けると、所員たちが次々と鉱石を運び込んでいた。さすがに交易品管理を担う部署だけあり、素早い手際である。



「そして被害についてですが……結界魔法を応用します」

「結界魔法を?ですがそれでは……」

「はい。そのままでは種が結界の魔力を吸って孵化してしまうでしょう。そこで、外側だけ魔力で覆った結界を張ります」



 聞き慣れない技法に、マキナは小さく眉を寄せる。



「外側だけに……?そんなことが可能なのですか」

「用途が無いだけで、原理的には可能です。内側に魔力を巡らさなければ内部からの攻撃には非常に脆く、結界としては機能しなくなりますから」



 たしかに、とマキナは静かに頷いた。



「ただ今回は対象は動かず、破壊の原理は氷結と振動です。内側から生じる衝撃を外側の魔力膜で受け止めれば、被害は最小限に抑えられるはずです」



 話を聞く限り、極めて現実的かつ安全性の高い計画。孵化という最悪の事態を避けつつ、被害も抑えられる。



「(……万が一いくつかが孵化しても、私が対処すれば良い。結界の維持も魔法使いが揃っているし、十分に抑え込める)」



 リスクを一つずつ検討したうえで、最終的に十分対応可能と判断したマキナは、顔を上げて力強く頷いた。



「分かりました。ではそのプランで行きましょう。可能な限り種をかき集めて、すぐに実行します」

※後書きです



ども、琥珀です。


先週まで色々取り組んでみたんですが、結局もとの文字バランスのほうが読みやすいような気がしましたので戻しました。


ただこれから先、何らかのコメント等頂けましたら、可能な範囲で迅速に対応させていただきますので、いつでもお気軽にコメントください。


本日もお読みいただきありがとうございました。

次回の更新は水曜日の朝7時頃を予定しておりますので宜しくお願いします。


評価やブックマーク登録、リアクションも大変励みになります。


もし面白い!面白そう!と思っていただけたら是非宜しくお願いします!

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