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リヴァイス・リヴァイバル〜果てなき世界の調律録〜  作者: 琥珀
第1章 『The Maiden's Requiem』
18/20

17.オルディナ

※5月6日まで連日投稿します

「さて……思いの外話し込んだな。あまり遅くなるのも悪いし、これでお開きにしようか」



 リベルが立ち上がったのを見て、マキナも直ぐに立ち上がる。


 そこでふと、2人の子供のことを思い出す。



「あ、あの。ソラちゃんとカイ君は……」



 2人のことを尋ねると、リベルはイグニヴァの方へと目を向ける。



「二人とも経過観察は必要。特にカイの方はな。まぁその辺は私がキチっと診ておくから心配いらねぇよ。状態にもよるが、二、三日もしたら元気になるだろ」

「だそうだ。完治するまでは俺達が責任を持って世話を見る」



 心配ないと伝えられ胸を撫で下ろしたマキナは、感謝の意を込めて頭を下げた。


 実際のところ、懸念点はまだある。


 二人は壁外の人間だ。


 イグニヴァの治療を受けて回復しても、外に出ればまた同じようなことが起こる可能性はある。


 しかし、その懸念点は今この場で議論してもどうにもならない。


 先ずは治療に専念してもらうのがベストだろうとマキナは判断した。


 三人に案内されるようにして廊下を進むと、最初に現れた巨大な扉が目に入る。


 その扉の前にラヴィスが近寄り、来た時のイグニヴァと同じようにして髪をかきあげる。


 その耳元にはラヴィスの瞳と同じ紫色の宝石が嵌め込まれたピアスが付けられており、その宝石が眩く輝くのに呼応して扉も淡く輝き出した。



「もしかして、あのアクセサリーって……」

「気付いたか」



 その光景を見てある事に気付いたマキナに、リベルが反応する。



「“認識阻害”魔法と“空間魔法”はかなり複雑でさ。発動者以外が関与するには、より高度な技術が求められる。そこで……」



 そう言うとリベルは左手を上げ、中指に嵌められた宝石の付いた指輪を見せる。



「この魔鉱石に、二つの魔法の術式の一部を組み込んだ。これに魔力を流し込むことで、短時間魔法が解除される仕組みになってるんだ」



 リベルの説明に、マキナは納得のいった様子で頷く。


 イグニヴァが最初にここを案内した時、彼女は魔法の仕組みをまるで理解していなかった。


 にも関わらず“認識阻害”を解除し、“空間魔法”を越えて屋敷へと到達した。


 それは、二人が備え付けていたアクセサリー、否、宝石に意味があったのだ。


 最初に扉が現れた時も、イグニヴァが耳の赤い宝石を輝かせてからであった。


 応用の効く素晴らしい魔法であると思うと同時に、リベルが懸念する恐ろしさも感じさせられた瞬間であった。


 マキナはそのまま扉の前に進み、出る前に振り返った。



「ラヴィスさん!素敵な髪飾り、ありがとうございます!私、一生大事にします!」



 これにラヴィスは嬉しそうに頷いた。



「イグニヴァさん!子供たちを守ってくれてありがとうございます!二人のこと、宜しくお願いします」



 イグニヴァは頭を掻きながら、「おう」とだけ返事を返す。



「リベルさん、招き入れてくださってありがとうございました。まだ、受け入れられてないこともあるけど、自分に何が出来るか、色々と考えてみます」



 最後にそう告げ、踵を返そうとする。



「マキナ」



 そして扉に手をかけようとしたところで、リベルが呼び止める。



「近いうちに、魔族の動きが活発化することになると思う。これまでとはまるで違う戦いになるはずだ。気を付けろよ」



 突然の警告に困惑を隠さずにいたが、リベルの眼差しは至って真剣であった。


 真意は図りかねるものの、その言葉にマキナはしっかりと頷いて、今度こそ屋敷を後にした。

 

 マキナの姿が完全に見えなくなるまで見送ったのち、イグニヴァがやや暗い面持ちで口を開いた。



「アイツ本当に大丈夫か、ご主人。人が良いっつーか、なんつーか……根っからの善人すぎて、あれじゃいつか潰れちまうぞ」



 その眼差しは医者としてのものであり、呆れたような言葉とは裏腹に、声色には確かな心配が滲んでいた。



「私もイグニヴァに同意見です、ご主人様。『英雄』としての人格・実力に疑いはありませんが、それ故にこの世界であれほど純粋な子が生きていくのは過酷かと」



 続くようにラヴィスも口を開いたが、リベルの表情に変化はなかった。



「……そうかもね。だが、彼女自身が『英雄』であろうとしている。少なくとも、今はまだ」



 すでに閉ざされた扉に目を向けたまま、リベルは静かに答える。



「どんな経緯であれ、彼女がそう望んでいる以上、俺たちが干渉するべきじゃない。この世界のあるべき姿を歪めかねないからな」



 返された言葉は正しいと判断されたのか、二人は言い返さなかった。



「しかしご主人様、なぜ彼女にあの話をされなかったのですか?」

「『空の器』のこと?」



 リベルの問いに、ラヴィスは頷いた。



「それこそ二人が言った通りだ。あの子はまだ世界の広さも残酷さも知らない。今この段階で『空の器』の話をしても、きっと受け止めきれない」



 リベルはひと息置いて、言葉を続けた。



「それに……彼女も普通の出生じゃなさそうだからな」



 ポツリと呟かれたその言葉に、ラヴィスとイグニヴァが顔を見合わせる。



「とにかくだ。俺たちの目的は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。『空の器』が標的かと思ったが、それも違うみたいだしな」



 困ったような口振でありながら、その実それ程困ったような様子を感じさせない顔のまま愛想笑いを浮かべた。



「でもよ、ご主人。もうこの世界の歴史はほとんど洗い終えたろ?怪しいところはだいたい潰したんじゃねぇか?」



 イグニヴァが両手を頭の後ろで組み、肩をすくめながら言う。



「潰せていれば特異点も見つかっているはずです。過去に問題がないのなら、今まさに進行している何かが原因だということ。着眼点が変わっただけで、目的地が変わるわけではありません」



 隣に立つラヴィスが冷静に指摘し、イグニヴァはやや面倒そうに唇を尖らせた。



「まぁアテが無いわけじゃ無いんだ。ただ確証がない。二人には悪いが、もう少し散策を続けてくれ」

「畏まりました」

「あいよ」



 二人の返事を聞いた後、リベルはゆっくりと屋敷の奥へと歩を進める。



「俺は、()()のところへ戻る。それに今日はもう日も暮れる。調査の続きは明日からにしよう」



 そう言い残して去っていくリベルを、ラヴィスは恭しく頭を下げ、イグニヴァは軽く手を振って見送った。






●●●






 屋敷の廊下を抜けた先、奥にひっそりと備えられた何の変哲もない扉。


 その扉を開けると、目の前には純白の空間が広がっていた。


 扉の先には一筋の道のようなものが延びており、天を見上げると、その純白の世界に明らかに異質な、漆黒の空間がぽっかりと浮かんでいた。


 リベルはその道へと足を踏み出し、空中に浮かぶ黒の領域の真下を目指して進んでいく。


 距離感の掴めない異空間ではあったが、歩みを進めるにつれ空に浮かぶ暗黒が徐々に大きくなっていくことで、着実に近づいていることを感じ取ることができた。


 やがて数十秒ほど歩いた先に、この空間には不釣り合いなティータイム用のような机と椅子、そしてそこに座る一人の女性の姿が見えてきた。



「オルディナ」



 そう呼びかけると、その女性は手にしていた本を閉じ、ゆっくりと振り返る。


 ――とても、美しい女性だった。


 二十代前半ほどの年頃に見えるが、その佇まいには凛とした威厳と、どこか現実離れした気品が宿っている。


 流れる星を思わせる銀髪は淡く輝き、見る者の目を奪う美しさを湛えていた。


 瞳は濃く澄んだ紫。こちらを見ているようで、どこか遠くを見据えているかのような、落ち着いた眼差し。


 所作の一つ一つが洗練され、立ち居振る舞いはまるで水が静かに流れるように滑らかだ。


 そんな彼女――オルディナは、リベルの姿を視界に収めると、それまで無機質だった表情を、わずかに柔らかく崩した。



「戻ったのね、リベル」



 リベルは頷き、彼女の対面にある椅子へと腰を下ろす。



「突然来訪者が現れたなんて言うから驚いたわ。まぁ、正確にはイグニヴァが連れてきただけのようだけど」

「この世界で、あの“空間魔法”と“認識阻害”を破るのは至難だからね。ただ、来たのが『英雄』だったのは俺も少し意外だったよ」



 リベルの言葉に、オルディナは目を閉じて小さく微笑む。



「でも、いずれ『彼女』には接触する予定だったんでしょう?結果的には早まっただけで良かったんじゃない?」

「……そうかもしれないけど、まさか連れられてくるとは思ってなかったよ」



 やや疲れた声で呟くリベルに、オルディナは「ふふっ」と笑う。


 そのまま彼女は指先をくるくると動かすと、机の上にあったティーポットとカップが浮き上がり、紅茶を注いでリベルの前に静かに置かれた。



「それで?実際に会ってみて、何か分かった?」



 ティーを口に含んだあと、カップを置いてリベルが答える。



「正直、成果らしい成果は無かったな。事前に調べておいた通りの人物だったし、『英雄』としての役割も順当にこなしてる。でも、それだけだ」



 オルディナはその答えを予想していたのか、特に驚きもせず、小さく「そう」とだけ返す。



「でも、これだけ何も手掛かりがないのは初めてね……また一からやり直しかしら」



 小さく愚痴を零しながら、オルディナもティーを一口飲む。



「いや、何もないわけじゃないよ、オルディナ」



 リベルの言葉に、彼女が顔を上げる。



「何か、見つけたの?」

「いや、見つけたんじゃない。寧ろ、“見つからない”ことが鍵だ」



 リベルは不敵な笑みを浮かべ、オルディナは少し首を傾げた。



「歴史、人類、英雄、魔族、そして『空の器』……あらゆるものを調査してきたが、どこにも特異点はなかった」

「だからこそ、手掛かりが失われたのでは……?」



 やはり発言の意図が理解できず、オルディナは顎に手を当てて頭を悩ませる。



「逆だよオルディナ。どこにもなかった、だったら“そこ以外”にあると考えるべきなんだ」

「……私達が洗った場所のどこにも特異点は見つからなかった……ということは、つまり――」



 オルディナの表情が変わる。一つの結論に気づいたように、彼女はハッと目を見開いた。


 リベルはその反応を見て、静かに頷く。



「でも……もしそうなら厄介ね。接触が難しいわ」

「ああ、そこが最大の難所だ。だから、手を打っておいた」



 その言葉に、オルディナが驚いたように目を見開く。



「流石、手が早いわね。それで……どんな?」

「マキナは恐らく今後の“鍵”になる。彼女をきっかけに、事態が大きく動くことになるはずだ。そして……()()()もそこで介入してくる」

「……それを逆手に取って、特異点に接触する、と」



 リベルが頷くと、オルディナはやや呆れたように目を細めた。



「それってつまり、あの子を餌にするってことでしょう?偶然出会った彼女を利用するなんて。随分と、人が悪いわね」



 オルディナの言葉に、リベルは頬杖を付くいて真っ直ぐ彼女を見つめたまま、不敵な笑みを浮かべこう短く返した。



「それ、君が言う?」



 皮肉めいたリベルの返しに、オルディナは一瞬きょとんとしたあと、どこまでも冷たく、それでいて妖艶な笑みを浮かべた。



()()()()()()

※後書きです






ども、琥珀です。


GW企画5日目イェー


私ラーメン好きなんです

旅行行くなら絶対にご当地ラーメン食ったる!

と計画に必ずいれるくらい……


寧ろグルメ目的で行きません?旅行って


本日もお読みいただきありがとうございました。

次回の更新は明日の朝7時頃を予定しておりますので宜しくお願いします。


評価やブックマーク登録、リアクションも大変励みになります。

もし面白い!面白そう!と思っていただけたら是非宜しくお願いします

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