10月31日(木)-13
一人じゃないから大丈夫だと思いつつ、外に出た瞬間に思い知る。
意外と、根滝まで、距離がある。
そういえば、今朝も何度も反省したのだ。
山を舐めていた、と。
「うーん、久々の外気」
圭が伸びをしながら口にする。
そうだ、一週間ほど、ずっと屋根裏部屋に押し込められていたのだ。体は大丈夫なのだろうか。
「その……大丈夫かい?」
「日差しがまぶしい」
「いや、そうじゃなくて」
思わず突っ込む。筋力の低下を心配しているというのに、呑気な返事が返ってきた。
「筋力の事なら、問題ないですよ、おじさま。私も圭ちゃんも、ある程度は体を動かしていたので」
「いつでも暴れ……動けるように、暇があれば筋トレしてたからな」
今、暴れるって言いそうにならなかったか?
私たちが話していると、楠木さんが「あの」と声を上げた。
「良ければ、車で行きませんか? 距離が結構ありますし、私のせいではありますが、閉じ込められていたわけですし」
「車って、全員乗れるんですか?」
「ええ。結構大きな車ですので」
楠木さんはそう言って、神社の横の敷地へと移動する。そこには、六人乗りの大きな車が置いてあった。
「あ、本当に大きい」
「お年を召された方も多い村なので、神事の時など送迎を行っているんです」
なるほど。確かにそれならば、大きな車の方が都合が良さそうだ。
「一応、石柱を辿る道を通ってほしいんだけど、大丈夫か?」
圭の問いに、楠木さんは頷く。
「おじさま、歩きながらではないですけれど、気持ちの整理はできますか?」
水葉嬢が、揶揄うような顔で尋ねてくる。私は思わず動揺して「なんで?」と問い返す。
「だって、おじさま。車でって聞いた途端、明らかにほっとしたようなお顔をされるから」
「……してたかい?」
「していましたよ。余程、大変だったのですね」
ふふ、と水葉嬢が悪戯っぽく笑う。ちょっとだけ、恥ずかしい。
「大人数での移動になるし、俺らの存在をアピールする必要もねぇし、車のが都合いいというのもあるけどな」
くつくつと圭がフォローするように言う。
そうそう、きっと車の方が都合がいいはず!
私が思わずうなずいていると、再び水葉嬢が笑った。やっぱり、恥ずかしい。
「どうぞ、乗って下さい。車だと、十分ほどでつきますから」
楠木さんの言葉に、皆が乗り込む。最後に私が乗りこみ、ドアを閉めて車が発進する。
「あ、そうだ」
車内で、私はスマホを取り出す。片桐さんに連絡しておこうと思ったのだ。
圭と水葉嬢を見つけ出し、今まさに一緒に行動していることを告げると、片桐さんから「よかったです」という返信がくる。続けて「夕食の準備も、皆さんの分を用意しますね」とも。
大量なんだろうなぁ……何せ、圭がいるから。
水葉嬢もよく食べるほうなのだろうか? 片桐さんはそこら辺はきっとご存じだろうから、あえて聞く必要はないだろうけれど。
キャンプ地に戻ったら、バイキング会場のようになっているかもしれない。
思わず笑みがこぼれてしまったようで、圭が「なんかあった?」と尋ねてきた。
「片桐さんに、連絡をしていたんだ。夕食の準備をして下さるそうだよ」
「おー長谷川のご飯か。楽しみだな」
圭は嬉しそうに笑う。
目の前にあるだろう問題が解決はしていないのだけれど、こうして圭を目の前にし、更に今までと同じような圭の様子に、私はほっとするのを感じた。
車が坂道を上る。いつの間にか、小学校の方まで来ていたようだ。私があれだけ苦労して登った坂も、車だとあっという間だ。
中学校前に到着し、道路わきに車がとめられる。
「ここからは、徒歩でお願いします」
楠木さんが告げ、エンジンが切られる。
私は覚悟をし、車から出る。
ここから、山道が始まる。




