10月30日(水)-7
古籠神社は、比較的簡単に分かった。地図を見ていたのもあるが、何しろ田んぼが多いので視界が開けている。ぐるりと見まわしていると、ぽつんぽつんと点在する住宅の中に石の鳥居を見つけたのだ。
あとは、その鳥居を目指して歩いていけばいい。
途中で村の人と会うかと思いきや、誰ともすれ違わなかった。畑や田んぼの作業をしている様子もない。ちょうど昼過ぎの、家の中でまったりしている時間なのかもしれない。
のんびりと風景を楽しみつつ、神社に到着できた。住宅は少し離れたところに建っているが、神社だけ独立しているようにも見える。
「階段が少ないのが救いだな」
はは、と私は笑う。
神社といえば山の上にあるイメージなのだが、古籠神社は村の中心に近いところに位置していることもあるのか、少し小高いところにあるだけだった。
私は階段を上り、遠くから見えた鳥居をくぐる。小高いからか、そよそよと抜ける風が心地よい。歩いているから、少し体温が上がっているというのもあるかもしれない。
境内に入ると、どこにでもある神社、という印象を受けた。
左手側に掘っ立て小屋みたいな屋根があり、手水舎がある。その隣に縁起の立て看板があり、小さな社がある。そして真ん中あたりに御社殿があり、その奥に社務所があるようだ。
「思っていたよりも、立派だな」
ふむ、と私は感心する。
手水舎は絶え間なく水を流しているし、境内はよく掃除されていて綺麗だ。これは、キャンプに来た人が一度は足を踏み入れたいと思わせる、観光スポットにもなりえるのではないか。
私はスマホを握り締め、カメラアプリを立ち上げる。
自然に、キャンパーらしく、自然に。
ふと訪れた神社が思ったより素敵だったから、写真に撮るのだ。
――パシャ。
カメラアプリのシャッター音が響く。
特に誰かが出てくる気配もないので、別の場所にスマホを向け、もう一度写真を撮る。
――パシャ。
結構上手に撮れた気がして、私は画像フォルダを確認する。自然の中に佇む神社本殿と、堂々としたたたずまいの鳥居の写真が、なかなか上手に撮れている。
私はなんだか嬉しくなり、今度は縁起の立て看板の処へ行く。あとでゆっくり見れるように、と再びカメラアプリで写真を撮る。
ちゃんと撮れているかを確認してから、肉眼で看板を確認することにした。
看板には、この神社の成り立ちが書かれてある。ところどころ経年劣化でかすれてしまっている文字があるものの、ざっくりと内容を把握することはできた。
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この村には、悪霊が彷徨っていた。
悪霊はそのせいで、何度も危機に陥ってきた。
そこに鬼が現れ、悪霊に立ち向かい、村を護った。
村人に感謝された鬼は、人間となり、そのまま村で一生を終えた。
村人たちは鬼に感謝し、これからも見守ってくれるようにと神社を作って祀った。
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鬼を祀っているとはいえ、神社の成り立ちとしてはそこまで珍しいものではないだろう。だが、看板に描かれた絵に、私は目を釘付けにされた。
絵の中の鬼は黒い玉のようなものを掴み、口元へと持って行っていた。
圭と知り合ってから、何度も見たことのある光景に、とても良く似ていた。




