第二十一話 蓮の花が咲く音は
朝の光が部屋の中を照らしている。目を開けたものの、ズキズキと頭が重く起き上がれない。
あぁ…頭が痛い…そんなに飲んだだろうか…昨晩は…どこに居たっけ…林臣様と話したような…
そんなことをウトウトと考えていた時、戸の向こうに小彩の姿が見えた。
「燈花様、起きられましたか?」
「えぇ、入って…」
小彩は大きな桶の中の水をこぼさないように慎重に歩きながら部屋の中へと入ってきた。チャポチャポと水の音が聞こえる。
「ちょうど今、目が覚めたの…喉がカラカラで…」
寝台から起き上がろうとした時だ、
「…イタタ…足首が」
今までに感じた事のない激痛を足首に感じ両手で被った。見ると普段の二倍以上に腫れあがっている。
「燈花様!大丈夫ですか⁈そのまま動かさないで」
小彩は桶を床に置くと慌てて私の体を支え横にさせてくれた。真っ赤に腫れた足首が脈打つかのようにズキンズキンと痛む。
「あぁ、嫌な予感…」
「恐らく折れていらっしゃるかと…」
小彩がためらいがちに言った。
「はぁ…全く自分が情けないわ…」
両手で顔を覆った。
「あとで都の医官が診察に来てくださりますので、それまでは安静にしていましょう。それと…昨晩の事を覚えていらっしゃいますか?」
小彩は桶の水で絞った布を私の足首に当てながら気まずそうに聞いてきた。記憶はいまだ曖昧だ…でも小彩の表情を見る限り、明らかに何かやらかしたのだろう…奈落の底に落ちていくように一気に気が滅入った。
「…昨晩は、お酒を少しのんだのよ。…そうしたら、いつのまにか桃林にいて…で、…林臣様に会った…ハッ!」
思わず両手で口を押えた。終わった…心臓が止まる寸前だ。小彩がすかさず返した。
「さようでございます。昨晩は林臣様の背に担がれてお戻りになられました。宮の者一同、心底恐れおののきました。しかも燈花様はあろうことか酩酊状態でした…」
一瞬で背筋が凍りついた。再び布団をかぶり目を固く閉じた。ど、どうしよう…よりによって林臣様いえ、蘇我入鹿に担がれたなんて…なんて私は愚かなの…。今更遅いがひどく自分を責めた。
「で、林臣様はなんて?」
そっと布団から顔をのぞかせて恐る恐る聞いた。
「それが、誠に不思議なのですが、足首が折れているから安静にして見張っておけ。とだけおっしゃったのです。いささか疲れているご様子でしたが、怒っているようには見えませんでした。逆に気味が悪くて…」
小彩が両腕を抱えて肩をすぼめながら言った。
あっちゃぁ~どうしよう。でも、もう済んでしまったことだし…まさか、殺されるなんてことないわよね…今からでも謝れば許してくださるかしら…
「とにかく燈花様、今は足首の怪我を早く治しましょう。林臣様の件はまたのちほど考えましょう」
「…そうね。あっ、それと…昨日…冬韻様も昼間いらっしゃったのよ…」
ためらいがちに伝えた。
「…はい、六鯨様から聞きました。燈花様の深酔いを拝見してなんとなく、お察ししました…なんとお声がけすれば良いのか…」
小彩が沈んだ表情でしょんぼりと言った。
「まぁ、もう少し様子を見るわ。山代王様は政務で忙しくてこの宮になど来ないだろうし、お会いしたとしてももう、過去の事だから…」
「燈花様…」
小彩は声を詰まらせるとしくしくと泣き出した。
「小彩泣かないで。これは運命なのよ、流れに身をゆだねるしかないわ。共に乗り越えてくれる?」
「もちろんでございます」
小彩は涙を袖で拭ったあと私の手をきつく握った。
いつの日か彼女には本当の事を話さないと…
小彩のすすり泣く声がしばらく部屋の中に響いた。
足首を骨折してから二か月近くになるだろうか、季節はすっかり春から初夏になり、日に日に蒸し暑さが増している。雨の日も多くなり、庭の緑は更に深く生い茂り、朝晩はカエルの大合唱があちこちの田畑から聞こえた。
人生初の骨折をしてから最初の二週間は本当に退屈だった。ただただ天井を眺めては解決できぬ問題を何度も何度も繰り返し考えた。それでもやはり糸口が見つからず、行き場のない思いに頭の中が爆発しそうだった。
三週間が過ぎると、少し歩けるようになり部屋の外に出て敷地の中をあてもなく歩いた。
四週目以降は敷地の隅々を歩き回りあちこちを散策しては薬草や食用の野草を採る日々に没頭した。気が塞がないようにするのに野草採りは効果てき面だった。
天気が良く美しい夕焼けの日には東屋の石に座り夕陽で染まった都を眺めた。朝廷の重鎮や大臣が橘宮を訪れることはなく、忘れられた宮のようにひっそりと静まり返っていた。
「燈花様、湿布をかえましょう」
いつものように明るい声で小彩が部屋の中に入ってきた。
「ありがとう、でももう痛みもないし大丈夫よ」
私はくるくるっと足首を少し大袈裟に回して見せた。
「イタっ…」
ほんの少しだけ、まだ痛みが残っている。心の痛みも傷と同じようにすぐに回復してくれたらいいのに…
「燈花様大丈夫ですか!無理をしてはいけませんよ…あと少しの間この湿布を貼ってください」
小彩が諫めるように言った。
「ウフフ…母のようだわ。はい、母上おっしゃる通りにいたします」
私はニヤリとし、からかい気味に言った。小彩は目を丸くし頬を膨らませた後軽く私を睨んだ。でもすぐに目が合い互いに顔を見合わせケラケラと笑った。小彩はいつものように薬草を練り込んだ麻布を手際よく足首に巻きながらしんみりとつぶやいた。
「燈花様の笑い顔、久しぶりに拝見した気がします…少し安心いたしました」
「…不安にばかりさせて本当にごめんなさい…でももう本当に大丈夫だから…」
まるで自分に言い聞かせるようだった。
…話題をかえよう…
「そうだ、あなたの作ってくれるこの湿布すごく効くわ、何の生薬を使っているの?」
「え?えっとそれが、宮中で働く医官から取り寄せたもので草の名がよくわからないのです。今度お会いした時にでも聞いておきますね」
「いいのよ、ただ興味を持っただけなの。あまり馴染みのない香りだと思ってね」
「そうですか…はい、終わりました。燈花様今日は久しぶりに晴れて暑くなりそうですね」
小彩はそう言い終わるとさっと立ち上がり部屋を出て行った。外を覗くと空は青く晴れ渡り真っ白な入道雲が見える。久しぶりの夏空にウキウキと心が弾んだ。いつものように庭の東屋へと向かった。見渡す都はいつ見ても圧巻だ。息を大きく吸い込み吐き出した。
ふ~もう夏ね、陽ざしが眩しい…。
ドンドン、ドンドン
「誰かいるか」
東門の戸を誰かが叩いている。珍しい…客人だろうか…門番の漢人が奥の納屋から走ってきて急いで門を開けた。
「あっ、これは林臣様」
「燈花はいるか?」
「あ、はい」
「入るぞ」
「えっ?は、はい…」
漢人があたふたしている間に、林臣が敷地の中へと入ってきた。
シャリシャリと小石を踏む音が聞こえる。振り返るとそこには、久しぶりに見る林臣が立っていた。
「り、り、林臣様!」
予想だにしなかった人物の登場に驚き飛び上がった。挨拶も忘れ林臣がゆっくりと近づいてくるのを黙って見ていた。林臣は東屋から少し離れた所に置かれた別の石の上に静かに座った。
ど、どうしよう…なんの弁解の言葉も出てこない…
「怪我はどうだ」
相変わらず不愛想な声だ。でも、ちゃんとお礼をしないと…
「は、はい。すっかり良くなりました…その、あ、ありがとうございました」
気が動転しているせいか、おどおどとした奇妙な口調になった。
「ん?」
林臣が怪訝そうにこちらを見た。あの夜の事は記憶にないが、もし自分が暴言を吐いていたかと思うと生きた心地がしない。握りしめた手のひらが汗ばんでいる。とにかく謝らないと…
背筋をピンと伸ばし林臣の方を向き言った。
「…酔っていたとはいえ、林臣様に多大なご迷惑をおかけしてしまい申し訳…」
「で…もう歩けるのか?」
「え?あ、はい…」
「では、明日の夜明け寅の刻にあの池にまいれ」
「えっ?」
林臣はそう一言いい残すとすたすたとその場を去った。
訳がわからない…呆然とその場に立ちすくんだ。東屋から馬にまたがり颯爽と都に向かう林臣の後ろ姿が見えた。
困った…どうしよう…とにかく小彩に話さないと…。急いで厨房に行き、調理中の忙しい彼女をつかまえた。
「まことですか⁈林臣様がおいでになられたのですか?」
「そうなの、さっきお見えになって怪我の事を聞かれたのだけど…明日の夜明けの寅の刻にまた嶋宮に来いって…」
「えっ、なんの為ですか⁉︎」
「そんな事知らないわよ、私が聞きたいわ」
ムスッとして答えた。
「さ、さようですか…。理由はわかりませんが一度向かわれてはいかがですか?」
小彩がまるで他人事のようにさらりと言った。
「そ、そんな…まさか私、殺されないわよね?」
「そんな事するはずありません。その気ならとっくに私も燈花様ももうこの世におりません…」
小彩が伏し目がちに答えた。確かにその通りだ。林臣と最初に出会った時の事を思い出していた。
「そうね…けどこの間の私の失態を許せぬのかも…」
「燈花様考えすぎですよ、林臣様はああ見えて大変賢いお方です。ご自身の屋敷で人を殺めたりはしないはずです」
「そうね…とりあえず行ってみるか…」
気乗りはしなかったがきっとこちらに拒否権などないだろうし、なんとなく危険な目には合わない気がして覚悟を決めた。
「燈花様、私も屋敷の前までお供いたします」
「ありがとう…」
ため息混じりに言った。
鳥の鳴き声も虫の音も聞こえないひっそりと静まりかえった夜だ。小彩が目をこすりながら部屋の中へと入ってきた。
「燈花様、起きてください。もう丑の刻を過ぎていますよ…ふわぁぁ…起きてください」
小彩は大きなあくびを手で押さえながら何度も私の体をゆすった。
「う~ん、起きる。起きるから…」
適当に言ったものの、まだまだ夢の中にいたい…
「燈花様、林臣様がお待ちなのでは?…」
り、林臣?…ハッっと勢いよく起き上がった。そうだった…嶋宮に行かないと…
急ぎ支度を済ませ手持ちの小さな灯籠に灯りをつけ部屋の外に出た。あたりはまだ暗く静寂な空気に包まれシーンとしている。東門に着くとすぐに前方の暗闇の中に小さな灯りが見え、馬のひずめの音が聞こえてきた。馬は東門付近にくるとスピードを落としゆっくり止まった。一人の若い男が松明を片手に馬から降りてきた。
「燈花様、ご無沙汰しております。猪手でございます。覚えておいでですか?」
林臣の側近の男だ。以前小墾田宮で会った時、主君の為に薬を取りに戻ってきた忠実で信頼できる臣下だ。
「もちろん覚えてるわ」
「良かった、怪しいものだと思われなくて。どうぞこの馬に乗って下さい。若様のところまでお連れいたします」
「林臣様が?」
「はい」
「わかったわ。小彩この先は猪手さんと一緒に行くから大丈夫よ」
「承知しました。気を付けてください」
パカパカという馬のひずめの音と飛鳥川のゴボゴボと水が流れる音だけが響いている。夜空には満点の星がキラキラと輝いていた。
嶋宮の入り口まで来て馬を降りると、林の奥に小さな灯籠が連なっているのが見えた。
「燈花様、あちらの灯りを目指して進んで下さい。木の根が張っていますので足元に気を付けて下さい」
「ありがとう」
小さな灯籠を右手に持ち直しゆっくりと歩き出した。桃の木の根元に小さな灯籠が置かれている。中の火は風に吹かれゆらゆらと揺れ今にも消えそうだ。あたりに人影はない。
林臣様は本当にいるのだろうか…。最後の灯籠の前を通りすぎると目の前に池が広がった。水面に映った月がゆらゆらと揺れている。以前にあやうく落ちそうになった池だ。
「遅いぞ」
足元の方から急に声がした。
「ひゃゃあ!」
大声で叫んだ。辺りは真っ暗で小さな灯籠をかざしても何も見えない。
「り…林臣様ですか…?」
「さようだ」
声の方を見ると池の岸にくくりつけてある小さな船のような乗り物から林臣が眠そうな顔をのぞかせた。
「乗れ」
「えっ?そこにですか?」
「二人乗っても沈まぬ、早く乗れ」
「は、はい…」
なんとか小舟に乗りこんだがグラグラとしていて今にも沈みそうで怖かった。舟の端をしっかりつかむと林臣ゆっくりと池の中央に向けて漕ぎ出した。
月の光に照らされた林臣の顔は青白く光り高い鼻は更に高く端正な顔立ちがあらわになった。手指も細く長く美しい。
こんなにじっくりと林臣様の顔を見るのは初めてだ…最後にあったのは十三年前…あの時は若くてつんけんしていて鼻持ちならなかった…でも今は立派な大人の男ね…でも蘇我入鹿なのは間違いないはず…この人、この先どうなるのかしら…どんなに同情しても歴史を変える事は出来ない…宿命だと思うから。
そんな事を考えながら林臣の真剣な眼差しを眺めていた。彼もその視線に気が付いたのか、少し顔を上げ見返してきた。目が合ったのですぐに顔をそらした。
「あっ、林臣様、先日のことですがもう一度お詫びいたします」
良いチャンスに恵まれたと思いもう一度念のためにあの夜の事を謝った。
「……」
林臣は黙ったまま何も答えない。
「何も聞いてこないのですね…」
「関係ないからな…着いたぞ」
小船が池の中央のある中洲に止まった。林臣は先に中洲に上がると私の手を引っ張り船から引き上げた。足元が暗い中、池に落ちないように細心の注意をはかり中洲へと上がった。林臣は小船から大きなむくろを取り出すとバサッと地面に広げゴロンと横たわった。
「林臣様?」
「……」
「林臣様??」
少し大きな声で呼びかけた。
…グウ~…グウ~…
すぐに寝息が聞こえてきた。
・・・嘘でしょう⁈私は自分の耳を疑った。
「林臣様!」
軽く体をゆすったがピクリとも動かない。スヤスヤと気持ち良さげな寝息だけが聞こえる。一人孤島に取り残された感じだ。なんて身勝手な人なのだろう…すぐに怒りの感情が込み上げた。
なんなのよこの男!頭おかしいんじゃないの!どうなってるのよ!
頭の中は怒りとパニックで混乱している。すぐにでも帰りたいが、一人船を漕いで岸辺まで戻る勇気は到底ない。結局彼が起きるまで待つという選択肢しか残っていない。
愕然としたが仕方がない、こうなったら私も朝になるまでここで寝ようと早々に開き直った。
林臣はスース―と夢の中だ。彼に向かいチッと舌打ちした後、隣にゴロンと寝転がり満点の星空を見上げた。とりあえず夏で良かった…。そんな事を考えているうちにいつのまにか眠ってしまった。
“ポンッ”
何かが弾ける音を聞いた気がして目が覚めた。う~ん、なんの音だろう…。瞼を閉じていても太陽の光が眩しい。朝の静寂の中、眠い目をこすりながら起き上がった。
目の前の光景に息をのんだ。辺り一面美しい蓮の花に囲まれている。鮮やかで透き通るような桃色の花びらが蕾の中からあらわれた。小さい蕾のものから背の高く大きく開花したものまである。夜の暗闇の中ではここが美しい蓮の池だとは想像もしなかった。
隣では林臣はまだグーグー寝ている。
「林臣様、起きてください。朝になりました。林臣様…」
「んん?もう朝か…早いな…ふぁぁ…」
林臣はゆっくり体を起こすと目の前の蓮の花をじっと見つめた。
「音を聞いたか?」
林臣が突然聞いて来た。
「えっ?」
「夜と朝の境目に蓮の蕾が開く音が聞こえるらしい……」
林臣が目の前に広がる蓮の池を見つめたまま言った。今日の彼はいつになく感傷的だ…なぜだろう…。
林臣が続けて言った。
「早朝に咲く蓮の花は格別に美しい…」
「蓮の花がお好きですか?」
「泥が濃ければ濃いほど美しさを増すという、こんなに清らかに咲き誇る神聖な花は他になかろう…」
「えぇ…」
意外だった。この大悪党の汚名を持つ男が蓮の花が好きだなんて思ってもみなかった。これまで見た事のない彼の穏やかな横顔を見て思った。
…歴史書の言う事は本当なのだろうか?
対岸から屋敷の使用人らしき男がこちらに向かって大きく手を振り何か叫んでいる。
「若様!月杏様がお越しになっておられます。いかがされますか?」
「すぐに向かう、中に通せ!」
「承知いたしました」
男はそう言うと林の中へと消えていった。
「戻るゆえ、船に乗れ」
「はっ?はい…」
私達を乗せた小船はぐらぐらと不安定に揺れながら、蓮の花の中をすり抜け対へと向かった。船から降りると林臣が言った。
「猪手におくらせるゆえ、ここで待て」
「えっ?いえ、大丈夫です。一人で戻れますので」
「さようか…」
林臣はそう言うと屋敷の方へと歩いて行った。
なんだったのよ…とぼとぼと橘宮へと戻った。いつの間にかこの桃林までの道を覚えてしまった。東門を抜けると帰りを待ち伏せていたかの小彩が飛んできた。
「燈花様、お帰りなさいませ!林臣様の御用はお済になりましたか?」
「たぶんそう思うわ…」
曖昧な感じで答えた。実際何の用だったのかよくわからないが、それよりも疲労と寝不足でフラフラだ。部屋に戻るとすぐに寝台に倒れ込んだ。
「燈花様、大丈夫ですか⁈」
小彩が心配そうに見た。
「大丈夫よ。朝…蓮の花を見ていたのよ」
「蓮の花でございますか?蓮の花なら昼間でも見られますのに…」
小彩が首を傾げた。
「ところが林臣様曰く、早朝開く蓮の花が一番美しいそうよ…」
「さようでございますか…」
小彩がポカンと答えた。
「ところで、燈花様お腹が空いてはいませんか?」
「大丈夫よ。それよりも眠くてたまらないから少し寝るわ…お昼過ぎに起こしにきてくれる?」
「承知しました」
小彩が部屋から出ようとした時、最後に思い出したことを聞いた。
「それと、月杏という名を知っている?」
「もちろんでございます。月杏様は林臣様の第一夫人、正室のお方です。有力豪族の葛城氏出身で家柄も大変良いため先代の馬子様に見初められ、幼い頃より林臣様の許嫁でした。数年前に嫁がれてこられたのです。普段は嶋宮にはおられないはずですが…お会いになられたのですか?」
「…いえ、会ってはいないわ…ただほんの興味で聞いただけよ。ありがとう」
外はジリジリと夏の陽射しが照り返していたが、部屋には裏山からの涼しい風が入ってきた。
まぁ正室がいるのも当然ね…有力豪族の娘か…蘇我氏らしいわ…はぁ、疲れた…
すぐに深い眠りについた。




