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146 デシリア VS セシル 1

 レイラが裏で糸を引いていた人攫い事件。彼女にしっかりと釘を刺して以降はステラの身の回りは静けさを取り戻していた。


 ステラの親友ともいえるラズリィとの関係は切れたままではあるものの、それ以外は特に変わり映えのない日々が続いている。


 レイラには今まで通りに接するように伝えたため表面上での彼女との変化はない。裏ではどうかといえば特に何もないけども、きっとレイラはステラの事を恐れて関わりたいとは思っていないだろう。


 セシルとの関係に変化はなく、昼の休憩時間には彼に勉強を教えてもらう。レイラがたまに勉強に混ざりに来るがそれはステラの方から頼んだ。


(レイラ以外の子が私に嫉妬して嫌がらせしないとも限らないでしょ? レイラにはセシルの相手を多めにしてもらってるよ)


 レイラはもう2度とステラに嫌がらせをして来ないだろうけども、ステラの事をよく分かってない子は舐めてかかるだろう。しかしレイラに対しては手を出してこないだろう。レイラを敵に回すとどうなるか分からないからね。


 そして再び剣術大会の日となった。小学生最後の剣術大会。

 以前と同じ会場にはたくさんの人が集まる。


「目標は優勝だ!」

「おおー!」


 同好会で1番の実力者のオウロンの後に男子が続いて声を張り上げる。


 女子は特に何もせずその様子を見つめた。

 ボニーは緊張した面持ちでステラに話し掛ける。


「これが私にとって小学生最後の大会だ。ステラにとっては小学生に拘わらず最後の大会になるかもしれないな。冒険者になっても剣術は続けるのか?」


「私は冒険者になるのが目標で剣術はそのためにやってただけだから、ボニーみたいには続けないかも」


「剣術は対人向けの技術だ。極めたところで魔物やキメラという人外にはあまり意味が無いだろう。むしろ邪魔になるかもしれないし、その方がいいだろう」


「ところでボニーは、私のこと友達だと思っている?」


「考えたことは無かったが、ステラがそう思ってくれるなら私は喜んで友達だと主張しよう」


「私はボニーと友達になりたい」


「なら私達は友達だ」


 ボニーは優しく笑みを浮かべた。

 ステラは照れ臭そうに視線を逸らす。


「あ、ありがとう」


 小学生女子の部にステラは出場した。前回よりさらに成績を伸ばしたものの優勝にはまだまだ届かなかった。そして同好会から優勝者は出なかった。


 そしてさらに数日が経ち、剣術同好会の稽古場にてボニーと剣術の試合をし、ステラは勝ってしまった。


「まさか、私が負ける日が来るとは……」


 ボニーは少し悔しそうに驚いた。最後の剣術大会直前にステラはオウロンとボニー以外には勝っていた。

 そして大会が終わった後のボニーとの試合に、ようやく勝った。

 ステラも驚き戸惑う。


「ずっとボニーには届かないと思ってたけど……こんな早く勝てる日が来るなんて……」


「ごめんなステラ、正直私も同じことを思っていた。ステラは私に絶対届かないと。でも私は嬉しく思う。勝てないと思ってる相手でもどうにかなる可能性を見せてくれたからな」


「そう思ってくれて嬉しい。私、ボニーがいつか優勝する日を信じてるから!」


「挫けそうになったら諦めずに剣術を続けたステラのことを思い出すことにするよ」


 二人は笑いあった後、時間が許すまで剣を交えた。


 * * * * *


 そして日々はあっという間に過ぎていき卒業が目前まで迫っていた。


 放課後、セシルが声を掛けてきた。


「ステラ、少し二人だけで話をしたい」


 連れ出されたのは校舎裏、人気のない場所。


「お前は卒業したら冒険者になるんだったな」


「そうだよ、セシルは進学だっけ?」


「ああ、普通は進学するぞ。ステラのようにこの歳で仕事に就くのは珍しいらしい。ステラは後悔はないのか?」


「分からない。でも、これが私のやりたいことだから」


 迷いはある。どちらも選びたい。でも選ばざるを得ない。だからブレないようにそう答えた。


「そうか」


 沈黙という無音が響く。

 ささやかに吹く風が無音を齧っていく中、もう何もなさそうだからとステラは切り出す。


「用はこれだけ? なら私はそろそろ帰るね」


「待て、今のはただの前置きでこれから話すことが重要なんだ」


「早く同好会に行きたいんだけど」


「分かった、言う。……俺はステラの事が好きだ」


 セシルは静かに、唐突に言った。

 覚悟の大きさを示すかのような強い風がステラの少し伸びたオレンジ色の髪と茶色のスカートが揺らした。

 私はステラがセシルに異性として興味がない事を知ってるので成り行きを見守る。


 ステラは何も言わない。

 無表情のまま沈黙を貫くとセシルの顔にわずかな焦りが滲んでるような気がした。


 やがて、ステラは口を開いた。


「私の事が好きなんだ、ありがとう。他に用が無いならもう同好会に行ってもいいかな?」


 セシルの表情がピクリと動くとすぐに口を開いた。


「ステラ、俺と付き合って欲しい」


 ステラは悩んでるような素振りを見せた。でも答えは決まっている。


「卒業したら私は冒険者になって世界中を駆け回る。セシルは進学でしょ? だから付き合えない、ごめんね。気持ちはとても嬉しかったよ」


 セシルは女子にモテるのでステラの返事は想定外だっただろうか? それとも普段の手応えのない空気感から断られるのを覚悟してただろうか?

 彼は特に落ち込む素振りも見せずに、恐らく用意していたであろう言葉を口にした。


「俺はいつまでもステラを待つ。いつか冒険者をやめた時でもいい、俺の所に来て欲しい」


 そう言いたくなるほどにステラを好きだということだろう。でもステラのどこを気に入ったのだろうか?

 ステラは興味がないのかそれについては触れない。


「私は冒険者をやめる気はないよ。でも、どうしても付き合いたいなら条件を出すね」


 セシルはどんな条件でも自信があるのか安堵の顔を浮かべた。だけど、その条件を達成するのは彼には無理。

 その条件はおそらく誰も成すことが出来ないからだ。


「私に剣術で勝てたら付き合ってあげる。君が勝ったら冒険者をやめるよ」


「俺はそこまでは言ってない。君が満足するまで冒険者は続けてもいいんだぞ?」


「私は自分より強い男がいいの。まだセシルと付き合うとは決まってないよ。もう勝った気でいるの?」


 セシルは図星だったのか少し動揺を見せる。

 けどもすぐに真剣な表情に戻った。


「俺は当然勝つよ。ステラを好きな気持ちはだれにも負けない。でも冒険者をやめるというのは撤回して欲しい。じゃないと俺は本気を出せない」


「じゃあやめるというのは撤回するね。撤回した上で今勝負してみようか。セシルって冒険者登録をしてるんだったよね? 訓練場に行こう」

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