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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
3章 小さき者の大きな力
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100 久々の登校 2

「おはようございます。さて、まずは連絡事項だ。言わなくても分かると思うが――」


 先生からまず最初にステラが戻ったことが報告された。もちろんクラスメイト全員は既に把握していることだ。次にステラの身に何があったのかの説明を始めた。


人気ひとけの少ない所に行くときは気を付けるように。ステラに関することはこれで終わりだ。次は――」


 その後もいくつか連絡が続いた。それが終わると短時間の休憩を挟んだ後、ようやく授業が始まった。

 久々の授業だからかステラは勉強についていくのに悪戦苦闘しているように見えた。


 12時になると昼食時間となり、食堂へ移動となった。

 食堂は各階にあり、その階の学年の生徒が利用する。


 ステラは友達で犬人のラズリィと一緒に食堂へ向かった。ラズリィはオドオドとした感じがキディアに似ている。


 食堂ではお金を払わなくても1食だけ自由に好きなものを選べる。注文すると名前を記入し、適当な席に座って呼ばれるのを少し待つ。そして受け取り口へ取りに行きテーブルに運んでから食事を開始した。


 食事中、朝に話しかけて来たクラスメイトの男子のセシルがこちらへ近づき声を掛けて来た。


「ステラ、久々の授業はついていけそうか?」


「やっぱり2週間も空くと全然分からないや。でもラズリィが色々教えてくれるから大丈夫だよ、気にかけてくれてありがとう」


「そうか。分からないことがあったら気にせず俺に聞いてもいいんだぞ」


 それだけ言うとセシルはここから離れた。

 ラズリィは忌々しそうに去っていくセシルを睨んだ後、ステラに強く主張する。


「勉強なら私が教えるからね、ステラ」


「じゃあお願いね! 昼食を早く終えてから勉強しよう」


 次の授業が始まるまでラズリィに勉強を教えてもらった。


 4時になると今日の全ての授業は終わり放課後となった。


「じゃあまた明日ねラズリィ」


「またねステラ」


 ラズリィが満足げな顔で去っていく。久々にステラと話し合って楽しかったのかもしれない。


(ステラ、学校の子達は呼び捨てにしてるのに、なんでルイザだけ『ちゃん』なの?)


(だって、たくさんいるうちの一人にでも『ちゃん』とか『君』を付けたら全員に付けないと変な感じがするじゃん。面倒臭いから名前だけにしてるの)


(でもルイザって年上でしょ。年上に『ちゃん』を付けるのはどうなの?)


(年上っていっても1歳しか違わないんだし、可愛いからむしろ付けないと失礼というか……あ、じゃあデシリアにも『ちゃん』を付けようか? デシリアって可愛い?)


 可愛くないとつけてくれないの? まぁ私はルイザ並の容姿だったし当然可愛いと言えるよね。


(自慢じゃないけどルイザくらいの美人だし、同性からはよく可愛いって言われてたんだよ。だって私エル……)


(エル?)


 あ、やば。エルフって言いそうになっちゃった。以前も言った気がするし、エルフって言っても大丈夫かもしれないけど一応誤魔化しておくか。

 でもエルがつく言葉って何がある? 早く言わないとステラに感づかれるかもしれない、エル、エル、エル……


(……エルボーも綺麗だねって友達によく言われてたんだよ。ごめん今のは聞かなかったことにして)


(変な友達だね)


 上手く繋げられなかったけど『エル』から意識を逸らすことには成功したはず。


(可愛くなくてもデシリアのことを『ちゃん』付けで呼んであげてもいいよ)


(本当に可愛いんだってば! 人間の男は私が歩くとジロジロ見てくるくらいだもん。まぁとにかく『ちゃん』をつけて呼んでみてよ)


(デシリアおばあちゃん)


(今まで通り呼び捨てでお願いね)


 ステラはこれから家に、ではなく学校内にある剣術同好会とかいう同校の生徒だけが参加している所に向かうらしい。そこでは剣術の訓練をしているようだ。


 * * * * *


 大きな建物が見えて来た。入口は開いている。ここは授業では体育のときに使うらしく、放課後や休みの日は同好会の人達やイベントとかで使われるようだ。


 建物の中に入り剣術同好会が活動している部屋へと向かう。


「こんにちはー!」


 扉を開けるとステラは威勢よく大声を飛ばした。


「お、ステラじゃねーか。久しぶりだな」


 男の子の声が返って来た。

 中には男子3人と女子2人と計5人がおり、どこかで見た覚えのある格好をしていた。

 

(あ、そうか。この服はイブリンが着てたジャージャーとかいう服だっけ)


 記憶が曖昧なため確認も兼ねてステラに尋ねる。


(ジャージだよ。その服はジャージっていって運動するときに着る服なんだよ、剣術って結構動くし。まぁ本物の剣は危険だから試合用の安全な奴を使うんだけどね)


 ジャージっていうのか。学校を卒業するまでの間は頻繁に目にするだろうから嫌でも覚えそうだな。


 服装の話は一旦置いておき5人の顔に意識を向ける。どうやらステラのクラスメイトはいないようだ。

 

 同好会の子達は久々のステラの姿を興味深そうに見つめる。


 ステラは頭の中では『説明するの面倒くさい』と愚痴りながらも彼らにいない間に何があったのかの説明を始めた。


「ステラ、大変だったな。無事に帰れて良かったじゃねぇか。ま、俺だったらこの中では1番強いし襲われても返り討ちにする自信はあるけどな」


 調子よく言うのはオウロンという名の男子、ステラと同学年で160cmくらいはありそうだ。大人と比べると小柄ではあるけど剣術を学んでいるわけだし襲われてもどうにかなるような気がしないでもない。


「調子に乗るなよオウロン。大人のほとんどは最低限の魔術を使えるみたいだし剣術しかない子供の私達に返り討ちは無理だと思ってた方がいいぞ」


 男っぽい口調で反論したのはステラと同学年で別のクラスの女子だ。ステラより背は高く、おそらくルイザと同じくらいはありそうだ。


「んなことは分かってるよ。それでも俺は自信があるんだよ!」


 オウロンはウザったらしそうに返した。


(ねぇステラ。あなた魔術って知らなかったよね? この子達は知ってるみたいだけど)


(私は知らないのになんで知ってるんだろ?)


(冒険者目指してるのになんで知らないのさ)


(私に聞かれても……知らないものは知らないんだよ!! もしかして私のこと馬鹿だとか思ったでしょ!!)


 なんか急に怒り出した。


(いや、そこまでは思ってないよ。気に触ったならごめんなさい)


 そこまで過剰反応するようなことか? あ……もしかしてみんなが当たり前のように知ってることを知らない、という状況が多くて劣等感を抱いてるとか?


 だからそんな反応をしたのかもしれないな。


 さっさと話題を変えて無駄に機嫌を悪くさせない様にしよう。


(それよりもステラは着替えないの?)


(みんなに挨拶してから着替えようと思ってたの!!)


 ステラは不機嫌なまま更衣室に向かった。

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