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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
3章 小さき者の大きな力
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100 久々の登校 1

 月曜日となった。

 ステラはようやく学校に復帰する。学校は小学校といわれる名称で3年間通うことで卒業できるらしくステラは現在3年生のようだ。卒業後の進路は中学校か就職のどちらかを選べるけどステラは冒険者という就職の道を予定している。


 冒険者は就職といえるのだろうか? まぁ細かい事はどうでもいいか。


 私がステラ位の年齢の時の学校と言えば基礎的な魔法や戦闘の授業があったけどステラの学校には無いらしい。

 ステラが学校で習うのは文字や文章の読み書き、数字の計算、アレスティア国の地理、体を動かすだけの体育、料理の作り方や日用品の扱い方など、とにかく最低限の一般常識を学ぶみたい。


 ステラは学校の制服であるワイシャツと茶色のスカートを着て鏡の前で変な所が無いか確認する。ちなみにスカートの中には短パンが履いてある。

 そしてジャージなどの体操着の入った布袋革と筆記用具などが入った革の手提げ鞄を持ち、母の所へ向かう。


「行ってきます」


 と言葉を掛けるものの、すぐには出て行かず母からの返事を待つ。


「変な所には行かないようにね」


「大丈夫、気を付けるから」


「行ってらっしゃい」


 玄関で母とチッピィに見送られ、ようやく外に出た。内階段を降りて通りに出るとステラはまた不安が湧き上がり足が止まった。私が魔法で落ち着かせると何事も無かったように歩き出す。


 20分ほどすると学校らしき建物が見えて来た。敷地は金網の塀で囲まれており敷地内は丸見えだ。敷地の入り口である赤いレンガの門を通り、次に靴を履いたまま建物の中に入り階段を上っていく。教室に着いたのは10時だ。


(こんなゆっくりな時間なんだね)


(中学校だと勉強時間増えるから登校時間もっと早いらしいよ)


(あ、もしやステラ……勉強が嫌だから冒険者になりたいんじゃないよね?)


(それもある!)


(否定はしないのね)


 冒険者になってもらわないと困るのであれこれと余計な事は言わないでおく。

 登校中は誰からも声を掛けられることはなかったけど教室に入るとようやく声が掛かった。


「おはよう……ってステラ?」


 ステラと同じ年くらいの人間の女の子だ。特にこれといった特徴の無い普通の子。ステラの友達というわけでなくただのクラスメイトらしい。

 教室にはその子しかいないのでちょっと早く来すぎたかもしれない。けども、久々の学校ということを考えれば気持ちを落ち着かせるにはちょうどいいのかも。


「おはよう。2週間ぶりくらいかな?」


 ステラは気まずそうに返した。


「そうだね。行方不明ってしか聞いてないんだけど何があったの?」


 ステラの顔が少し曇る。攫われた時の事を思い出したのだろう。回復魔法を掛けるとスッキリとした顔に戻った。

 ステラの雰囲気を察した女子生徒は謝った。


「ああ、ごめん。何か辛い事でもあったんだね、聞かないでおいてあげる」


「ごめんね。詳しい事は多分先生が知ってると思うから先生に聞いて」


「分かった。今日からまたよろしくね。ラズリィが寂しそうだったから久々に話でもしてあげなよ」


 頷いたステラは後ろの窓側の席へ向かっていく。


(ラズリィって?)


(ラズリィは私の友達だよ)


 ステラは椅子に座った。机のすぐ左隣には荷物を入れる棚があり、扉を開けて革の鞄と体操着の袋を入れた。

 机は1人1つ。教室内には机が4×4で配置されており全部正面である教壇側を向いている。教壇側には白い板があり様々な色で文字や雑な絵、つまりは落書きが描かれていた。授業ではその板に文字を書いて説明していくのだろう。


 しばらく待つと続々と白と茶色の制服姿の子供達が入って来る。どれもステラくらいの年の子ばかりで種族は半分以上が人間だ。この町に来てからまだエルフは見たことないけどステラはエルフを知らないし、いないんだろうな。


(みんな同じ年?)


(うん、同じ)


 入って来る人全員、というわけではないけど二人に一人は久々のステラに何があったのか興味があるようで女子だけでなく男子も話しかけて来た。ステラはさっきの子と同じ対応をしていくけど、何度も説明していくうちに面倒臭いと頭の中で愚痴を零す。


「ステラ!! ……無事、だったんだね」


「おはようラズリィ! 久しぶりだね」


 ステラの友達――ラズリィは頭に犬の耳がついており種族は犬人いぬびとのようだ。ステラは相手が友達だからか元気よく挨拶した。ラズリィは明るいステラの姿に安堵してるように見えた。少し話をした後、彼女はステラの前の席に座った。

 次に落ち着いた感じの人間の男の子が声を掛けて来た。このクラス内では一番顔は良さそうだ。2名ほどの女子がその男子が気になるのか遠くから視線を送っている。


「おはようステラ、久しぶりだね。元気そうな姿を見て安心したよ」


「久しぶりセシル。心配してくれてありがとう、元気だから心配はいらないよ」


「何か困ったことがあったら言って欲しい。手を貸すよ」


「ありがとう。何かあったらお願いね」


 セシルという名の男子はそれ以上は喋らず空いてる席に着いた。


 残る空席は3つだけとなった。そろそろ授業が始まる時間だけどその3つの席の生徒は間に合うのだろうか? という心配をよそに時間ギリギリで同時に3人の人間の女子が喋りながら入って来た。


 3人はステラの姿を見ると会話が止まった。真ん中の桃色の髪の子は左右の子よりも特に驚いてるように見える。

 ステラが視線を窓の外に向けていると桃色の髪の子が声を掛けて来た。


「ステラ、久しぶりね! もしかして、攫われてたんでしょ?」


 ステラは桃色の髪色の子に怪訝な顔を向ける。


「レイラ……なんでそう思ったの?」


 桃色の髪の子はレイラというらしい。

 彼女は何故攫われたと思ったのだろうか?


「だってそれ以外の理由が思いつかないもの。じゃあ学校が嫌になったとか? それとも旅行?」


「ごめんね。詳しい事は先生に聞いて欲しい」


「ふーん、じゃあそうする」


 レイラはステラの表情から何かを察したのかそれ以上聞かず、空いてる席に着いた。それから程なくして教室の扉が開き、先生と思わしき大人の男が入って来た。

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