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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
3章 小さき者の大きな力
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98 異常が無いなんてありえないのですわ!

「あ、ルイザちゃん! 私ね、学校は今日は休むことにしたよ」


「昨日戻ったばかりですものね。気持ちの整理がついてからでいいと思いますわ。それでなにやら騒がしいけど何があったのかしら?」


 尋ねられたステラは分からないと手を横に振り、喚いてる男の方向へ顔を向けた。

 男はまだ諦めきれず職員に先程とは違って同情を誘うような弱々しい態度で何度も訴えていた。

 職員は戸惑いながらも対応し何度もできないことを告げていた。


「初めて見ましたわ。本当に蘇生ができないことってあるのですわね」


「ねぇルイザちゃん、どういうこと?」


 ルイザは不思議そうにこちらを見て少し間を置いた後、納得した表情を見せた。


「そういえばステラは冒険者じゃないから知らないのでしたわね。冒険者に登録するときに色々と説明を受けるのですが、冒険者は死んでもギルドで蘇生をしてもらえるのですわ」


「え、死んでも生き返るの?」


「ええ、稀に失敗するというのも説明されるのですが、蘇生に失敗したという話を耳にするのは初めてですわ」


「へぇ、生き返るんだ……」


「いくら蘇生が可能だからって命を投げ捨てる人なんてそうそういないのですわよ。痛みや苦しみはどうにもならないですし、それに失敗する人が本当にいるみたいですから」


 ルイザはまだやりとりをしてる男と職員に視線をチラリと向け、そして再びステラに戻す。


「ところで、ステラがギルドにいるということは私に会いに来たのでしょ?」


 ステラは笑顔で頷いた。


 * * * * *


 ギルド近くの5階建ての建物。その一室を借りた小さな病院の待合室でルイザと一緒に診断結果を待っていた。


「……ステラって本当に11歳なのですわね」


 ステラの学生証を信じられない目で見ながらルイザは呟く。ルイザはステラが本当に11歳なのか疑ってたので生年月日の記された学生証を見せると納得したようだ。


「ステラ・プリマディオルさーん。どうぞお入りください」


 呼ばれたのでステラは手を上げるとルイザと一緒に診察室に入った。

 中には白衣の女がいて凄い笑顔だ。


「ほら、この画像、どこにも異常は見られなかったよ」


 女の医者は機械を操作し、宙に人の体のような2色の濃淡で描かれた画像を表示させる。


「えーと、つまり……?」


 ステラはもう大体予想はついているけど期待を込めて続きを促す。


「異常なしだ。念のため回復魔術を掛けてはみたがもしまた気になる所があれば来てくれ」


 私の時代はわざわざ体の中の異常を視覚的に確認するなんてことはしなかった。異常が起きた箇所を魔法で元の状態に戻せば治ったからね。治せないのは先天的なものか、慢性化して状態が固定化した場合くらいだ。例えば性格は先天的なものなので魔法では数時間しか変えることはできない。後天的に性格が変わった人でもその性格で固定化してるのでやはり魔法を使おうとも数時間もすれば元に戻る。


「異常無し……なのですか?」


 ルイザがまだ信じられないのか再確認する。


「そうだ。気になるとしてもステラさんの生まれつきの性格か時間をかけて定着した性格なだけだから異常ではないぞ」


 異常無しという診断結果にルイザは腑に落ちない様子だった。


 * * * * *


 病院を出てしばらく歩くとルイザは不満を口にした。


「異常が無いなんてありえないのですわ! あ、いえ、別にステラのことが嫌いとかってわけではないですわよ?」


 出会ってからしばらくは変な行動をするステラを嫌っていたけど、その感情は今では無くなってるようだ。

 今まで何かしら嫌われてるかもと思ってたステラにとってはそれだけでも嬉しかったようで私に明るく話しかけて来た。


(ルイザちゃんが私の事好きって言ってくれた!)


 いやいや、そこまでは言ってないよ?


(嫌いじゃないってのは好きとは違うからね)


 私はニヤつくステラに訂正を入れた。それでも嬉しい事には変わりないようだった。


「人格が2つあるなら何かしらの診断がついてもおかしくありませんわ。他の病院でも見て貰いますわよ」


(うへぇ、面倒臭い)


 ルイザに気に入られたいステラは私に愚痴りつつも嫌な顔は表に出さなかった。


「ルイザちゃん、私に幽霊が取り憑いてるなんて絶対言わないでね」


「もちろんですわ。言わなくても異常があれば気づくはずですので言わないのですわ」


 何かしら変化が起こってるなら『幽霊に取り憑かれた』という異常を診断できるはず、とルイザは息巻いて別の病院にもステラを連れて行った。


 * * * * *


「異常なしですね。ほら、この画像の結果を見ても分かる通りどこにも以上は――」


 2か所目も異常なし。


 そしてさらに大きな病院に連れて行かれるも異常なしの診断だった。

 3か所回って異常なしと言われればもう異常無しを受け入れるしかないだろう。


 さすがに4か所目は回らないようで二人は冒険者ギルドのルイザの部屋へと戻った。


「あの、ルイザちゃん。……納得した?」


「あれだけの力を持った子どもなんて、何かに取り憑かれでもしない限りありえませんしステラの中二病ではないことは確かですわ。中二病ごっこ程度でああなるのでしたら私だってやりますし、現に今の私の喋り方が中二病みたいなものですし……なるほど分かりましたわ。ステラ、あなたのはつまり未知の病気なのですわ」


「病気?」


「ごめんなさい、なんでも病気というのは良くないですわね。……今日ステラと一緒にいて私は気にするほどのものじゃないと感じましたわ」


「不安にさせてごめんね。私が変な時は頭の中の人と会話してるだけでそれ以上のことは無いから安心してくれると助かるよ」


「ええ、あなたの言う事を信じてみることにしますわ」


 ステラへの不信がほぼ解消された後は二人で色々な話をしてから時間を過ごした。そして帰る時間になりルイザとは部屋の入り口で別れ、ギルドの玄関の扉を開けた瞬間ケミーとキディアにばったり会った。


「あ、ステラちゃん来てたんだ。久しぶりだね~!!」


 そう言うなりケミーはステラに抱き着いてきた。


「昨日会ったばかりでしょ!!」


 引き離そうとする前にケミーが自主的に離れた。


「ちょうど良かった。ルイザちゃんにステラちゃんの家へ案内してもらおうと思ってたんだよ」


 ケミー達に案内をお願いされたステラは帰宅ついでに自宅へ案内することにした。

蘇生が出来ない人もいる。

奇跡的に成功しましたの逆バージョン。奇跡的に失敗しました。

失う事を覚悟して無い分、長く引きずるかもしれないですね。

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