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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
3章 小さき者の大きな力
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90 3話目くらいで発生するようなイベント 2

 外に見える盗賊達はルイザ達を取り囲んでいた。ルイザ達は鳥バスをすぐ背後に置き、真後ろからの襲撃を防ぐ。

 盗賊達は御者に魔導銃らしきものを向けられているにも拘わらず強気な態度で詰め寄る。


「要求を全て飲め! と言うつもりはねぇ。全部持ってかれると困るだろ? だからまずは交渉だ。確認するが積み荷はあるんだろうな? なければお金で手を打ってやろう」


 盗賊なら全部奪いそうなもんだけど、この生ぬるいのが現代のやり方なのか? どちらにしても迷惑な事には変わりはない。


 さて、盗賊達と御者が交渉をしてる間にこの距離からルイザに身体強化がかけられるか試してみるとするか。

 ちなみに遠隔での魔法の行使は難しい。魔力を離れた一定の場所に送り、留めるというのは高度な技術だ。魔力は分散しやすいので一定量を固めるにはその調整だけで魔力をじわりじわりと消費する。そして効果が不安定なので余裕のある時以外には用いたくない方法だ。


 今はどう見ても雑魚しかいないという余裕がある状況なのでこの方法を取らせてもらう。


 私はルイザの周囲に魔力を送ると身体強化の魔法を遠隔発動した。ただし効果の程はルイザしか知らないので後で確認してみるとしよう。


 ルイザは何かを感じ取ったのかピクリと反応した。そしてこちらを見て微笑を作り、コクリと頭を振った。


 上手くいってますように!


 その間にも盗賊達は交渉を続ける。


「たった2人で俺達に勝てると思ってるのか~?」

「子供の手を借りるほど困ってるなら大人しく言う事を聞いた方がいいぞ?」

「抵抗せず積み荷を置いてくなら命まで取るつもりは無い」


 数的優位な盗賊達は脅せば差し出すとでも思ったのか強気な態度で出て来た。

 対する御者は表情を変えず冷静に返す。


「残念だが積み荷を渡すつもりは無い。さてどうする、暴力にでも頼るか? 大人しく退いてくれるなら見逃すが?」


「仕方ねぇ。おいみんな、少し痛めつけるぞ!」


 盗賊達は無血開城を目指してたのか不本意そうに盾や剣を構えた。

 御者の男は面倒臭そうに呟く。


「結局こうなるか……さて、ルイザ君。怪我は負わせてもいいが殺さずに生け捕りにするんだぞ?」


「努力します」


 ルイザは淡々と答えた。


 盗賊達は6人は御者を標的にし、残りの2人はルイザに襲い掛かった。盗賊達は一応魔術が使えるようで光を放ったり水を飛ばしたりして視界を奪いに来る。と同時に盾での体当たりをしてきた。体当たりだからといっても侮れない。御者の男は魔導銃らしきものを下の方に向け放つと糸のような白い光が、迫って来ている盗賊の足に当たった。


 その盗賊は倒れて動かなくなった。ちなみに足に傷は見られない。そういえば魔導銃に似た電気銃という物があると聞いたことがあったな。それだろうか。電気系の攻撃は麻痺を起こして動きを封じるというし。


「何か飛んできたぞ、みんなその武器に気を付けろ!」


 残りの盗賊は仲間を見捨てて逃げることはせずに、一斉に盾を構えて体当たりを続ける。


 私はルイザはどうなってるのかと目を向けると、左右を挟まれて逃げ場を塞がれており、片方から迫る盗賊の相手をしていた。


「エアバースト!」


 ルイザは手にした杖を地面にトンッと置き、発声する。盗賊は盾を構え魔術に備えるが真下の地面が爆発し、宙に舞った。


「まず一人目」


 ルイザは宙を舞った盗賊が沈黙したのを確認してる間に、もう片方が背後から剣を構え迫っていた。


(危ない!)


 と、ステラはハラハラドキドキしてるので私は安心させるために盗賊の妨害をすることにした。盗賊の目の前に視界を妨害する大量の砂っぽい何かを遠隔魔法で発生させる。


「ぐわぁ、なんだこれは!」


 盗賊はルイザのすぐ目の前で立ち止まり、盾で顔を覆い始める。

 ルイザはがら空きの足目掛けて杖を振った。薙ぎ払われた盗賊の体は時計周りにグルグルと高速回転し始める。


「うおわあああああああぁぁぁぁぁ」


「え? え?」


 と、動揺したルイザは自身の腕を見つめる。私が掛けた身体強化がちゃんと機能していて、思った以上の力が出て困惑したのかもしれない。


 回転する盗賊は地面に落ちると――


「ぐげぇっ?!」


 と変な声が漏れ、転がっていき大人しくなった。


 その様子を見ていた盗賊達がざわつき始める。


「お、おい。あの子供もすげぇヤバいぞ。なんで子供が出て来たのかと思っていたがそういうことだったのか」


 御者は盗賊達の様子を見てルイザがなにやら凄い事をしたことに気づいた。


「何をしたのか見てなかったが盗賊達がうろたえてるぞ。子供にしてはやるじゃないか」


「え、あ、はい」


 ルイザも何やら動揺してるけどすぐ御者に加勢に入り、遠距離から1体ずつ電撃系だろうか、そんな魔術で戦闘不能にしていく。

 最後の1人は御者が腕を掴んで投げ飛ばし地面に叩き付けて終わった。


 あっさりと鎮圧は完了した。


(ルイザちゃん凄かったね! ところでデシリアから見てルイザちゃんの魔術ってどうだった?)


 えーと……魔術の事なんて分からないのでなんともいえない。子供が大人を倒すってのは凄いと思うからそこを褒めちぎるとしよう。


(子供ながらに大人を倒すって凄いことだよ。最初の魔術は凄かったね。地面を爆発させて吹き飛ばすヤツとか――)


 ステラがガッカリしないように適当に合わせた。

 盗賊を鎮圧した御者は回復魔術で盗賊達の怪我を治した後、縄で縛って鳥車の倉庫に放り込んでいく。

 御者があれこれやってる間にルイザも障害物を魔法で退かして鳥バスが通る道の確保という仕事をした。

 私は霊体をステラの体の中に戻し、ルイザが戻るのを待つ。


 戻って来たルイザはステラが声を掛ける前に御者に労いの言葉を掛けられた。


「ルイザ君手伝ってくれてありがとう。それにしても12歳とは思えない凄い魔術だったよ」


「い、いえ。私なんてまだまだです」


 ルイザは無表情で謙遜した。続いてステラがルイザに興奮した様子で話しかける。


「ルイザちゃんお疲れ様。カッコ良かったよ!」


 褒められたルイザは照れ臭そうに返す。


「あれくらい大したことないのですわ」


「私もそういうセリフ言ってみたい~~!」


「ステラの中には凄い師匠がいるじゃない。鍛えて貰えばきっといつか言えますわ。さぁケミー達のところへ戻りますわよ」


 ルイザは羨ましがるステラを宥めながらケミー達の所へ戻った。

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