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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
2章 才色兼備の猫人魔術士
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88 ルイザVSアニータ 3戦目 1

殴り合いだけが戦いじゃない

 昼食を終え出発の時間が迫り、鳥バスへの乗車の案内が始まった。

 他の客を差し置いて最初に乗り込むのはステラ達だ。その中で1番最初に足を乗せたのはケミーで荷物を手に持ち乗り込んでいく。


 座席は特に指定されていないけどルイザを除く3人はただの客ではないため他の客に配慮してまとまった場所に固まった方がいいだろう。

 座席のある場所は部屋になっていて2対の椅子が対面になっている。3人が座ると1つ余るけどいつもの如くルイザが座ることだろう。


 最初に部屋に来たケミーは奥の窓際に座り、その隣にキディアが座った。

 キディアが率先して隣に座るほど仲が良くなったようでこれなら孤児院でも二人はやっていけるだろう。

 次にステラが座ろうとするとき二人を見て私にこう言って来た。


(私の隣だとルイザちゃん、不機嫌にならないかな?)


 4つのうち3つの席は埋まり、ルイザの席はステラの隣にしかない。

 今日の食堂ではステラの隣にはルイザが座らなかったのもありステラはどう思われるのか不安のようだ。


(まぁいいや)


 ステラは成り行きに任せることにし、窓際の席にかけた。

 もし嫌ならキディアがルイザと席を交換してくれるとステラは考えてるようだ。


 ステラが兎猫ラビキャットのカゴをすぐ目の前の床に置くと「にゃ~ん」と言うとろけるような可愛い声が耳をくすぐった。

 カゴの出入り口は金網の様な扉が横に付いており、そこから指を入れれば兎猫に触れることが出来る。


「お、どうした?」


 ケミーは金網から指を入れて兎猫の頭を撫でた。彼女は飼い主のステラよりも兎猫を可愛がってくれている。


「私が飼えたら良かったけどそもそも孤児院じゃ飼えないだろうし……」


 ケミーは悩む素振りを見せ、ちらちらとステラを見つめた。


「あ、そうだステラちゃん! この子に毎日会うためにステラの家に行ってもいい?」


 まるで今閃いたかのようにわざとらしく尋ねて来た。ステラの家に行くためのきっかけに兎猫を利用したのだろう。


「えーっと……毎日はちょっと困るかな。私が家にいる時ならいいよ」


 私はてっきりステラが誤魔化して断るものだと思っていたけど、嫌がる様子は見られなかった。


(ケミーの事、今まで嫌ってたように見えたけど、どういう心境の変化?)


(今でも苦手意識はあるけど、なんだろう。分かんない)


 一緒に関わっていくうちにケミーに情が移ってしまったのだろう。会えなくなることを想像して寂しさを感じちゃったのかもしれない。

 

 その時、部屋の入口から遅れて来たルイザが顔を覗かせた。

 少し遅れたのは宿舎の部屋に戻って忘れ物が無いか確認していたからだ。

 ルイザはステラの顔を見た後、その対面に座るケミー達に顔を向けた。


(やっぱり嫌だったかな?)


 ステラが残念そうに乾いた笑いを出すとルイザはなんてことない顔で隣の席へ腰を下ろした。そんなルイザをじーっとステラは不思議そうに見つめる。ルイザはちらりとステラに目を向けると気まずそうにした。


「やっぱり私が隣に座るとまずかったかしら?」


 そう言ってルイザは正面のキディアに顔を向けた。きっとキディアと席の交換の交渉でもするのだろう。

 ステラはその前にルイザの袖を掴むと頭を横に振った。


「まずくない、むしろ美味しい!」


 そう言って一拍置いた後、ステラ以外の3人はおかしかったのか噴き出した。

 ステラは周りの様子など気にせずキラキラした目をルイザだけに向ける。


「ですわよね。いつも私の近くに座ろうとしてたのだし、ですわよね!」


 ルイザは平然を装おうとしてるけど言葉の抑揚から嬉しさが溢れていた。たった半日で大分距離が縮まったもんだ。

 ステラにとっての難題が無事に解決した直後、またも問題が起きそうな声が響いて来きた。


「私は客じゃないわ! でもちょっと探してる人がいるから入れさせてよ」


 と、鳥バスの入口の方から針のように鋭い声が飛んできた。

 声の主はアニータだ。恐らくルイザを探してるのだろう。先ほどまで『ドミニオン』でルイザに贈る物を探してたのでそれを渡しに来たと思われる。

 足音がこちらに近づき、部屋に大きな声が響いた。


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