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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
2章 才色兼備の猫人魔術士
165/282

85 ちゅうにびょう 3

(デシリアがルイザを呼ぶときは呼び捨てでお願いね)


 ステラに言われた私は今まで通りルイザを呼び捨てすることになった。


 ルイザには『ステラの中に私がいることを知ってるのはルイザとキディアだけ』というのも伝え、この力の事やデシリアの存在を口外しないように念を押した。


「ケミーなら口が軽そうですし言い触らしかねないと思いますわ」


 そして私――デシリアの事をケミーに教えてない理由を説明するとあっさりと納得してくれた。


 話題は私の力のことに戻る。

 ルイザは年齢の割には魔術士ランクが高く、そしてその若さで冒険者というのもあり将来性を買われて他のチームからよく声を掛けられるようだ。

 美人だし可愛いからってのもありそうだ。


「力があると私程度でもよく声を掛けられますし、ステラ――いえ、デシリアさんほどの力があればどうなるか想像もできませんわね」


 生前の時代だと力を発揮する場面というのがほぼないし、冒険者なんてのもなかった。だから目立つようなことは滅多になかった。

 今の時代だとキメラや魔物なんてものがいるから、私が今の時代に生きてたらきっと冒険者チームへの勧誘が激しかったかもしれない。


 それはそれとして私の事をステラ以外が認識してくれてるのは嬉しいな。

 キディアは私の名前までは知ろうとしなかったからちょっと寂しかったんだよね。

 ステラとしてではなく“私”として話をできる相手が出来るかもしれないと思うと是非ルイザを近くに置いておきたいと思った。

 でも、それを決めるのはステラとルイザであって私ではない。

 だから私からルイザを勧誘するつもりはない。


「自分の力なら良かったんだけど、借り物だからね。デシリアが突然いなくならないとも限らないし、実力相応に目立つ程度に留めないと自分だけじゃなくみんなに迷惑が掛かっちゃう」


 ステラは私の力に頼り過ぎないように頑張るようだ。


「なら私もつい口を滑らせない様に気を付けないといけませんわね」


「ごめんね、色々面倒かけさせちゃって。でもルイザちゃんと一緒にいるのはエリンプスまでの少し間だけだから、その間だけはよろしくね」


 ステラは明日の別れを想像したのか寂しそうに言った。


「……ま、まぁ。ちょっとの間だけですし、ステラと離れれば話題にも出ないから口を滑らせることもないのですわ……」


 ルイザも強気な態度に寂しさを滲ませながら徐々に声が小さくなっていった。あれほど嫌がってても別れというのは寂しいのだろう。


「あの、ルイザちゃん」


「なにかしら?」


「えーとね、……………………いや、やっぱりなんでもない」


 ステラは小さく笑みを作り、顔を横に振った。


「は、はぁ? 気になりますわ、なんですの?!」


「あ、そういえば私をこの部屋に呼んだのってなんだったの? 用事があるんだよね?」


 ステラは話を逸らすかのように話題を変えた。


「用事はもう終わりましたわ。私がステラを呼んだのは謝りたかったの。一応もう一度謝りますわ。酷いこと言って本当にごめんなさい」


 ルイザは今度はひざまずかず、軽く頭を下げた。さっきと違うポーズだけどこれも謝罪の1つなのだろう。後で謝罪の仕方についてステラに聞いてみるとするか。


「わざわざ謝ってくれてありがとう。もう私は気にしてないし、ずっとその事ばかり言われると嫌な気持ちになるから別の話をしよう?」


 ステラは笑顔で返した。

 ルイザもそれに乗っかり、エリンプスに着いた後のことについて話すことにした。


「ルイザちゃんもエリンプスで降りるんだよね? その後はどうするの?」


「そうですわね」


 ルイザは下唇に人差し指を乗せて考え込んだ。

 すぐに答えないということは、まだ何をするか決まってないのだろう。


「……しばらくはエリンプスに留まろうと思ってますわ」


「え?! 本当?? じゃあ学校が休みの日とかたまに会いに行ってもいいかな?」


 エリンプスに着いたらお別れだと思っていただけにステラは嬉しさからか声の調子も上がっている。でも会ってくれるかはルイザ次第だ。

 今までステラとは距離を置こうとしてた彼女だし、会ってくれるだろうか?


「え、ええ……いいですわよ。でも昼間はいないことが多いですので私がいないときはギルドに伝言してくれるとありがたいですわ」


 拒否されるかと思ってたけど、会うための条件なども特に付けられずに了承してくれた。

 今日の午前までのルイザだったら絶対濁すか拒否しそうな雰囲気あったのに……。不謹慎だけどキッカケを作ってくれた魔王には感謝だ。


「本当にいいの?! ルイザちゃんって私の事嫌いじゃなかった??」


「そ、それは変な行動の理由が分からなかったからですわ。ってあなた、嫌われてる自覚があったのによくめげずに私に近づこうと思いましたわね。とにかくもう私はそこまで気にしてないですから何かあったらエリンプスの冒険者ギルドの宿舎に訪ねてくれるといいですわ」


(デシリア~、もしかしたら私ルイザちゃんと一緒のチーム組めるんじゃないかな? そんな気がしてきた!!)


(今聞いてみたら? 学校卒業したらチーム組もうって)


(今は……いいや)


(え、なんで? まぁステラが決めることだから強くは言わないけど)


 何か思うところでもあったのかな? 時間の猶予は増えたし、どちらにしても私はステラに任せるつもりだから、しばらくは何も言わないでおこう。


「ステラ。エリンプスに着いたら……私も一緒に病院に行って本当に異常が無いか確認させてもらいますわ。いいですわよね?」


「え? ああ……うん」


 まだ疑ってるようだ。この話題はここで終わり、残りの時間は適当に他愛もないお喋りをした。

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