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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
2章 才色兼備の猫人魔術士
163/282

85 ちゅうにびょう? 1

 早口で言った後ルイザは床に両膝でひざまずき、両目を閉じると頭を勢いよくゴツンとぶつけ、両手を合わせた。


 そういえばこんな感じの謝罪をする人達を生前にも見た事あったな。


「申し訳ありませんでした!!」


 ルイザの必死な謝罪に一瞬、静寂が部屋を支配する。彼女がこんな謝り方をするとは思わなかった。


 さて、ステラはどう思ってるだろうか?


(デシリア。ルイザちゃん何も悪くないし、私こんな姿見たくないからめてくれる?)


 ステラは困惑していた。ルイザの発言を気にしてないみたいなので止めるとしよう。

 私はルイザの両手を私の両手で柔らかく包み込み、その謝罪を暖かく受け入れた。

 彼女は顔をあげ、気まずそうな表情を私に向ける。私はそれをやわらげるために優しく言葉を掛ける。


「ごめんね、怖がらせて。その怖い気持ちは分かるよ。私は気にしてないからこれからは仲良くしてくれると嬉しい」


 そして私はニコっと笑顔を作った。

 私は化け物と思えるほどの存在を見たことが無いので怖がるルイザの気持ちは本当は分からないけど、こういう時は共感してるフリでもいいだろう。

 ステラも頭の中でうんうんと同意している。

 でもまだルイザの表情はまだ晴れない。もう一押し必要か。


「そんな顔されてもステラは……私は嬉しくないし、さっさと笑顔に戻ってくれないと抱き着くよ?」


 おっと、間違ってステラの名前を出してしまった。ちょっと油断するとすぐ出てしまう。

 でもルイザは特に気にもしてないようで、彼女の固い顔は解けていく。

 抱き着かれるのが嫌だからなのか、もしくは許されて安堵したのかは分からない。


(デシリア、まだ言いたいことあるの? そろそろルイザちゃんと話がしたいんだけど)


 言いたいことは伝えたのであとはステラに任せることにした。

 その後ルイザは再び言葉で謝る。


「本当にごめんなさい、私、思ったことをすぐ言う癖があって」


「誰だって欠点はあるんじゃない? 私だってあるし」


 ステラが言うとルイザはすかさずステラの欠点を口にしだした。


「そうですわね、ステラは自分の事をステラと名前で呼んだり、何もない場所で一人でボソボソと誰かと会話してるように声を出したり、ディスプレイの映像に指を差して謎のポーズを取ったりしてましたものね」


「あ、うん。それは……」


 ステラは困惑した。ルイザもつい口が滑ってしまったのだろう、気まずそうに口を両手でふさいだ。


「ご、ごめんなさい、言った傍からうっかり口に出してしまいましたわ。命の恩人に言いたくはなかったのですが……でもやっぱり私はステラのそういうところが苦手ですわ。だからその病気を治して欲しいのですわ。病院に行けば治せるのではないかしら? あなたの故郷エリンプスの町なら治せる病院があるはずですわ」


 ルイザはそう言いながら椅子に掛けた。それを見たステラも椅子に掛ける。

 今までステラの奇行はルイザには精神の病気だと思われてたようだ。


(ステラ、あなたの奇行の原因が病気だからだと思われてるよ)


(ねぇデシリアぁ~、ルイザには正体バラしてもいいんじゃない?! それ以外でどうやって奇行を理解してもらえばいいか私分かんないよ!)


 病気と思われたのがこたえたのか頭の中で大きく喚いた。


(簡単でしょ。奇行をやめればいい)


(な、なるほど! いや、そうじゃなくて、そうだけどー!)


(ははは、それが出来れば苦労しないってね)


 既に変人だと思われてるから不信感を分かりやすく払拭するには病院に行くしかないだろうね。

 でもステラの場合は病気じゃないから治療のしようがないし、時間を掛けて信頼を得るしかない。けど、信頼を得られるほどの時間はないだろう。

 そして時間を掛けるということはその間はルイザに奇行に走るかもと不安な気持ちにさせたままになる。奇行が無くなったとしても明確になくなったのがいつなのか曖昧だから不信感は小さいながらも残ったまま。


 やはり私の事をバラすのが良いか? 今のままだと変人にしか見えないし事情さえ分かれば安心してくれるだろう。

 バラした後にステラに対する態度がどう変わるのか? という不安があるけどむしろ年相応の女の子だと思われて親しくしてくれるかもしれない。


 私は伝えることを決めるとステラと交代してからルイザに声を掛けた。


「ルイザ、今から言う事も誰にも口外しないで欲しいんだけど約束できる?」


 私の言葉にルイザは緊張感のある空気を纏わせた。


「え、ええ。でも口外されたくないなら言わない方がいいのではないかしら?」


「私の力に関係する重要なことなんだ。それでね、私の変な行動についてなんだけど……」


 私が事情を説明しようとするとルイザはため息をき、憐れむような目を向けた。


「病気じゃないと思い込みたい気持ちは分かるのですわ。でも病院には行った方が――」


「ああ、うん。分かってるよ。でも最後まで話を聞いて?」


 私はステラの中にもう一人別の人格――私がいることを打ち明けた。

 きっと驚くだろうな、と思っていたけど予想に反してルイザは冷静だ。


「じゃあ、たまにやってる変な行動はその中の人に見せてたからってこと?」


「そうそう。頭の中の人に返事しようとしてうっかり声に出したり動きで教えようとしたのが奇行の正体だよ。決して変な薬物を服用してるわけじゃないから安心して。それで今はステラではない方があなたに話しかけてるの。だからステラは病気じゃないんだよ」


 ルイザは同情するかのような優しい笑みを浮かべた。


「ふふっ、もしかして中二病ちゅうにびょうでしたの?」


「へ?」


 ちゅうにびょう?


 真実を話したのにまだ病気だと疑われているの?

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