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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
2章 才色兼備の猫人魔術士
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80 魔法 3

 消滅魔法を無詠唱で発動したことを指摘されるかと思ったけど、シェダールは着地後も特に言及して来なかった。


 シェダールは少し時間を空けた後、またも光線を放ち始める。

 私は前へ駆けながら手を出して消滅魔法で無効化していく。人が来る前にさっさと静かにさせないと面倒事が増えてしまう。


「やはりその魔法は厄介だな」


 シェダールの口から魔法という言葉が出て来た。魔法と言う言葉を知ってるということは今の時代も魔法があるようだ。

 相手も常に無詠唱だったし、もしかしたら魔法を使っているのではと思っていたけどそれを裏付けるかもしれない発言だ。


「な、何言ってるの? 今のは魔術だよ」


 私は魔法が使えることを言い触らされたくないので否定する。


「何を言っている。お前は魔術は使えないのだろう?」


 今のステラは魔術が使えない。そのことも知っていたということか。

 今使えないんだから過去のステラが使ってるわけもなし。


 ……あれ?

 でも魔法を使ってることに対して反応がないのはどういうこと?

 ステラは魔法も使えないのだけど……。


 とにかくさっさと静かにさせよう!

 そう思って駆けた私は、しかし平和的に終わらせたいので一旦立ち止まる。


「もう一度聞くけど、あなたはどうしても私を倒さないといけないの?」


 もう一度話し合いでの解決を図ってみる。これが最後の交渉。駄目なら力を示して私を相手にしても勝ち目がない事を教えてやる。


「そうだ、まだ子供であるお前を倒せなければ奴には勝てないだろうからな」


 言いながらシェダールは光線を放ち、私はそれを魔法で何度も消す。

 徐々に光線は重くなっている気がするのは調子を取り戻しているからだろう。


「それで、その“奴”ってのは誰のこと?」


「奴は大人だ。未熟な子供のお前より強いのは確実だ、だからお前を倒せなければ話にならん」


 シェダールはこちらが大人しく話し合いをしようとしてるのに光線以外にも火や水、冷気、風、雷などの魔術――無詠唱だから魔法? をこちらへ放ってきた。

 やっぱり話し合いでの解決は無理かもしれない。


 私は攻撃に転じることにした。さっさと大人しくさせて“奴”とは誰なのかその時に聞くとしよう。


 私は前に進みながら飛んできた様々な魔法攻撃を、音が周囲に漏れない様に全て消滅魔法で処理し、シェダールに手が届く距離まで迫る。

 今の私は闇の勇者のメイを上回る程度の速度で動いている。シェダールは低ランク勇者だと自称していたけど私の動きに反応出来ている。魔王だからなのかランクを偽っていたのか。どちらにしても私には関係ないのでどうでもいいな。


「子供とはいえ、流石の速さだ。勇者種族でもないただの人間とは思えんな。だがもう俺にはお前の動きは見えているぞ!」


 相手が蹴りを繰り出すけど躱した私は一瞬にして背後に回る。


「遅い、その程度で私に勝つのは無理だよ」


 私は一瞬躊躇したけど意を決して消滅魔法でシェダールの両足を消し去る。


「ぐぅぅっ!!」


 シェダールが呻く。

 支えを失った体は地面に落ちようとした。しかしシェダールは両腕を足代わりにし、器用に逆立ち状態で私から距離を取り、手のひらを向け光線を飛ばして来た。

 私は追いかけながらその光線を一発も漏らさず無効化する。攻撃は私を完璧に捉えているので対処しやすいのはありがたい。


 相手に攻撃が届く範囲に入ると、腹の部分に蹴りを入れて転倒させ、地面に横たわった体の胸に足を乗っけて動けないように固定した。

 ようやく大人しくなった――と思いきや、それでもシェダールは手をこちらに向け光線を放ってくる。


 しつこいな、さっさと大人しくなれ!

 

 と不満は顔には出さず攻撃は無効化していき、邪魔な両腕も消すことにした。余計な事をしなければ消さないであげたものを、馬鹿な男。

 肉体と違い鎧は壊してしまうと私には修復が難しいのでそれには傷一つ付けない。


「ぐぅぅっ!!」


「両手足が無くなった以上私の勝ちだね。まだやるっていうなら殺すしかないけ――」


 発言途中で今度は目から光線を飛ばして来た。至近距離からだけど問題なく無効化。


「生き残ったところでお前に勝てない俺にはもはや生きても意味は無い。殺したければ殺せばいい。だから俺はこの体が消滅するまでお前と戦う。そのためにここへ来たのだ、お前を倒し、次に奴を消し去り――」


 その言葉の途中、先程から聞こえていた足音が段々と大きくなっていることに私は気づき、音の方へ視線を向ける。音の方――森の外にはキョロキョロと何かを探しているいつもの黒い服を着たルイザがいた。

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