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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
2章 才色兼備の猫人魔術士
150/281

80 魔法 1

「俺はまだ万全ではないが徐々に力は戻っている。時間が経つほどまだ子供であるお前は不利になっていくぞ!!」


 シェダールは違和感のある言い方で煽りながら白い火球を大量に放った。


 さっきは息を吹いて消したけどさすがに数が多いと全てを同じように対応するのは面倒臭い。魔法を魔術に偽装して対応することにしよう。


「ウォーターうにょーにょ!」


 防御用の魔術なんて知らないので私は曖昧な発声で誤魔化すことにした。正面に縦横3メートルくらいの水の壁を張り、飛んできた火球を受け止めていく。

 発声は曖昧だけど発動している以上はなにかしらの魔術だと思ってくれるだろう。


 私の思惑通りかは知らないけど特に何も指摘は来なかった。


 水壁に意識を向けるとシェダールの放った火球はことごとく水壁の中で小さくなり消えていた。


「防がれるのは想定内だ。そして次に放つものもきっと防がれてしまうだろう」


 次は細長い槍のような炎を放って来たけど予言通り水壁を貫通することはなかった。


 さらにその次は手のひらから凍えるほどの風を飛ばしてきた。冷気は側面から流れ込み私の体温を奪いに来る。でも熱を遮断する障壁を張れば問題ない。


 地面の草は軽く触れると割れるほどに凍っていた。周囲に気を取られている間にも水壁の表面が凍り始める。

 シェダールは拳ほどの氷塊を放ってきた。

 水壁の凍った部分に当たると水壁の方が砕け、氷塊はまだ凍っていない水壁内の液体部分を通ろうとする。しかし勢いを殺されたそれは貫通した途端、地面に曲線を描いて落下した。


 私はすぐさま薄くなった水壁を補強するもののすぐに凍り始める。凍らない様に小さな火球を手の上で維持しながら水壁に近づけると水壁は多少蒸発しつつも徐々に固体から液体へと戻っていった。


 その後もシェダールは色々な攻撃系の魔術を放つ。私は水壁で全て受け止めていく。


 まだ相手が本気じゃないことを示すかのようにシェダールは焦る様子もなく私を煽る。


「俺は徐々に力を取り戻しつつある。攻めてこないといくらお前が強いとはいえ最後は死ぬぞ?」


 私より強いならこの目で見てみたい気持ちはあるな。ま、そういうわけにもいかないのでその前に倒させてもらうけどね。

 さて、そろそろ攻めようかと考えてはいるけどあの犬が邪魔なんだよね。ああ、そうか。邪魔なら近づいて引き剥がせばいいか。


「お望みならこちらからも攻めてあげますよ」


 私は水壁を消すと大地を蹴って風のようにシェダールの元へ飛び込んだ。視界は物凄い速さで動いていく。

 シェダールは私の速さに反応できないのか、あるいは余裕があるのか構える気配はない。

 突き進む私の下の地面が発光を始める。おそらく罠だろう。煽って来たのはやはり私を近づけてその罠に嵌めるためだったか。

 しかしその罠は私の速さに間に合わず通り過ぎた後に発動していく。地面からは牙の様な白い光が現れていた。それで貫こうとしたのだろう。まぁ当たったところで効果はないだろうけど、わざわざ当たってやる必要もない。

 シェダールの眼前に到着した。彼の周囲のすぐ近くは光らなかったのでそこにはおそらく何もなさそうだ。

 さて、犬を引き剥がすわけだけど、狙いを犬だと悟られると人質に取られるかもしれないのでさりげなく行いたい。だからシェダールの意識を逸らすために殺傷能力の低い水球を彼の上半身へ向けて放つことにした。


「ウォーターボール」


 間近で放った水球はあっさり直撃し、上半身を少し揺さぶる。水球は液体のため崩れて相手の顔を覆い一時的に視界を奪う。

 その一瞬の隙に私は犬を魔法で気絶させ、牙を外すために口に手を伸ばす。その時シェダールが犬ごと足を高速で動かしてきた。


 ビュン、と風を切った音が鼓膜を震わせる。


 蹴りはギリギリで躱した。


「やはり避けられたか」


 私は片足で不安定になったシェダールにも犬と同じように気絶魔法を掛けて見るけど崩れ落ちる様子が無い。効果が無いようだ。


「何かしたな?」


 怪訝そうに呟いたシェダールは蹴り上げていた足を私の頭に向けて落として来た。私がそれを避けるとそれは地面に穴を作り、周囲を小さく隆起させる。


 私は再び距離を取る。


 犬を剥がせなかったけどまたチャンスはあるだろう。にしてもあれだけ速く足を動かしてるのに牙が外れないとはどんだけ食い込んでるんだか。


 シェダールはその場から再び魔法でこちらへ攻撃を仕掛けてきた。私は水壁を展開し防ぐ。

 先程と同じ状況に戻った。


 さっきから飛び道具ばかりで攻撃してくるのは接近戦が苦手ということか?

 でもさっきの動きの速さと蹴りの威力からそうは見えなかった。私の実力を的確に把握していて接近戦じゃ適わないと思っているとするなら、私の実力をいつ把握したんだろ?


 逃げられたあの闇の勇者がコッテンの情報を勇者同士で共有しているのなら勇者だとかいう盗賊達が私に気づかなかったのも謎だ。いや、気づく前にシェダールに襲われたのかもしれない。

 でもシェダールはコッテンが目的って感じではないんだよね。……うーん、考えれば考えるほど訳が分からなくなる。一旦頭を冷やそう。


 今重要なのはそういうことじゃなくて相手をどうするかだ。

 もう少し防御に徹して相手の動きの変化を待ってみるか? 私に対して飛び道具が一切効果がないと感じたらきっと何かしら行動に変化が起きるはずだし。うーん、でも時間が経つほど力が戻って最終的に私より力を上回られても困る。上回る可能性が無いとは言い切れないので勝てる間にどうにかしたいところだ。

 だからといってすぐ倒そうとしても犬が邪魔になる。犬を人質に取られると厄介だから犬を助けようとしてることはバレない様にしないといけない。


 次の行動を決める前に攻撃が止んだ。

 私は水壁を展開したまま相手の次の行動を伺う。

 シェダールは棒立ちのままじーっとこっちを見つめると煽って来た。


「防戦一方か? 俺として好都合だが果たしてその壁はいつまで持つかな?」


 まだ諦めないか。さっさと負けを認めてくれるとありがたいんだけど、引く理由が今の所なさそうだよね。


 少しするとシェダールは魔術攻撃を再開した。けど更に弱いものになった。

 さっきより弱いんじゃ尚更私に勝てないはずだけどこれはどういう意味だ? ここまで露骨だと如何にも何か仕掛けてきそうだ。


 そう思ってしばらく様子を見てみるけど特に何も起きず相手の攻撃が止まってしまった。

 また挑発でもしてくるのかと構えていると周囲に小さな変化が起きた。ステラは周囲が見えてないのか無反応だ。見えてしまうと怖がるだろうな。


「集まれ、俺はここだ!」


 シェダールが声を上げると、暗闇と同化しているスライム達が彼の元へのそのそと集まり出した。

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