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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
2章 才色兼備の猫人魔術士
147/282

79 人違いじゃないですか? 1

 視線の先にはおそらく盗賊か鎧男――シェダールのどちらかがいるのは確実だろう。

 盗賊はギルド周辺はリスクがあるから行かないだろうけど、シェダールなら喜んで行くかもしれない。ギルドへ強い者を探しに向かったらルイザ達は巻き込まれてしまうだろう。

 ギルド職員が対応できないほど強い可能性は十分にあるから私がここで対応して阻止した方がいいかもしれない。

 もしかしたら杞憂かもしれないけど危険人物なことには変わらない。穏便に済ますために話し合いで解決でもするとしよう。


 電灯の光を向け続けると現れたのはシェダールだった。無傷だ。それ以外の足音はない。


 盗賊だったなら私はさっさとこの場から退散するところだけど……放置できない方が来てしまったか。


 シェダールは私の姿を見ると残念そうに呟く。


「子供か……雑魚には用はないんだがな」


 雑魚に興味が無いという事はケミー達が直接狙われる可能性は低そうだ。でも周囲に強者がいれば巻き込まれる可能性は残ってる。ゼラルドかタイムマシン研究所の消火活動をしていた魔術士は狙われるかもしれない。


「あ、どうもこんばんは。先ほどは助けていただきありがとうございます」


 とりあえずお礼を言わないとね。

 気になるのは私達に危害が及ぶかだ。先ほどの戦いで満足してくれればいいんだけど。


「シェダールさんってすごく強いんですね。この村にはあなたより強い人はいないと思いますよ」


「はっはっはっ、まぁそうだろうな。俺より強い相手がそうそういてたまるか。……ん? お前……」


 シェダールは私の何かに反応した。

 次の瞬間、彼から前触れもなく強風が吹く。砂埃が舞い、小石などが皮膚にぺちぺちと当たりちょっと痒い。

 顔を隠していたフードがめくれ、顔が露出したので私は素早くフードを被り隠す。


「あいつの面影がある。そういえばここは……そうだったな。魔力を満たすことに気を取られて忘れてしまってたようだ」


 私の顔を見た途端シェダールは余裕のある顔から険しい顔に変わった。

 風は詠唱の声も無くいきなり吹いたけど治療や身体強化以外でも詠唱の無い魔術というのもやはりあるのか?


「似てはいるが別人の可能性は十分にある。おい、お前の名前は何ていう?」


 男の表情の変化から察するにステラと似た誰かに憎しみかそれに近い感情があるのだろう。というかこっちは子供だしステラがそんな嫌われるようなことをしてるとも思えないから人違いだと思う。


(ステラはこの人の知り合い? この人、突然不機嫌な顔になったけど大人に石とか投げたことないよね?)


(こんなおじさん知らないし、人に石なんか投げないよ!)


 おじさんとは言うけどたぶん20代後半くらいか。

 ステラが知らないという事は彼が知ってるのは姿が似てるであろうステラのお母さんの方かもしれない。もしくは全くの他人か。他人だとしたらステラは無関係になる。

 とにかく面倒事なのは間違いないので名前を正直に名乗るのは避けておくか。


「私はあなたのことを知りません」


 名乗る前にそれは伝えておく。

 その言葉を聞いたシェダールは少し考え込んだ後に口を開く。


「そういえばそうだったな。お前は俺の名前を知らない」


 えーっとどういうこと? シェダールが一方的にステラに似た誰かを知ってるということなのか?


「名前だけど私の名前はリーザだよ。どう、聞き覚えはある?」


「……記憶にないな。というのもそもそもあいつの名前を憶えてなかった。たしかにそんなありふれた名前だったのは確かだ」


 そう言うと男は自身の体をペタペタと何かを探す仕草をする。名前が書かれたメモでも持っているのか?


「ちっ……どうやら名前が書かれたカードを失くしてしまったようだ」


「そうですか」


「まぁいい。名前は同姓同名の別人ということもあるからな。本当に俺が想像する通りの相手かは動きをみれば分かるだろう」


 直後シェダールからまたも強風が吹く。


 風で再びフードがめくれるけどステラの顔は既に見られたので直す必要も無いだろう。直したってどうせまた剥がされる。

 私は彼の一挙手一投足に集中する。電灯を持ったままでは相手しづらいのでポケットに仕舞った。


 風がやむのを待たずにシェダールは一瞬で目の前に来ると顔目掛けて恐ろしく速い拳を放つ。


 なるほど、これは確かに勇者を自称しただけある。闇の勇者のメイ達と遜色ない速さ。でも私には余裕で見えている。


 私は避けるために飛び退いて距離を離す。顔を少し横に逸らすだけでも良かったけど相手の実力が分からないので距離は保った方がいいだろう。相手はまだ本気ではないかもしれない。


 直後、拳速の凄まじさを物語るように砂塵が派手に舞い上がり視界を黄色がかった灰色に染める。


「ちょっといきなりなにするのさ?!」


 追撃は来ない。砂埃が晴れて視界が戻るとシェダールの何か確信したかのような顔が目に入った。


「今ので確信した、やはりお前で合ってる」

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