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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
2章 才色兼備の猫人魔術士
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76 手紙を書かなきゃ 1

 ギルドに戻った後、ルイザ達はゼラルド達の分の魔石の入った鞄をゼラルド達へ返し、その後でケミー達は自分達の袋いっぱいの魔石を窓口に運んだ。そこで査定して貰うと3人合わせて約3000ルドだった。


「やっす……」


 買い取って貰った後、待合室の椅子に座るとケミーは不満を零した。


「こんなものですわ。あとでみんなで山分けしましょう。ちなみにサービル村でのキメラ討伐の警備は1日1万ルドでしたわ」


 え、そんなに貰ってたの?

 こっちはわざわざキメラの住処にまで出向いて危険な目に会ったのに最初に提示された額はそれよりも安かったんだけど……どういうことかなディマス?

 ま、冒険者の仕事を経験するのが目的だったから不満は無いしお金はオマケみたいなもんだし、最終的にはたくさん貰えたからいいけどね。


「そう思うと魔石って儲からないんだね」


 ケミーは残念そうに言った。


「大型の魔物ほど高価な魔石を落とすのですわ。ケミー達はあのスライムでも手こずってたし厳しいかもしれませんわね」


「でも今の私にはお金が入るだけ嬉しいよ。誘ってくれてありがとねルイザちゃん!」


 ケミーにお礼を言われたルイザは照れ臭そうに二人にお金を渡していく。


 ステラは唇をへの字に曲げて羨ましそうにその様子を見つめる。

 そんな顔したって何もしてないんだから貰えないよ。と私が思っているとルイザはこっちに近づき、一拍置くと照れ臭そうに口を開く。


「ステラ、手を開いて」


 ステラが期待した顔で手を差し出すとルイザは100ルド硬貨1枚を優しく乗っけた。


「に、荷物を運んで貰ったお礼ですわ」


 ルイザは恥ずかしさを隠すようにフンッ、と顔を逸らした。

 ステラはたった100ルドではあるけど落ち込むことなくとても喜んだ。


「ありがとう!」


 お礼を言うと大事そうに四角いサイフの中に仕舞う。

 ルイザはその様子を横目で確認すると小さく笑みを浮かべた。


(どうしようデシリア。せっかく貰ったのにこのお金もったいなくて使えない)


(残金100ルドだけという状況になる可能性無いだろうし、どうせ使わないんじゃない?) 


 お金はたくさんあるわけだし無駄遣いはさせないのでそうなる可能性はほぼ0だ。


 その後はみんな色々あって疲れてたみたいで待合室から部屋へ移動することにした。

 ルイザだけは違う部屋、残りの3人は自分達の部屋に向かう。


 ケミーとキディアは汗で汚れた体を綺麗にするために風呂に入った。

 2人が風呂から上がった後、ステラは自分がいない間に何があったのかキディアに尋ねるとアニータがまた問題を起こしたことを教えてくれた。


「――って所でゼラルドさんが止めに入ってくれたの」


「そうだったんだ」


「あ! そうそう、キディア!」


 ケミーは突然大声で遮ると封筒を取り出す。

 中には1万ルド札が3枚、計3万ルドが入っていた。


「ルイザちゃんはいらないって言ってたけど……でもルイザちゃんの分を私が受け取るわけにもいかないし……どうしよう?」


 ゼラルドが3人に迷惑を掛けたからと渡したらしい。

 ケミーはルイザが受け取ろうとしないお金の扱いに悩んでいるようだ。


(一人1万ルドかぁ。向こうに行っとけば良かった~、ねぇデシリア、ちょっとお願いがあるんだけど――)


(増額は無しだよ)


 ルイザ達の所に行っておけばみんなで楽しく活動出来て、しかも1万ルドを手に入れることができた。私を選んで1万ルドだけでは割りに合わないと思ってるに違いない。


(まだ何も言ってないよ!)


(じゃあ何を言おうとしてたの?)


(だって、どっちを選んでも1万ルドは手に入るのにデシリアの頼みを聞いたらみんなとの楽しい時間だけが無くなったんだよ? 増額を要求するのは当然でしょ!)


(当然じゃないよ。気持ちは分かるけど増額は無しだよ)


 最初にお金に釣られたステラが悪いんだよ。

 ……う~ん、でも後々また似たようなことがあった時お金で釣ることができなくなりそうだよね。

 やっぱり増額しといたほうがいいか? いや、駄目か。

 もし次があればその時にまた考えよう。


 ケミーに意識を向けるとキディアにお金を渡そうとしていた。

 キディアはいらないと言って断ろうとするけどケミーは自分が困るから、と無理矢理渡した。

 なぜかステラにも渡そうとし、図々しくもステラも遠慮がちではあるけど受け取ろうとしたので私は釘を刺す。


(受け取ったらルイザに嫌われるかもしれないよ?)


 嫌われるという言葉に反応したのかビクっと一瞬震えると、受け取ろうとした手を引っ込める。


(いや、そうじゃないよ。これを私がルイザちゃんに渡しに行けば話をする口実にもなるし)


 目が泳ぐステラ。やましくないならもっと堂々とすりゃいいのに。


 ケミーはそんな挙動不審なステラを見たからか――


「ごめんねステラちゃん。もう1回ルイザちゃんに聞いて来る」


 と、ルイザの所に向かった。

 ケミーが出て行った扉を思考停止したような顔で見つめるステラにキディアが声を掛けてきた。


「ステラちゃん、話しの続きまだあるんだけど……聞く?」


 ステラが頷くと続きが始まった。

 ケミーがゼラルドからお詫びとして封筒を受け取った後に雷のような音が起きたようだ。その後の話はゼラルドから聞いたのとほぼ同じだ。


 その話の中に鎧姿の男があったけど、たぶん私達が見かけたあの男――スライムの魔石を飲み込んでた――の事だろう。キディアにはその男がスライムを狩ってたという程度の情報だけを伝える。

 もう終わったことだからかキディアはその男には全く興味なさそうだった。


 私は魔石を食ってたことまではステラへみんなに言わない様に念を押した。みんな余計な心配するだろうからね。それとその男のことはギルドに報告はしたほうがいいのかな? 魔石を食ってる人がいたからなんなんだ、という気がしないでもないしどうしたもんか。

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