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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
2章 才色兼備の猫人魔術士
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75 ルイザ達を追いかけるステラ 1

 * * * * *


 私とステラは雷のような音が気になりつつもケミー達と合流するためにまずは冒険者ギルドへと向かった。

 待合室、部屋、食堂を確認していくけどギルド職員しかいなかった。


(ルイザちゃん達まだ魔石集めしてるのかも! 今ならまだ間に合いそう)


 ステラがすぐさま外に向かおうとしたので呼び止める。


(待って、昼食は食べないの?)


 壁に数字だけ表示されてる時計を見ると既に昼の1時を過ぎていた。今食べないと中途半端な時間になってしまう。ステラは今すぐ向かいたいであろう気持ちを抑えて食堂でさっさと昼食を済ませた。

 ルイザ達はおそらく魔石集めのために魔物狩りをしているので魔物がいそうな場所を知る必要がある。ギルド職員からおおよその場所を教えてもらったので向かおうとギルドを出てすぐの事だった。


「ニャー!!」


 可愛いらしい声が耳に入る。目の前にはステラの兎猫だ。閉じ込めたはずだけどどうやって逃げ出した?


「あ、なんで外に出てるの!」


 捕まえようとすると走って離れていった。


 しかしまた振り向くと捕まらない距離を保ちながら近づいてくる。

 ニャーと鳴くとまた離れた。


「勝手に出歩いちゃ駄目でしょ! おいで!」


(ステラ、もしかしたらルイザ達の所に案内してくれるんじゃないかな?)


 確証はないけど、この兎猫は知能が高いのでそんな気がした。


「……もしかしてルイザちゃんの場所知ってるの?」


 ステラは直接、兎猫ラビキャットに尋ねると頭を縦に動かした。


(デシリア、この子返事したよ!)


 その可能性もあるけど、意味は理解してなくても声に反応しただけというのも考えられる。


(でも言葉の意味を理解してるのとは違うかもしれないよ。とりあえず本当に理解してるならついていけば分かるはず)


「じゃあ案内できる?」


「ニャー!」


 三毛の兎猫は体をピョンピョンと跳ね、ついてこいとばかりに走りだした。


(デシリア~、ルイザちゃんに早く会いたいから身体強化してよ~)


(でも楽ばかりするのはどうかなとは思うんだよね)


(私、本当はルイザちゃんの所に行きたかったんだよ? デシリアのわがまま聞いてあげたんだから私のわがままも聞いてくれたっていいんじゃないの? 急がないと魔石集めが終わっちゃうかもしれないじゃん!)


 身体強化はさすがに過剰なので、代わりに疲労が溜まったら魔法で取り除くことで対処することにした。疲労を取ってもあまり無理はできないけど体を鍛えるという面では身体強化よりはマシだ。

 強化では体を鍛えることができないし、兎猫より速く動けても場所が分からないと意味が無いからね。


 しばらく兎猫の後をついていくと丘の上に出た。

 見下ろせば遠くにクロエの館と今日巡った様々な研究所が見える。

 丘の斜面に目を向ければ草が風に揺られていてそれを見てるだけで私の心は和んだ。


「ニャーニャー」


 私が風景に心動かされていると無理やり兎猫へと意識を向かされた。

 こちらが遅いからか足の裾を口で引っ張って早くしろとばかりに急かす。


「これでも精一杯なんだから急かさないでよ!」


 ステラが怒鳴ると兎猫は人らしい戸惑った動きを見せ、控えめになった。


 さらについていくと途中で小屋を見つけた。

 小屋は柵で囲われており、柵の外側には液体のような魔物が集まっている。


(ルイザ達が倒す魔物というのはもしかしてあれのことかな?)


 ギルド職員にレンゼイスライムという液体状の魔物がいると言われたので多分あの魔物のことだろう。あれは人に危害を加えられるほどの力はないと聞いている。

 なのにそこにはボロボロの鎧姿の男がいた。

 でも襲われてる様子はない。囲まれてはいるけどそれだけだ。


 だとしたらなぜボロボロなのかと考えると犬の姿が浮かんだ。私達はクロエの館に向かう途中変な犬に襲われたんだった。

 ということはこの辺りにもあの犬と同種がいるのかもしれない。

 ギルド職員からこの辺りは危険な魔物や動物がいないと聞いていたんだけど状況が少し変わってきてるかもしれないな。後で報告しておこう。


 私はボロボロの鎧男があんな場所にいるから魔物を狩っているのかと思っていたが何やら様子が変だ。

 魔物を倒すところまではいいとして手に取った魔石を口に入れ始めた。

 男は次々に魔物を引き割いて倒すと魔石を口の中に収めていく。


「ニャーニャー」


 三毛の兎猫はそんなのはどうでもいいと言わんばかりに鳴いて私達の意識を引き付けた。

 私は男の事が気になったけどステラと兎猫はどうでもいいのか足を進めた。


 少し進むと進路を塞ぐように1匹のスライムが立ち塞がった。

 ステラは安全だと聞いたからか倒してみたいようだ。


(ねぇデシリア、筋トレとは違うんだし、身体強化お願いしてもいいかな?)


 安全とは言われているけど防具を着けていない状態では不安なため、一応軽めの身体強化を掛けてあげることにした。

 掛かったのを確認したステラは握りこぶしをスライムに思い切り振り下ろす。ビュウ、と風を切る音がした後、強化しすぎたのか相手が弱すぎたのかどちらなのか、跡形もなく弾けてしまった。

 ぶつけた地面の草も土も吹き飛ばし、拳が一つ分入る程度の小さな窪みが出来た。魔物を倒した時に落とすはずの魔石は弾けた勢いで遠くに飛んでいき、たまたま崖になってた場所の下に落ちていった。


「ああーっ! 魔石がぁぁぁ!!」


 ステラの悲痛な声が響いた。


(ちょっと身体強化を掛け過ぎたみたいだね。これでも弱く掛けた方なんだけどなぁ)


 私の想定をかなり下回る魔物だったようだ。用心しすぎたか。でも今は無駄に勇気を出す場面でもないし急いでるからこれでいいよね。


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