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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
2章 才色兼備の猫人魔術士
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61 ズレてる人達 1

「他にクロエが好きなゲームは何があるの?」


 私でも出来そうなゲームを出してくれ。


「これなんかどうかな? カッコいい男の子がいっぱい出て来るんだよ、このゲームはね……えぇと内容忘れたから一緒にやろうよ!」


 クロエが四角い箱のボタンを操作するとさっきの競争のゲームの映像が別の物に変わり、カッコいい男――私にはカッコいいのか分からん――がいっぱい映し出された。


 なにこれ? どんなゲームか全然予想できない。斬り合い殴り合いをするなら筋骨隆々とした人が出て来るだろうし、こんなヒョロヒョロだと貴族が領地経営をするゲームなのかな?


「あ、そうそう思い出した。これはね、主人公の女の子になりきって男の子達と仲良くなるゲームなの」


 予想と全然違った。でもそれをゲームって呼んでもいいのか?


(へぇ、そんなゲームがあるんだ。初めて知った)


 ステラも知らなかったようだ。


 仲良くする相手を男にしてるということは、きっとモテたいけどモテない女性のためのものだよね。

 それをゲームとして扱うのって失礼な気がする。


 だって、そういうのって容姿が優れてる人や金持ちや家格が優れてる人が有利なわけでしょ?

 持たざる者はゲームにすらならないよ。

 私は持ってる方ではあったからゲーム自体に抵抗はないけど……。でも昔の事を思い出すと腹が立ってきた。


「え、あ、リーゼ? どうしたの怖い顔して、ちょっと大丈夫なの!」


 私が思いを寄せてたエルフをあっという間に掻っ攫っていった美人のあのエルフめ!

 美人が憎い! クソったれ!!


 いや、別に私は付き合ってたわけじゃないから女が悪いとかではないんだよね。ボーっと見てて何もアクション起こさなかっただけの私が悪いんだし。……そう、私が悪い。


 よくよく考えたらそいつらはもういないのか。さすがに100万年後も生きてるわけないし。

 私みたいに幽霊になってたり……ってそこまで行くとどうでもいいな。


 なんか気持ちが萎えて来た。

 思い出すと腹が立つから考えない様にしよう。


 そういえば私って人間の男にはモテてたね。エルフの中では普通だけど人間と比べたら美人だからね、私。人間の女からは私も疎まれてたのかもしれない。

 良さそうな人がいなかったから付き合う事はなかったけどね。


 思い返すと私の生涯って誰とも付き合うことがなかったなぁ。


 なんか感情がぐちゃぐちゃだ。過去ではなく未来を向こう、未来を!


(ステラ、これをゲームと呼ぶのは失礼だと思わない? モテたくて藁をも縋る思いでこれに頼ってきてる人を絶望に落とすと思うんだ。これは上流階級の人のためのものだよ)


(は、はぁ? これゲームだしそんな真面目に考える必要ないと思うけど)


 そりゃ大真面目になるよ、人の真剣な気持ちをゲーム――遊びとして扱うなんてやっぱりどうかしてる。


「そのゲームはなんだか生々しいからいいや、他には何があるの?」


「は? 生々しい? えーと、じゃ、じゃあこれはどうかな――」


 その後、色々なゲームもやってみたけど悔しい事に全く勝てなかった。

 負けてばかりってのは楽しくないな。コントローラーを投げ飛ばしたい気分だ。


「ゲームは疲れたからもうやめよう」


 私はやめる理由に負けて悔しいからとは言わない。

 そう、クロエも疲れてるだろうな、と気を使ったからだ。

 それに私の楽しくなさそうな姿を見るのは心苦しいだろうからね。


 それにしても私の人生でここまで負けまくったのは幼少期を除いて他はあんまりない。

 ビデオゲームでは思った通りの動きができないので勝ち負け以前の話ではある。


 努力をすれば勝てるかもしれない。

 でも、努力をしようという気持ちは全く湧いてこない。


 冒険者になってもボタンぽちぽちを必要とされる場面が想像つかないからだ。

 これから先、ボタンぽちぽちしながら戦う冒険者でも出てくるんだろうか?


 そもそも練習する環境が他にあるかどうかだ。

 ステラの家にもビデオゲームはあるのかな? あってもやる必要性がないとやらないだろうな。


「私は疲れてないから平気だけど、リーゼがそういうなら仕方ないね」


 クロエはそう返して来た。その表情はまだ物足りなさそうにしている。いや、物足りないというよりは疲れてるに違いない。


 まぁともかくゲーム弱すぎてごめんね。実際に剣や魔法、殴り合いの勝負なら勝てそうだけどそんなことはしたくないよね。


 彼女は私からコントローラーを受け取ると棚の中に片付けた。


 私はふと、壁にかけてあった時計を見ると気が付けばもうすぐ昼食の時間だ。

 クロエの様子を見に来ただけなのでこれでもう十分かな。


 デシリアとして会いたかったけど……あ、そうか、伝えたいことは手紙でも書いて来れば良かったんだ。


 手紙を届けに夜にまたここに来るとするか。


「じゃあそろそろ時間なので私は帰るね」


「え……もう帰っちゃうの?」


 私が切り出すとクロエの顔が曇り始める。


 そんな悲しそうな顔されたら帰りづらい。

 でも帰るね。


「う、うん、でもまた来るよ!」


「絶対来てよ! 今日は楽しかった、ここまで楽しかったのは何年振りだろう。そういえばアロミラやベルタとは連絡は取ってたりする? 私、彼女達に全然会ってなくてどうなってるか気になるんだけど……」


 い、いや、知らないよそんな人達。そもそも今の姿の私とも初対面のはずなのにこの子は誰と間違えてるんだろう?

 でも今更訂正するわけにもいかない。


「期待に沿えなくて悪いんだけど、その子達とはもう会ってないから分からない」


「ああ、そうなんだ。そうだよね。そうか、やっぱり会えてないんだね」


「やっぱり……とは?」


「だって、何十年も会ってないんだもん。いや、100年くらい? 時間の感覚がよく分からないけど、多分それくらいは経ってるはず。それだけ時間が経てば生きてるはずないし会えなくても不思議じゃないよね。あれ……私は何を言ってるんだろう。え、でもじゃあリーゼはなんで……? そうかリーゼは100年以上生きてるんだもんね」


 私は返す言葉がすぐには浮かんでこなかった。

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