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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
2章 才色兼備の猫人魔術士
102/281

59 気が付けば怪しい恰好だけど 1

 私は噛まれてる右手を限界まで上に上げ、犬を剥がそうと試みる。

 犬はなぜか体は曲がらず、顔が下、お尻が上の硬直状態で姿勢を維持した。わざわざそんな姿勢にする意味は分からなかったけど、この犬の筋力がかなり凄いことが分かる。


(ステラ見てみて、この犬こんな状態になっても離れようとしないよ。犬ソード! ほりゃっ、ほりゃ!)


 私は犬を剣に見立てぶんぶん縦に振る。犬の足は揺れ動くけど体は意地でも曲げようとしない。


(何この犬、怖っ。遊んでないでさぁ、魔法でどうにか剥がせないの? この状態のまま館の人に会ったら絶対変な人だと思われちゃうよ。門前払い確定だよ)


 言われてみればそうだ。

 しかもそんな危険な犬を連れて行くのは失礼だし迷惑過ぎる。


 あまりやりたくなかったけど魔法で気絶させて無理やり剥がすことにした。


 無事に剥がしたもののその辺に放置するのも犬にとって危険だと思い、土で出口のない大きい犬小屋と脱水しないように水を入れた皿を魔法で作った。


 解放するのは私達が館から戻ってからだ。それまでの間ここで大人しくしてもらおう。

 もし犬の事を忘れたときのためを考えて時間経過で犬小屋は崩れるように計算して作ったので心配は無用だ。


(そこまでしなくても放っておけば良くない?)


(適当に野ざらしにしたら魔物か何かに襲われたり死なれたりするかもしれないし、可哀そうじゃない?)


(まぁ……そうだね。そんなことよりマスクの方どうにかしよう。とりあえず適当に何か作ってみてよ)


 犬は一旦置いといて、さっさとマスクを作ることにした。

 魔力の無駄遣いにならないように最低限度のシンプルな物を作ってステラの反応見ながら修正していこう。


 ということでササっと1つ作ってみた。

 作成時間は20秒程度。布のような質感で顔全体を覆いつつ目と鼻と口の部分に穴が開いた極々単純な形状だ。

 マスクが落ちないようにするために耳に細い紐のようなものを掛ける。


 素材は魔力だけで全てを賄うこともできるけど、魔力消費を抑えるためにその辺に生えてる草木や花を魔法で加工して利用した。


(ステラ、ちょっと見て見て、どうかな?)


 私は顔全体を覆うマスクを着けて反応を伺う。


(どうと言われても……顔に付けたまま聞かれても私には全く分からないんだけど? 鏡は持ってないから外してから見せて)


 ステラは私みたいに霊体なんてものがないから顔を見るには鏡が必要なの忘れてた。

 鏡を持ってないので外してからマスクの表側を見せるとステラは少し困った反応を見せる。


(あー……こんなんでも無いよりはいいよね)


(これで行ってもいいかな?)


(……そういえば会って何を話すの?)


 1度会っただけだし、よく考えてみるとどんな話題を振ればいいんだか分からないな。


(何も考えてなかった。でもいつも基本一人らしいし寂しい思いをしてそうだから年も近そうなステラに興味を持ってくれるかもしれないよ)


(へぇ、同じくらいなんだ。でもさ、年が近いからと言って話が合うとは限らないよ?)


(どうせもう2度と彼女には会わないだろうし、ステラと気が合わなそうだったら私がずっと相手しておくよ)


(いや、私は話はしないからデシリアが全部対応してよ)


 まぁ私が会いたいわけだし、全部私が対応するのは当然か。


(分かった、私が全部対応するね。それでマスクはどうする? 気になる所があるなら直すよ)


(口と鼻だけ覆って目は出してもいいんじゃないかな。そうした方が自然だし警戒されないと思うよ)


 ステラの意見を聞きながらマスクを改良していく。


 そして出来上がったのは鼻より上半分を切り取ったマスクだ。


(これだと顔を覚えられそうだしもうちょっと何かあった方がいいんじゃない?)


 これだけじゃステラが不安みたいなので頭にかぶる物も作ることになった。

 そうなると今度は服装の方も不安になったようでさらに色々追加していき体は賑やかになっていく。


 最終的にステラの容姿はこうなった。


 口と鼻を覆ったマスク。

 顔部分は覆われてない鉄の兜。

 肩から膝くらいの長さの魔法で作ったマント。

 金色に染色した服と髪、ついでに魔法で髪は伸ばし、お尻まで届く長髪になった。


 マントはいらないと思っていたけどステラが何故か推してきたので作ることになった。 手作り感が強く見栄えが悪いのでちゃんとしたものが欲しいならお店で買った方がいいだろう。

 染色した服と髪は魔法で簡単に戻せるので問題ない。


(これくらいやれば大丈夫でしょ。じゃあ行っていいかな?)


(うん、いいと思う。この目立つ姿だけが印象に残って私の顔なんて覚えられないだろうし、もしギルド近くで会ってもいつもの姿じゃ絶対気づかれないよ。あ、それと髪が伸びたのは嬉しいけどルイザちゃんにまた変人と思われるから後で元に戻してね)


「う~、ワンワン! がうううがううう!!」


 気が付けば犬は目覚めていた。


(ひぃぃっ! 早く館に向かおうよ!)


 ステラって犬が苦手なのかな? 反応が過剰な気がする。

 犬小屋から解放するとまた襲って来そうなのでしばらくそのまま閉じ込めておくことにした。

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