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03




 宝仙寺(ほうせんじ)知世(ちせ)天摩(てんま)晶紀(あき)は二人とも意識がはっきりとした状態で保健室に『ストレッチャー』に乗せられて運ばれた。

 保健室に着くと、児玉先生は保健の先生に事情を話すと教室に去っていった。

 児玉先生が見えなくなると、保健の先生は保健室の扉を開けて中に戻る。

 扉の所には保健室の担当の先生の名前が、札で下げてあった。

佐倉(さくら)あやみ』

 佐倉先生はテーブルに置いてあったタブレットを手に取ると、女生徒の様子をうかがった。

 二人は、個別に保健室のベッドに寝ていたが、仕切りがある為、互いの顔は見られていない。

 佐倉先生が一人のベッドの横に立つと、言った。

「名前を教えてくれるかな?」

 佐倉先生は、長い黒髪、大きく輝くような瞳が特徴的だった。そして百八十はあるかという高身長。突き出た胸とお尻、そしてくびれた腰。すべてがセクシーと表現する類の形の整った姿をしていた。

 名を問われた女生徒は答える。

宝仙寺(ほうせんじ)知世(ちせ)です」

「おお、おぬしが宝仙寺か」

 保健室の先生は、タブレットに確認のマークを点けながらそう言った。

「な、なんですの。先生とは言え、失礼です」

「すまん。おぬしの噂は聞いておった」

「ですから、どういう噂ですの」

「学園一の美少女ということだ。この学校にはモデルやら芸能人の娘やらが大勢いるんだが、そのなかでも宝仙寺は五本の指に入ると……」

 知世は布団を顔にかけて隠れてしまう。

「しかしながら、あまり目立った成績や活動がないから、よく知らんかったのじゃ」

「目立つことは好きじゃありませんの」

「まあ、姿が美しければ自然と目立ってしまうがの」

 タブレットを見ながら、佐倉先生は言った。

「それで、痛いところとか、気分がわるいとか、そういったことはないか?」

「ありません」

 佐倉先生は、知世が被っている布団を引きはがしながら、

「ちょっと顔を見せてみろ」

 と言った。そしてケースから体温計を取り出し、知世に渡す。

「体温を測って」

 体全体を頭からつま先まで眺めるようにみて、言う。

「どこか打ったところとかは?」

「ありません。隣の天摩(てんま)さんが助けてくれたのです」

 言い終わると同時に体温計が計測終了を知らせる音を鳴らした。

 受け取った佐倉先生がタブレットに記録すると、テーブルから除菌シートを取って体温計を拭いてケースに収める。

「熱も無いようだ」

 そして、何も言わずに聴診器を耳に付け、知世のブラウスのボタンを外していく。

「えっ……」

「念の為、心音を確認するぞ」

 開いたブラウスから、白いブラが見える。佐倉はたんたんと聴診器を当てて音を確認する。

 知世のブラウスを片手で軽く合わせてから、聴診器を耳からはずす。

「綺麗な心音だ。これ以上検査をするひつようもなかろう」

「教室に戻っても?」

「戻ってもいいし、しばらく横になっていてもいい」

「……」

 そのまま佐倉はしきりの反対側に寝ている天摩の方に移る。

 ブラウスのボタンをはめながら、知世は隣の様子が気になって、仕切りの隙から様子をうかがった。


 佐倉先生は、ベッドで横になっている天摩にたずねる。

「名前を教えてくれるかな?」

天摩(てんま)晶紀(あき)

「てんま?」

 知世から佐倉先生の表情は見えなかったが、明らかに声の調子が変わったのは分かる。

「もしかして、恐山校(おそれざんこうから転校してきたというのは」

「……はい。私です」

 と聞くと、佐倉はいきなり晶紀のブラウスの襟口から胸に向かって手を入れる。

『あっ!』

 晶紀の声と、覗き見していた知世の声がシンクロした。

 佐倉はその声に気付かないのか、ゆっくりとまさぐった後、ブラウスから手を引っ張り出す。

「『神楽鈴』はどうした」

「えっ…… なんでそんなことを」

「!」

 佐倉は、突然、晶紀の首を両手で絞め始めた。

「くっ……」

 知世は佐倉を突き飛ばしてでも晶紀を助けよう、と思うのだが一切体が動かない。

『どうして!』

 言葉は声にならなかった。口はかろうじて動くのだが、思いが声として出せないのだ。呼吸をして瞬きをするだけ。声も出せなければ、手足を動かすことも出来ない。

「……」

 晶紀が苦しみながら口をパクパクと動かしたかと思うと、保健室のどこからから小さい鈴一つ飛んできて、佐倉と晶紀の間に落ちた。

 落ちた鈴が、どす黒く膨れ始めると佐倉の身体をベッドから遠ざけた。その黒い物体は、黒い髪、白いシャツに、黒のスーツの上下を着た、小学生ぐらいの背格好の少年に変わった。少年は佐倉とベッドを引き離すように、グイグイと押し広げていく。

 佐倉は少年の力に耐えきれず、晶紀の首から手を離す。

「ごほっ」

 晶紀がベッドで体をねじるようにして咳をする。

 佐倉は少年を見て言う。

「式神……」

 晶紀がベッドの上に立ち上がると、左手で何かを要求するように手招きした。

 すると、少年になった鈴が飛んできた場所と同じ方向から、今度は二十センチほどの沢山鈴が付いた棒が、投げらかのように飛んできて、晶紀の左手に収まった。

「やる気なの?」

 首を押さえられていたせいで苦し気な声でそう言う。

 すると、急に佐倉が笑った。

「なんだ、神楽鈴(かぐらすず)は持っているじゃないか。なら何故身に着けていない? あのまま私に絞殺(しめころ)されたらどうするつもりだったのじゃ」

「何がおかしい」

「恐山よりやって来た天摩の()よ、気を抜くでないぞ。敵はどこからあらわれるかわからん」

「……だから、誰なんですか、あなたは」

 神楽鈴をつきつけながら言うと、佐倉は両手でそれを下げさせるような仕草をする。

「怖がらなくともよい。(わし)佐倉(さくら)あやみ。天摩の者を助けよと言われておる」

「さくら、って聞いたことないけど。味方? なんだよね?」

 佐倉はうなずく。 

 晶紀は神楽鈴を握りしめたまま、ベッドにあぐらをかくと、

「おどかさないでよ」

 と言ってから、

「三倉戻れ」

 と言うと少年が元の鈴に戻り、晶紀の手に戻ってくる。晶紀が鈴を神楽鈴に収めた。

 知世は様子を見ながら『そんな簡単に信用しないで』と思いながら見つめる。

「神楽鈴は肌身離さず持っておかんと、隙をつかれるぞ」

「わかるけど」

 確かに巫女の恰好をしている時は、懐にいつも忍ばせていた。しかし、学校の制服でそれをすると、違和感半端ない。

「制服の胸には入れられんだろ?」

「しらん。そこは己で何か考えろ。そうじゃ、ほれ、どこか痛いところはないか?」

「……首」

 晶紀が指で絞められた首を指差して言った。

「嫌味を言うでない。教室でなんかあったのじゃろ」

「ああ。背中が少し痛いよ」

「見せてみろ」

 佐倉が晶紀に近づいていったかと思うと、いきなりブラウスのボタンを外し始めた。

「あっ…… なんでそれまで取る必要あるんだよ」

「綺麗な胸をしているな」

「だっ、だから触るなって」

「ただ触っているのではない。触診というものじゃ」

 知世からは、しきりや佐倉の体が晶紀と重なって、肩や首筋がチラチラ見えるだけだった。

 見たいと思って必死に体を動かそうとするが、体が動かない。

「ほら、胸はもういい。背中を見せろ」

「なんだよ、勝手にいじりまくっといて」

 腕で胸を押さえながら、体を回して背中を見せる。

 ポニーテールのうなじから肩、背中からこしのくびれが見える。何のしみもないきめ細かな肌。知世は、どうにも動かない体に、必死に力を入れる。

「ほう……」

 腰回りから手を当てて、次第に上にずらしていく。

「なんでそういう触り方なんだよ」

「だからいっておるじゃろうが。これは触診というものだ」

 手が脇の下から肩のあたりまで動いたところで、佐倉は言う。

「別にレントゲンをとったりCTスキャンする必要もなさそうじゃな」

「あたりまえだろ」

 そのまま、晶紀は知世に向かって背中を見せたまま、ブラをつけブラウスを羽織った。

 ボタンを留めて、佐倉の方に向き直る。

「もう教室もどっていいか?」

「ああ。戻るときは宝仙寺を連れて行ってくれ」

「?」

 ブラウスのボタンを開けたまま、ベッドから降りると、仕切りを回って隣のベッドを見る。

 目線だけを動かして、言葉を言わない知世をみて、晶紀が言う。

「おいサクラ。なんで宝仙寺さんに術をかけた」

「いろいろと年ごろの女子に見せたら刺激が強いものがあったからな」

 晶紀はため息をつく。

「待ってて、宝仙寺さん。今すぐ金縛りを解いてあげるから」

 知世は眼球だけを動かして晶紀の動きを追う。

 上履きを脱いでベッドに上がり、背中側に回り込んだ。

 腕を取られて背中に足か何かを押し当てられ、グッと開くように両腕を背中側に引かれる。

「わっ!」

 と、突然知世の声がでた。

 自由になった手を目の前に持ってきて確認すると、知世は振り返って晶紀に抱きつく。

「ありがとう」

 佐倉がニヤニヤしながら晶紀の顔を覗き込む。

 晶紀は頬を赤くしながら、

「何見てるんだよ」

 腕を組んでいる佐倉の顔が締まった表情に変わった。

「二人とも元気になったのなら教室に戻れ。本来、この場所は具合が悪い者の為にあるのじゃ」




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