追撃
「……見つけた!」
ツインテが誘拐されたという報告の後、俺は早速行動に移っていた。
見ているのは黒と黄色の画面。
その画面の一点に映る激しい点滅を見つけるのは難しいことでは無かった。
光っているのは赤外線。俺が男の逃げ去る間際な付けたのは、赤外線を発生させる装置で、人間の目には見えないそれは、暗視装置越しに簡単に見ることができるものだった。
俺は装備を用意して歩き出す。
もちろん、向かうは点滅を続ける光の場所……敵の所だった。
「……本当に1人で行くの?」
そんな時、リナに服を掴まれる。
その瞳は不安で満ちており、その表情に心を揺さぶられるが、今回ばかりは耐えるしか無い。
「リナをこれ以上危険な目に会わせたくないんだ。すまない」
「……私じゃない女の所に行くんだ」
「リナ……こればかりは…」
「……大丈夫。そんなこと言うほど嫌な女じゃないですよーだ」
胸に軽い衝撃。
飛び込んできたリナを優しく受け止める。
「……絶対帰ってきてね」
「当たり前だ」
軽く重なる唇。
数秒の短い時間触れ合ったそれは、名残惜しそうに離れていく。
そして最後にリナは笑顔を浮かべる。
それを背に受け、俺は今度こそ歩き出す。
そして思う。
これ、死亡フラグじゃないよな?
「リーダー!その傷は…!?」
「ドラゴン殺しだ。俺以外は全員やられた」
その事実に動揺が走る。
男が逃げ帰った先、カッツェルト北方にある誰も住んでいない屋敷に、残ったシュバルツフントのメンバーは集合していた。
魔食を誘拐した3人と、この屋敷に待機していた1人のメンバーの元へ足首から先を失ったリーダーが帰還し、状況を説明する。
「危険の排除は失敗。さらにそいつも魔食じゃない。魔食はドラゴン殺しと一緒にいたよ」
「……は?ならこいつは……」
「ただの女だ」
目線の先には椅子に括られた少女。
気絶させられているのか、金髪のツインテールはだらんと垂れ下がったまま動かなかった。
「くそっ!なら任務は全て失敗か!どうするんですかリーダー」
「……一旦引くぞ。本国に戻る。準備し……」
男がそう言い切る前に、爆音。
何かが破裂した様な、乾いた音に何事かと3人が思う中、リーダーである男だけが、その音を知っていた。
「ドラゴン殺しだ!奴が来るぞ!」
「遅くなったな。道案内ご苦労さん」
開く扉。
その先には、巨大な何かを持って現れたドラゴン殺し……トーヤの姿があった。
戦闘に入る前に一回区切りました。
次話では、ミンチ製造機とも言われるみんな大好きなとある銃が登場します。乞うご期待!