誘拐
「トーヤ殿!無事だったか……!」
もう大丈夫、とリナが落ち着きを取り戻した頃。
本来の姿に戻った廊下。その奥から聞こえた声に視線を向ける。
こちらに向かって走ってくるのはガリアと数人の兵士。
全員が完全武装で、戦闘した様子は無いものの、走り回っていたのか、全員の額には汗が浮かんでいた。
「一体何があったんだ?」
「暗殺者……シュバルツフントとか言ってた奴らが俺を殺しに来た。1人逃したが、他の奴らはここに転がってるよ」
「シュバルツフント……!?これは帝国の……!」
ガリアが地に伏す敵の死体を見て驚愕する。
後ろの兵士も同様に、動揺とざわめきが伝わってくる。
「……トーヤ殿。とりあえず今の我々の状況を説明したい」
しかしそれもすぐに抑え、ガリアが真面目な顔に戻る。
しかし、その冷静な顔に含まれる焦りを見逃しはしなかった。
「我々は先ほど、何者かの襲撃を受けた。ここに転がる死体を見るに、敵は帝国軍で間違い無いだろう。………そして、ユーシスティア様が誘拐された」
ユーシスティア……あのツインテがなぜ?
領主の孫娘だから、と言っても、わざわざ特殊部隊まで動員して誘拐するには釣り合わない。
ガリア達を見るに、恐らく被害は俺たちとツインテだけなのだろう……余計に何故かがわからなくなる。
俺の場合は危険の排除……と敵が言っていた。しかし………
と、そこまで考えて思い出す。
奴ら、魔食の存在を知ってたよな。
「ユーシスティア様直属の護衛騎士2名は死亡。我々が駆けつけた頃にはユーシスティア様の姿はすでに無かった」
敵はチームを2つに分けていた。
リナの魔食の発動を見た時に、なぜ魔食がここに、と驚いていた敵を思い出す。
そして逃げる直前の言葉。
もしかして、敵のもう1つの狙いは魔食……つまりリナだったのか……?
そう考えると、敵がなぜツインテを攫ったのかも簡単にわかる。
……敵は魔食の少女をツインテだと間違ってたのか。
どこでそうなったのかはわからない。
だが、そうなった原因が俺にあると分かったら、無視することもできなかった。
「ユーシスティア様が誘拐されたとわかった後、我々はトーヤ殿を探して……トーヤ殿?」
「トーヤ?」
「……ツインテを助けに行く」
俺の様子に心配するガリアとリナに短くこう告げる。
恐らく、ツインテを殺さずに誘拐したという事は、魔食はもともと生け捕りにするつもりだったのだろう。ならば、ツインテをすぐに殺すという事は無い。
そして、恐らく敵はここから逃げる前に一旦集合する。
ならば、追撃する時に使えると思って付けておいたアレが役に立つ。
「逃げられると思うなよ……」
俺は早速行動を開始する。
目標はもちろん、リナを狙う脅威の排除。あと、ツインテを助けることの2つである。
あくまでもリナが第一なトーヤさんです。
ここまで読んでくださってる皆様、本当にありがとうございます。
頑張ってこの調子で書いていこうと思うので、ご意見ご感想もよろしくお願いします。




