魔食
「それじゃいつまでたってもジリ貧じゃねぇのか?英雄様よっ!」
戦闘は続く。
敵の3人が人間とは思えないスピードで接近してくる。
俺はじわじわと後退しながら射撃を続けるが、拳銃弾が一点の攻撃だとわかったのだろう。上下左右と的を絞らせないように動き始めた敵に追い詰められ始める。
しかし、狙い所が無いわけでもない。僅かに空いた一瞬の隙に弾丸を撃ち込むが、あっけなく刀で弾かれる。
肉薄されてからは白兵戦だが、経験で勝てるわけもなく、致命傷は避けながらも、ダメージが蓄積する。
「ほらほらどうしたぁ!?」
……あいつ、バーサーカーになってないか?
最初見たサラリーマン風の顔はなんだったのか。男の顔は戦いに飢える猟犬へと変貌していた。
再び、吹き飛ばされる。
これと同じことが続くのだ。ジリ貧にもなるだろう。
……だが、次で終わりだ。
「同じ手を食らうかよぉ!」
再び接近され、肉薄される前にとカバンから取り出した閃光弾。
栓を抜き、空中へと投げるが、男が俺から標的を変え、閃光弾を破裂前に真っ二つにする。
しかし、隙はできた。
俺は一気に距離を離し、残弾がなくなってホールドオープンしたCz-75SP-01を見て、カバンに手を入れる。
この戦闘中なんども見せたリロードの時間。それを見逃すほど敵は甘くなかった。
「この時は攻撃できないのはわかってんだよ!いい加減くたばれや!」
3人の敵が決着を付けようと、回避行動を捨てて'一直線'に向かってくる。
思わず口角が上がった。
「ぐはっ!?」
射撃。
直撃を受けた敵が吹っ飛ぶ。
刀で捌ききれない、複数の弾丸が敵の肩あたりから左側を抉り取っていたのだ。
「なにっ!?」
続けて射撃。
後ろへと飛ぶ仲間を見て、慌てて回避行動をとった敵だが、拡散した弾の全てを避けることはできない。
肘と脇で銃を固定し、腰だめ状態での射撃。
セミオートで撃ち出される残弾が、避けきれなかった男の右足首を吹き飛ばした。
「……まだ隠し玉を持ってやがったのか」
「狩りには持ってこいの武器だ。狼を撃つのに丁度いいだろ?」
カバンから取り出したのはベネリM1014セミオートショットガン。
弾丸はダブルオーバック。拳銃弾を弾く超人も、9発同時には無理だったようだ。
拳銃が決定打にならないことは最初の方にはわかっていた。
結局この戦闘で拳銃弾を当てることができたのは、閃光弾での奇襲の時のみ。本来ならその後の戦闘ですぐにショットガンに切り替えるべきだったのかもしれない。
だが俺はCz-75SP-01を使い続けた。
敵は未知の相手だ。だからこそ勝負は一撃で決める必要があったのだ。奥の手など使われないように、一撃で。
そのための隙を作った。わざわざ同じ戦闘を繰り返し、リロードという最大の隙を見せた。
そして、掛かった敵に、また奇襲を行った。
これで帝国軍侵攻の時に見せたバリアのようなものを使われて無効化されたら勝ち目は無かっただろうが、まぁこれはただ運が良かったのだ。
右足をなくし、バランスが取れない男にM1014を向ける。
敵はあと2人。
1人は見ての通り行動が制限された。残る1人は……いない?
視界から消えた敵を探す。また魔法か?と思った瞬間。
「動くな。動けば女を切る」
敵はリナの首筋に短刀を当てていた。
「リーダー。今は撤退だ。ドラゴン殺しはまた今度で今回はあの女だけを……」
恐らく逃げるための人質だったのだろう。
短刀を握る手と逆の手はしっかりとリナの体を掴んでいた。
知らない男にリナの体を触れられていることに怒りを覚えるが、今はそれどころじゃない。
リナの体に触れること。それは魔力を持たない俺しかできないのだ。
魔食が、始まる。
「ぐ……うわぁ……」
男が苦しみだす。
体が震え始め、リナに触れる部分が、青白く光る。
その光はまるでリナに吸い込まれるかのように、どんどんと流れる。
とうとう耐えきれなくなったのか、男が崩れる。
その拍子に短刀がリナの首を薄く切る。
血が滲む。しかしそれは一瞬で、次の瞬間には青白い光が傷口に集まり、光が治る頃には白く綺麗な首筋に戻っていた。
一連の出来事が終わる。
敵は倒れ、リナは悲しそうに目を伏せる。
静寂。俺自身初めて見た魔食というものに、呆然としていた。
「……なぜ、魔食がここに……」
そんな時、男が呟く。
その言葉には違和感があった。
「なぜ……とはどういうことだ?」
「魔食はあの少女じゃないのか……?こっちにいるのが魔食ってことは、あっちは……くそっ!」
「おい!逃げるな!」
片足で男が逃走を図る。
その場から跳躍し、窓ガラスをぶち破る。
しかし、以前のような速さはない。俺は男が飛び込む直前に、ある物を男に付けた。
再び静寂。
戦闘は終わった。
いつの間にか風景は変わる。
違和感があった長い廊下は消え、陽が完全に落ちた暗い廊下に、俺とリナは佇んでいた。
突然の暗殺者。そしてリナの魔食の発動。
逃げた男の口ぶりからして、まだ何かあるのも明白だった。
「……トーヤ……私っ!」
しかし、今はリナを抱き締める。
安心できるように、優しく、抱きしめることしかできなかった。
この話を投稿する前に、読者さんから散弾銃で決着がつくのではないか、と言われてしまいました。
……まさか読者さんにネタバレされるとは思ってませんでした。
これからは先の読めない展開が作れるように努力します。たぶん無理ですけど




