表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつかお姫様と  作者: 清水 秋葉
8/10

成長

-ほかほか-


大学が始まった。

授業ではなく、健康診断からのスタートである為帰宅は早い。

僕は誰かと回ることなく

誰かを待つことなく検査を受けていく

すんなりと、大体30分もあればすべて終わる。

大体の生徒はそのあと遊びに行くのだが

僕はそのまま帰宅した。

きっと女も友達と遊んで帰ってくるのだろう

久々に一人での夕食になる

何処で食べようか、そんなことを考えていると

女が帰ってきた

遊びに行くわけでもなく、そのまま帰宅したそうだ

僕は予想外のことで戸惑った

別にこれから悪事をしようと考えていたわけでもないのに

女に対して、申し訳ない気持ちを抱いた

女以外の夕飯を食べようとしていた

ただ、それだけのことなのに

暫くすると女はいつものように

「今夜は何が食べたい?」と聞いてくる

それにいつもの僕は「あっさりしたもの」「こってりしたもの」という

曖昧な答えしか出していなかったが

今日は違った

僕の口から、気づかぬうちに零れ落ちたかのように

「外食をしよう」と言ったのだ

その瞬間、ハッと思い返し、否定した

どうせまた断られる、と思ったからだ

しかし女は「なにを食べに行く?」と続けてきた

僕はとっさには何も思いつかず、歩きながら決めることにした

学生街にはラーメン屋、居酒屋、ファーストフード店ばかりで

夕飯に相応しい店は少ない

しばらく歩くと定食屋があったが、それならば女の料理の方がいい

何かないかと、探していると回転寿司店を見つけた

「寿司でも食べないか」というと

「あなたが食べたいものなら何でもいいよ」と答えてくれた

正直、食べたいわけではなかったが回転寿司屋に入った

店はすいていて、待たずにテーブル席に座れた

カウンターは落ち着かないので、一人が基本の僕には久しぶりの寿司だ

席に座り、注文をして、お茶を入れたあたりで僕は聞いた

「なぜ、今回は一緒に出掛けてくれたのか」と

女は「私を理由にして誘ったわけではなく、しっかり自分からデートに誘ってくれたから。だから今回は誘いにのったの」という

たったそれだけのことだった

僕の誘いを断っていた理由はたったそれだけのことだった

僕は怒りを感じた、しかしすぐに消え

すぐに恥ずかしさがこみ上げてきた

やはり女は気づきながらも断っていたと知ったからだ。

僕は聞いた

「じゃあ、また素直に言えばデートにいってくれるか」と

素直に、デートと言う言葉を使って聞いた

こっぱずかしさがあって使えなかった言葉が使えた

女はとても綺麗で、可愛らしくもある笑顔で答えた

「もちろん、いつでも」

会話が終わると注文していた寿司が流れてきて、会話は終わった

僕はお茶をすする、そして目を瞑る

閉ざしていた心の扉が、冷え切っていた氷塊が

扉の開ける音を、氷塊が溶け始める音を

耳を澄まして聞くために


僕は少し大きくなれた

僕が素直になりました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ