episode39
あぁ、面白くない。実に面白くない。翔汰、晴、澪里の3人は先の2人を見てそんな感想を抱いた。今まで、ろくに関係してこなかった癖に。絡んでこなかった癖に。そう言うドロドロとした感情が心を占めている。そんな3人の様子に気がついた美幸は、その淀んだ空気に身体がゾクリとした。そんな重たい空気を破ったのは、聖だった。
「ねー、なんでこんな空気悪くなってんの?あ、自分達が出来ないからって僻んでんの?ダッサイよ?」
「な!おい聖!黙って見てれば好き勝手したり、言ったり...!もう我慢ならねぇ!」
そう言うと翔汰は聖に殴りかかろうとした。しかし、その手を遮ったのは他でもない美幸であった。
「ちょっと!皆やめて!喧嘩なんてらしくないよ...!なんでこんな事になってるのさ...。」
「そ!れは...、お前が拒否らないからだろ...!」
「拒否する間もなくされたんだから仕方ないでしょ?!」
美幸と翔汰が言い争っていると、晴と澪里も乗っかってきた。
「ヨシ君!僕たちともチューしよ!それで皆公平になるから!ね?」
「美幸君。僕も澪里に賛成です。ここは公平になるようにしましょう。」
「え?!」
そう言うと、晴は美幸の手を引くとそっと抱きしめキスをした。そしてその次は澪里。そして翔汰へと続いた。もう美幸は何が何だか分からなくなっていた。そして推し達からされるキスに、頭が爆発しそうなくらいだった。
「ハァハァ...。もう...よして...?」
美幸からの懇願で、やっとやんだキスの嵐。ファンサが強いにも程がある。ファンサの過剰摂取は心臓に悪い。そう思っていると、全員から言われたのはただ一言。
「「これはただのファンサなんかじゃないから」」
この言葉に何も言えなくなってしまった美幸。ファンサじゃなかったら一体なんなんだ?まさか、皆本気で...?いや、そんなまさか。心を占めるのはそんな自問自答。そう固まっていると、翔汰が口を開く。
「別に今すぐに1人を選べなんて言わねぇよ。ただ、いずれは...、な?」
そう言われ全員の顔を見る。皆ライブの時に見せるような真剣な眼差しを自分に向けてきている。それだけでこれが冗談なんかじゃないと分かる。これは自分も本気で応えないといけない。そう感じるのだった。...とりあえず視線が痛いので今この場をどうしめるか考える必要がある。
「...皆の気持ちはよく分かったよ。でも今は皆の気持ちに応えることは出来ない。オレも新しく仕事を始めたばかりだし、皆は新曲にドームツアーが待ってるし。答えを出すのはそれからでも遅くはない...よね?」
そうやって答えを先延ばしにして逃げるの自分はなんてずるい人間なんだろう。そう思う美幸であった。




