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追放された第三王子は、統治スキル【国家盤面】で 腐った領地を数値で立て直す ~前世は「死神」と呼ばれた再建コンサルタント~  作者: 四角いりんご
第3章:大砲の次は「ビジネス」で国を獲る。第4区の事業再生と、王宮を追い詰める見えない包囲網

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第11話:将軍の悲痛な怒声と、正体不明の三大マフィア。――データなき異常な戦争を読み解くため、コンサルタントは「現場」へ向かう



竜人王国からの使者との会談に、俺は同席できなかった。


サホは「彼は私の最も信頼する補佐官だ」と強固に同席を求めてくれたが、使者側が「身分も定かではない一介の商人を、国家間の極秘会談に入れるわけにはいかない」と頑なに拒否したのだ。

 非常に怪しい匂いがしたが、無理を通して外交問題にするわけにもいかない。俺はサホの護衛としてゴードン将軍たち軍のトップを数名同席させ、別室で待機することになった。


一時間後。

 会談を終え、疲れた顔で執務室に戻ってきたサホから、俺は報告を受けた。


「……それで、使者の要求は何だったのですか?」

「大きく分けて三つよ」


サホはソファに深く腰掛け、眉間を揉みながら答えた。


「一つ目は、第4区との国交を深めたいという表面的な挨拶。

 二つ目は、王都で行われる『勇者召喚の儀』への参加と協力の要請。

 そして三つ目は……我が第4区に対して、多額の『金銭支援』を行いたいという申し出よ」


俺は腕を組み、思考を巡らせた。


一つ目はいい。問題は二つ目と三つ目だ。

 勇者召喚の儀。数年に一度、王都で行われるという、人類の希望たる勇者を異世界から呼び出す(あるいは強制徴兵する)システム。人類全体で隣の魔大陸へ魔王を倒しに行くための『一大プロジェクト』だから、大国である竜人国が各都市に念押しをしてくる理由は、建前上は分かる。


(だが、俺から言わせれば、何百年も結果を出せずに若者の命と国家予算を浪費し続けている、最悪の『不良債権サンクコスト』だがな……)


俺はその腐ったシステムに対して言いたいことが山ほどあったが、今は口を噤んだ。

 それよりも不可解なのは、三つ目の『金銭支援』だ。


「……なぜこのタイミングで、竜人国が支援を? ムラニ商店を追い出して、我々が資金繰りに困っているとでも思ったのでしょうか」

「分からないわ。ただ、支援金には必ず『紐』がつく。安易に受け取れば、竜人国に内政干渉の口実を与えることになるから、一旦は保留にしておいたわ」


「賢明な判断です」


表向きは特に怪しい恫喝などはなかったようだが、不自然さは拭えない。

 世界を裏で操ろうとしているような彼らの動きには、引き続き警戒が必要だ。



使者が帰還した後、休む間もなく軍部との予算会議が開かれた。

 マルティーニを追放して以来、財政の最終的な決定権も領主であるサホが握っている。


「……ですから、兵士の新規雇用と防具の調達のために、さらなる予算の増額をお願いしたいのです」


円卓の向こうで、ゴードン将軍が重々しい声で頭を下げた。


「ゴードン将軍、気持ちは分かりますが……」

 サホは手元の帳簿を見ながら、苦しげに首を振った。

「繊維産業の利益が出始めているとはいえ、インフラ整備や下水道計画にも莫大な資金が動いています。軍事費ばかりに予算を回すわけには……」


ドンッ!!


突如、ゴードン将軍が分厚い拳で円卓を叩きつけた。

 普段は物静かで、どっしりと構えている彼が、珍しく顔に青筋を立てて声を荒げたのだ。


「予算のバランスなどと言っている場合ではないのです、領主様! 現場では今も、毎日兵士たちが死んでいるんだぞ!!」


会議室に、将軍の悲痛な怒声が響き渡った。


「先日の要塞陥落だけで、数百の命が消えた。我々の誇り高き部下たちが、訳も分からぬまま焼き殺されている! このままでは、前線は完全に崩壊するッ!」


彼は単なる戦闘狂ではない。亡き妻の分まで子供を愛し、そして部下を家族のように思う、不器用だが情に厚い武将なのだ。彼がここまで取り乱すほど、前線の状況は悪化しているということか。


「……将軍」

 俺は静かに口を開き、彼の燃えるような視線を受け止めた。

「その、要塞を落としたという敵……『赤の精霊』について、詳しく教えていただけますか。なぜ我々の正規軍が、マフィアの集団ごときにそこまで押し込まれているのですか?」


「……それが、分からんのだ」


ゴードン将軍はギリッと歯を食いしばり、悔しそうに唸った。


「『赤の精霊』。火魔法を自在に操るということ以外、連中が何者なのか、どこから武器を仕入れているのかも一切不明だ。

 しかも、混合王国の紛争地帯には奴らだけではない。残虐な『青虎』、得体の知れない『茶軍』と呼ばれる巨大な武装集団がおり、三大マフィアとして互いに殺し合っている。まさに地獄のようなカオスだ」


軍のトップですら、敵の正体を把握していない。


「その中でも、特に『赤の精霊』は最近急速に力をつけ、紛争地帯の『海のエリア』を完全に制圧したらしい。海上貿易のルートを独占し、莫大な資金力で我々の領地にまで牙を剥き始めている」


海のエリア。

 この乾燥した第4区には海はないが、隣接する混合王国の向こう側には、豊かな海洋ルートが存在するということか。そこをマフィアに押さえられているのは、今後の貿易拡大においても致命的な障害になる。


「……なるほど。状況は理解しました」


俺は顎に手を当て、深く思考の海へと潜った。


事業(戦争)において、自社のリソース(軍事力)が削られているにも関わらず、競合他社(敵組織)のデータがこれほどまでに不足しているのは異常だ。

 誰が彼らを裏で支援しているのか? なぜ急激に力をつけたのか?


(竜人国の不自然な使者。ムラニ商店の武器の行方。そして、得体の知れない三大マフィア)


すべての点と点が、見えない糸で繋がっているような気がしてならない。

 机の上で数字を見ているだけでは、これ以上の真実は掴めない。


「彼らを、もっと深く理解すべきです。戦況という『現場』を、我々自身がもっと知らなければならない」


俺の言葉に、サホとゴードン将軍がはっと顔を上げた。


コンサルタントとして、現状分析の次に行うべきは、市場の徹底的なリサーチだ。

 俺は、血と硝煙の匂いが渦巻く最前線——『紛争地帯』へと自ら足を踏み入れる決意を固めていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【後書き】


お読みいただきありがとうございます!


第11話、いかがだったでしょうか。

竜人国からの不自然な使者と、ゴードン将軍の悲痛な叫び。

順調に発展しているように見えた第4区ですが、外側(最前線)では三大マフィアが入り乱れるカオスな状況に陥っており、軍は限界を迎えていました。


「敵のデータが足りない」と判断したルイ。

机上のコンサルティングから一転、ついに彼自身が危険な最前線(紛争地帯)の視察へと向かいます!

そこで待ち受ける「赤の精霊」の正体とは……!?


「ゴードン将軍、部下思いで良いキャラ!」「前線の視察、面白そう!」と思っていただけましたら、

ページ下部にある『☆☆☆☆☆』から、評価ポイントを入れて応援していただけると、執筆の大きな励みになります!


※次回の更新は【金曜日19時】を予定しております!


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