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追放された第三王子は、統治スキル【国家盤面】で 腐った領地を数値で立て直す ~前世は「死神」と呼ばれた再建コンサルタント~  作者: 四角いりんご
第3章:大砲の次は「ビジネス」で国を獲る。第4区の事業再生と、王宮を追い詰める見えない包囲網

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第7話:若き領主の「完璧なハッタリ」と、国家を喰らう巨大な闇。――死神コンサルタントは、裏工作でブラフを『真実』に変える

マルティーニを失い、武器の独占供給ルートと既得権益を脅かされた『ムラニ商店』の動きは早かった。

数日後、彼らは第4区の治安の悪さを逆手に取り、莫大な資金を投じて各地から『傭兵』や『荒くれ者の冒険者』を大量に雇い上げ始めたのだ。  表向きは「商店の護衛」と称しているが、その実態は領主であるサホに対する明確な武力威圧である。新しく立ち上げる繊維工場や、インフラ整備の現場を物理的に破壊し、彼女の改革を力ずくで頓挫させる腹積もりだろう。

だが、サホもただ怯えて待つようなかつての彼女ではなかった。

「……近隣の都市の領主たちへ、早馬を出しなさい! 緊急の援軍要請よ!」

執務室で、彼女は次々と部下たちに的確な指示を飛ばしていた。

「報酬は、倉庫に眠っている『最高級の布』の在庫をすべて差し出すと伝えなさい。……ええ、そうよ。金貨の代わりに現物支給。王都の貴族向けに作って売れ残っていたあの布なら、彼らも喜んで受け取るはずよ」

部下たちが慌ただしく部屋を出て行くのを見送り、彼女はふう、と息をついてデスクに手をついた。

「見事な采配です、サホ様」

壁際で控えていた俺が声をかけると、彼女は少しだけ誇らしげに口角を上げた。

「……100パーセント対等な取引じゃないわ。高級布とはいえ、在庫処分に近いもの。でも、彼らに実際に血を流して戦わせるつもりはないの」

「ハッタリ(ブラフ)ですね」

「ええ」

サホは力強く頷いた。

「私が欲しいのは、ムラニ商店の傭兵たちを上回る『圧倒的な頭数』よ。近隣都市からの援軍という形をとって兵を並べることで、私がいざとなれば他都市を巻き込める力を持っていると錯覚させる。……もし本当に戦闘になりそうなら、援軍にはすぐ逃げてもらって構わないと裏で伝えてあるわ」

彼女の作戦は、極めて理にかなっていた。  無力で孤独な女性領主というイメージを数の暴力で払拭し、ムラニ商店側の戦意を削ぎ落とす心理戦。自分の手札(売れない在庫)を最大限に活かした、見事な交渉戦略だ。彼女は本当に、よく考え、領主としての才能を開花させつつある。

……だが。

(彼女の戦術は完璧だ。相手が、ただの『一介の悪徳商人』であれば、だが)

俺は表情を崩さず、内心で冷たく分析を続けていた。

この数日間、俺はサーシャや第2区の情報網を使い、ムラニ商店という組織の資金の流れ(キャッシュフロー)を徹底的に洗っていた。  そこから見えてきたのは、単なる一都市の武器商人などというチンケなものではない、底知れない巨大な闇のネットワークだった。

ムラニ商店には無数の兄弟店やダミー会社が存在し、第4区だけでなく、王都や第1区、果ては隣国の混合王国にまで根強い組織網が広がっている。  帳簿を辿れば、莫大な資金が国境を越えて血液のように巡っているのがはっきりと分かった。彼らは単に武器や軍事部品を売るだけでなく、『情報』を極めて素早く仕入れ、各国の紛争の火種をコントロールしている節がある。

そこで俺の脳裏に、ある一つの疑念が浮かび上がった。

(……サクレアの反乱。あの時の異常なまでの武装スピード)

数ヶ月前、南部のサクレアが急激に軍事力を拡大し、バールに牙を剥いた事件。  当時から違和感があったのだ。サクレア単独の生産力で、あれほど短期間に大量の武器を揃えられるはずがないと。  もし、あの裏で糸を引いていた——あるいは武器を供給して戦争を煽っていたのが、このムラニ商店(軍産複合体)だったとしたら?

彼らが明確にバールに敵対しているのかはまだ分からない。だが、他国の血を吸って肥え太る、徹底的な『利益至上主義』の化け物であることは間違いない。

つまり、だ。  サホが近隣都市に援軍を要請したところで、ムラニ商店の巨大なネットワークと資金力があれば、道中で伝令を握り潰すことも、近隣都市の領主を買収して援軍を止めることも容易い。  仮に援軍が集まったとしても、彼らの情報網なら「あれが戦う気のないただのハッタリである」とすぐに見抜かれ、容赦なく蹂躙される可能性が極めて高い。

盤面の広さが、違うのだ。  サホは第4区という盤面で最善の一手を打っているが、相手は国境を跨ぐ巨大な盤面でゲームをしている。

「……ショウ? どうしたの、難しい顔をして」

サホが不思議そうにこちらを見た。

「いえ。サホ様の成長ぶりに、感服していたところです。その作戦でいきましょう」

俺は深く一礼した。

彼女の自信を、ここで折るわけにはいかない。彼女には、領主として表舞台で堂々と采配を振るってもらう必要がある。

(ならば、ハッタリを『真実』に変えるまでだ)

彼女のブラフがバレて叩き潰される前に、俺が裏で盤面そのものを支配する。  俺は執務室を辞すると、廊下で待機していたサーシャに目配せをした。第2区の圧倒的な経済力と、俺自身のネットワークを総動員する時が来たのだ。

一介の商人が、国家規模の死の商人に喧嘩を売る。  コンサルタントとしての血が、静かに、そして熱く沸き立っていた。


読者の皆様へ。

まずは、しばらくの間、更新がストップしてしまい誠に申し訳ありませんでした! 続きを楽しみに待ってくださっていた皆様には、ご心配とご迷惑をおかけしてしまい、心よりお詫び申し上げます。

私生活のバタバタがようやく落ち着き、執筆の時間をしっかりと確保できるようになりました。 今後の更新スケジュールにつきましては、毎日や2日に1度というハイペースではなく、 クオリティを落とさずにじっくりと物語をお届けするため、【1週間に1〜2話の投稿】というペースで連載を再開させていただきます。

これからは無理のないペースで、ルイたちの活躍を最後までしっかりと書き上げていきますので、どうか引き続き応援していただけますと幸いです!

さて、本編ではサホが立派な領主として奮闘する中、ルイが「ムラニ商店」の巨大な闇に気づきました。サクレアの事件とも繋がる黒幕の影。 サホのハッタリを成功させるため、コンサルタント・ルイが裏でどんなエグい手を打つのか……!

「更新再開嬉しい!」「ルイの裏工作が楽しみ!」と思っていただけましたら、 ページ下部にある『☆☆☆☆☆』から、評価ポイントを入れて応援していただけると、執筆復帰の何よりの励みになります!

次回の更新も、どうぞお楽しみに!


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