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レヴェナント旅団

「なんだ?  そのレヴェナント旅団って?」


「おい嘘だろ、ゼノ!? レヴェナント旅団の名前も聞いたことねーのかよ!?」


「アーシャさん、それは仕方ないと思います。レヴェナント旅団が活発的に動き始めたのは、ここ数年のことですから。その間、ゼノ様は迷宮で魔女さんと一緒に修行に励んでいたはずです」


「なるほど……。だから、聞いたことがないのか」

 

 モニカのフォローに、ゼノは納得しながら頷いた。

 

「それで、そのレヴェナント旅団っていうのは、どういう連中なんだ?」


「簡単に言えばよ。大陸中で残忍な反逆行為を繰り返している非道な連中のことだぜ」


「反逆行為?」


 ここでゼノは、アーシャからレヴェナント旅団について詳しい話を耳にした。




 レヴェナント旅団は、現代の魔法至上主義の考え方に反発しており、原点回帰を掲げている、とアーシャはまず口にする。


 人魔大戦後から人々は間違った方向に進み始めたと彼らは主張しているようで、再び大地を焦土に戻し、そこからもう一度やり直そうというのが、レヴェナント旅団の思想であるようだ。

 

 構成員は、メルカディアン大陸全体で100人ほどいると言われており、普段はその素性を隠して日常生活を送っている。

 だが、反逆行為を行う時は、鬼士と呼ばれるリーダーのもとに集って悪事を働く。




「……鬼士は全部で7人いて、皆が別々に行動を取るって言われているぜ。それぞれが術使いのエキスパートで、これまで何人もの冒険者がヤツらを捕らえるために挑んだみてーだが、未だにそれは叶ってないぜ」


「だから、イニストラードの冒険者たちは、クエストを受けなかったのか。かなり危険な集団みたいだな」


 ゼノが神妙な顔で頷いていると、受付カウンター越しにティナが補足を加えてくる。


「はい。つい数日前、カロリング領にあるラチャオという村が、レヴェナント旅団によって焼き払われてしまったようなんです」


「えっ!? あの村がっ……」


「モニカさんはご存じなんですか?」


「は、はいっ……。カロリング領は、以前に滞在していたことがあったんです。その時、ラチャオの村にも寄ったことがあって……。あんなに綺麗な村だったのに……ひどい……」


 モニカは、口元を押さえて俯いてしまう。

 以前の村の状況を知っている身からすれば、とても居た堪れない気持ちに違いなかった。


 ティナはモニカに目を向けながら話を続ける。


「ですが、幸いにも村の方たちはすぐに逃げ出したようで、その後、周辺警護に当たっていた侯爵騎士団に保護されたみたいです」


「えっ、じゃあ犠牲者は出なかったんですか!?」


「はい。その点は安心してください、モニカさん。けれど……村は徹底的に破壊されてしまったようです。復興するには数年はかかるだろうって、あちらのギルドの方は仰ってました」


「そんな……」


 再び肩を落とすモニカの横で、ゼノはティナに訊ねた。


「でも、なんでそれがレヴェナント旅団の仕業だって分かったんでしょうか?」


「レヴェナント旅団はよ。反逆行為を行った後に、その場に自分たちの旗を残していくんだ。まったく、人をバカにした連中だぜ」


「アーシャ様の仰る通りです。それと、レヴェナント旅団は、一度狙った地域で複数回に渡って反逆行為に出るっていう特徴があります。ですから、このまま放っておけば、カロリング領の領地でまた、何か被害が出る恐れがあるんです」


「そういうこと……なんですね」


 ゼノは、アーシャとティナの話を聞いて一度押し黙った。

 思っていた以上に、危険なクエストだと分かってしまったのだ。


 そんなゼノの考えに反応するように、モニカが小さな声でこう続けてくる。


「……ゼノ様。この依頼は危険だと思います。イニストラードのギルドの方には申し訳ないですけど、今回はお断りして、別ギルドのSランク冒険者の方にお願いしてもらった方がいいんじゃないでしょうか……?」


「アタシもモニカの意見には賛成だぜ。さすがに、ゼノも危ねーって分かってて、受けることを勧めるのはアタシにはできねー」


 普段は、強い相手と戦える際は乗ってくるアーシャだが、今回はかなり弱腰だ。

 それだけ、レヴェナント旅団が危険だという証でもあった。 


「でも、モニカ。別ギルドのSランク冒険者が、今回の依頼を必ず受けるとは限らないよ」


「それは、そうですけど……」


「それに、こんな風に迷っているうちに、カロリング領でまた、新たな被害が出てしまうかもしれない」


「……け、けどよ! ゼノだって危ねーんだぜっ?」


「……」


 ゼノは、彼女たち2人の姿を見ながら考えた。

 たしかに、モニカとアーシャを危険な目に遭わせるわけにはいかない。


「……分かった。俺が1人でイニストラードへ行って話を聞いてくるよ。モニカとアーシャは、一旦、ここで待機していてくれ」


「本当ですか、ありがとうございます! ゼノさんなら、きっと受けてくれると思ってました」


「おい、ティナ! てめぇ、ギルドに仲介料がたっぷり入るからって、ゼノを乗せてんじゃねーぜ!」


「い、いえっ……。私はただ、ゼノさんなら引き受けてくれると思ってただけでっ……」


「それ以上、勧めるようなら父様に言いつけるぞ!」


「アーシャ様ぁ……それだけはご勘弁してくださいぃ……」


 そんなやり取りを横目に見ながら、モニカがゼノに訊ねてくる。


「ゼノ様、本当に受けるおつもりですか?」


「うん。新たな被害が出るかもしれないって分かっていて、放っておくことはできないから」


「……やっぱり、そうですよね。分かってました。ゼノ様ならそう仰るって」


「?」


「ゼノ様が行くのでしたら、わたしもご一緒させていただきます」


「いいのか……? 危険なクエストだぞ?」


「だからこそです♪ ゼノ様に何かあった時、すぐに癒して差し上げるのが聖女の務めですから♡」


「おい、ちょっと待て! 本当にいいのかよ、ゼノ!? 話聞いてただろっ? レヴェナント旅団は相当ヤバいんだって」


「たしかに……俺が敵う相手じゃないって思うよ。けど、このままだと本当に、新たな被害が出るかもしれない。誰かがそれを止めなくちゃいけないんだ。それに、イニストラードのギルドの方は、俺たちを信用して依頼を出してくれたと思うんだ。なら……俺はその期待に応えたい」


「っ……。ゼノ……」 


 アーシャは、まっすぐすぎるゼノのその言葉を聞いて、思わずドキッとしてしまう。

 

 次の瞬間。

 手をぶんぶんと振り回しながら、顔を赤くさせて叫んだ。


「くぅぅ~っ! あんた、どこまでイケメンなんだよぉぉーー!? また、惚れちゃったじゃねーかぁ……!!」


 そして、背中に装着したクロノスアクス・改を引き抜くと、高々と掲げて宣言する。


「よっしゃ! そーゆうことなら、アタシも一緒に行くぜっ! モニカと2人きりでイチャイチャなんてさせねーんだからな!」


「動機が不純ですよぉ、アーシャさん」


「そっちだって、ちょっとはそれ狙ってたんだろーが」


「えへへっ♪ バレてました?」


 何だかんだ言いつつも、モニカもアーシャもついて来てくれるようだ。


「ありがとう……2人とも」


 ゼノは彼女たちに深々と頭を下げる。


 それから、ティナにクエストを受注する旨を正式に伝えると、ゼノは手続きを済ませるのだった。

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