1章ー20話 居場所 後編
遅くなりました!
なかなか納得できるものが書けずに
すみませんでした!
ひとしきり泣き続け、落ち着き始めると後悔がシンヤを襲う。心配して不安だったクロエを慰めるはずが、気づくと自分が号泣していた。
恥ずかしい。
誰かの前で泣くこと自体、子供の頃以来無かったことだった。それもまだ知り合って間もない年下の女の子の前で、あまりの羞恥に、シンヤは何事も無かったかのように座っているクロエの顔を、直視することが出来ない。
「あの、クロエさん?」
「うん? 大丈夫シンヤ? だいぶ泣いたし、まだ身体の痛みもとれていないでしょ」
無言に耐え切れなくなったのか、シンヤは意を決して視線を合わせないように話しかけるが、クロエは男のプライドを的確に抉ってくる。身体は動かせば激痛が走ってくるがそれよりも心の傷が痛かった。
「あの、忘れてくれると嬉しいのだけれども……」
「気にしないでいいよ。男の子だって泣くんだから。アルなんてすぐにわたしに泣きついて来てたのよ」
羞恥に悶えるシンヤを見てクロエは懐かしそうに微笑んだ。
「あの頃は楽しかったなぁ。父さんがいて母さんもアルもいて……」
「……クロエはどんなところで育ったの?」
シンヤは聞くべきか迷ったが、笑顔のクロエを見て問いかけることにした。
「……わたしが生まれ育ったのは帝都のお城の中」
「皇女様なんでしょ?」
「元よ、国も無くなってしまったのだからもう違うわ。それに小さい頃は他国との戦争も無くて平和だったし、兄さんが優秀だったこともあって、アルとわたしは割と自由に育てられたの」
シンヤは皇女様といえば、物語の中に出てくる自由も何もない、稽古ばかりの生活を想像していたが、どうやら違うらしい。
「昔は本が好きで、城の書庫で一日中アルと本を読んでたなぁ」
「クロエ、本好きなんだ」
「うん。だって知らないことを知るってすごくわくわくしない? 魔法も神々の事も最初は本を読んで覚えたの。料理の本を読んだときは厨房を借りて練習して、魔石の本を読んでからはしばらく研究室に籠りきりになって、アルを巻き込むなって父さんに怒られたっけ……」
興奮するように口調を速めて言葉を紡ぐ彼女は、遠くを見るような目で上を向く。その後もクロエは、楽しかったことや怒られたことを嬉しそうな顔で話続けた。
「それでね。アルってば姉さんは一つの事に夢中になると周りが見えなくなるから、って言うのよ。失礼な弟でしょ? ……でも何かあれば庇ってくれたりして、楽しかったな」
「いい弟だったんだね、アルベルトさん」
「うん」
「それとクロエ、研究とかするんだ。意外かも」
広間でこの世界の事を教えてくれたウォルマーが、クロエと研究していると言っていた事を思い出したが、目の前の女の子と研究というイメージが合わない。
「ふふっ。こう見えてその辺の学者よりは知識豊富なのよ。きっとわたし達がこの世界の理を戻して見せるわ」
自慢げに微笑むと、クロエはぐっと手を握ると腕を上げた。
「頑張ってクロエ、おれも出来る事は手伝うからさ」
「ありがとうシンヤ。……身体の痛みもすぐに引くってリネットも言ってたから、今日はもう休んで。起きて身体が平気そうならわたしの研究室見せてあげるから」
そう言うとクロエは椅子から立ち上がり、扉の方に歩いていく
「ねぇクロエ」
「なに?」
「村は……、結界は大丈夫なの?」
起きてからずっとシンヤの心に沈んでいた不安を思い切って聞いてみる。
「大丈夫。安心して、村も結界も無事よ。詳しくは明日教えてあげるから今日は寝てね」
「そっか。ありがと」
そう言うと今度こそクロエは部屋を出ていった。
この世界では結界の外で夜を越すことは難しい。
もし仮に、この村の結界が無くなってしまったら、ここで暮らしている人々が生き残ることは困難だろう。
見知らぬ自分を助けてくれたここの人達の為に、出来ることは少ないが、やれるだけやろうとシンヤは心に誓う。
そうして痛む身体を動かし横になるとすぐに意識を手放した……。




