第8節:ソディウム・ヴェイパー(まぼろし)
なんだか一人称視点小説じゃなくなったような気がしますが……
【これまでのあらすじ】
私、神! ごく普通の中学二年生――の娘を持つ父親! 本当はこの小説の地の文を担当することで宙界の安定を保とうとしたかったけれど、ふとした手違いから地の文を主人公に乗っ取られてしまったの! しかもダーウィンやニーチェといった私を冒涜する猿共の手によって命を狙われ大ピンチ! デデーン(効果音)! ――になるかと思っていたけれど(ここで背景が明るめの色に変わる)、読者の皆様の応援のおかげで無事地の文に復帰できました! パチパチパチ~~。
と、いう事で! 私の復活の為にPV数を稼いでくれた皆様に感謝して今回は、特別デラックスゴールドラグジュアリーエクゼクティブキャンペーーーーン! を! 実施したいと思います! どこが特別デラックスゴールドラグジュアリーエクゼクティブなのかは読んでみてのお楽しみ!
それでは! 第8節のはじまりはじまり、レッツゴー!
深青の空がソディウム・ヴェイパーに妖しく彩られる午後6時。英語で言えばイルミネーション。ソファラのフォーミュラ・マシンとも呼ばれた名馬『観念丸』は主人公、ツカサの二人を乗せてメトロポリスを疾駆する。
「風が心地よいな、ツカサ」
少年は笑う。手首のロ○ックスが輝く。馬上の激しい風音の中でも彼の声は鈴のように良く通るのだ。
「そうだな」
コックピットに座る少女も微笑む。大変な美形だ。聡明さの中に優しさを秘めた瞳。ハワイにあるワイキキビーチとかのような魅力を感じさせる唇。九十九里浜を連想させるようなよく通った鼻筋。総合して言うと古今東西如何なる宝石貴金属類も彼女の美貌にはかなわないということだ。ちなみに肩に掛けたワニ革の鞄にはすごいブランド名が印刷されているが私はフランス語が読めない。
彼らの目的地は天を衝くスカイスクレイパー――ソファラ・ノクティス・タワーである。2036年竣工のこの160階建てのビルは高さ800メートル(もちろんソファラ随一の高さだ)を誇り、複合商業施設、オフィス、シティホテル、博物館、映画館、水族館及び動物園を併設する。159階に設置された展望台からの眺めは、かのファラオ・ラメス2世をして極東のハコダテマウンテンをも凌駕すると言わしめる――そんな全ソファラ市民の誇りともいえる摩天楼の最上階に彼女の自宅は位置しているのだ。
二人はタワーの専用ゲートに名馬『観念丸』を横付けし、英語、国語、数学①、数学②、地理歴史、公民、理科①、理科②というセンター試験の各科目を象った8重のセキュリティーゲートを通過して、『エスカレータ式進学號』と名付けられた専用の超高速エレベータに乗り、向かった最上階には――
「げえっ! レ○ニン!!」
嗚呼、なんてことか! 資本主義の権化たる摩天楼、ソファラ・ノクティス・タワーの最上階で待ち受けていたのはこともあろうにレー○ン! ウ○ジーミル・レーニ○! あの有名な極悪共産主義国家、ソビエト○シアの指導者である! 主人公のツカサ自宅押しかけプロジェクトを阻止するべく現れた、最後にして最大の障害!
「Вам не нужно пугаться…….」
○ーニンが口を開けると地獄の釜の蓋を爪で引っ掻き回したような不快でおぞましい声が響きわたる。ツカサは思わず身震いした。
さらに、レ○ニンの全身からは血のように紅いコミュニズム・オーラが立ちのぼる。このオーラは部屋中の高級調度品を破壊し、代わりにマルクス主義のたっぷりしみ込んだ規格品へと置き換えてゆくのだ! 豪奢を極めたラグジュアリールームも今や一般ソビ○ト風アパートメントの一室当然である!
「なんて酷えことを! もう許さねえからな……!」
激昂するツカサをレー○ンは一笑する。
「Ха-ха-ха! Тебя манипулируют. Это всего лишь злой сон!」
「畜生……何て言っているかサッパリわからねえ……」
打ちひしがれた表情をするツカサにレーニ○は追い打ちをかける。
「Коммунистические вмешательства!」
すると突然轟音が響き、○ーニンの口から深紅に輝く破壊的な光線が発射された。冷戦期間中ア○リカを悩ませたソビエ○側の必殺技、共産主義ビームである。光線はツカサの黒髪を掠め、主人公の袖口を焦がし、こちらに向かって――私の目の前に――――――
一応『神』は第四の壁を知覚できる設定です。
それにしてもどこかから怒られないか心配になってきた。下ネタならまだしも政治ネタは今後しばらく自重します。小さなお子さんもお読みになられるかもしれないので。