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バッドエンドの転生者  作者: 避雷心
序章Ⅰ.v
9/114

メイドのミシェル03

「ミシェル、お腹に2人目がいるの」

「………………、おめでとうございます」

「迷惑をかけるわね……」


薄々と、主人のお腹が膨れてきている事には気付いていたが、その言葉を聞くまで、確信を持つ事は出来なかった。

以前のミシェルなら、膝から崩れ落ちて落ちていたかも知れない。


だが、今の彼女は、不思議と落ち着いていた。

言葉にこそ、詰まってしまったものの、おめでとうと言う言葉に嘘偽りは決して無い。

何より、ユークラウドを抱えたまま、激しく動揺して、腕の上で危険にさらしてしまう事こそ、ミシェルは恐れている位だ。




あの男は、この家で一週間ほど療養を行い、ゴルディ家へと帰って行った。

その間、主人の気遣いで、ミシェルがあの男と顔を合わせる事は許されず、ユークラウドの世話をのみが仕事となる。

一週間もの間、主人の世話を出来ないと言うのに、不思議とミシェルの気分は落ち込まず、寧ろ、充実していたと言えかもしれない。

その後、三ヶ月に1回あの男がここに通うようになった時も同じ様な心持ちだった。


どこが違うのだろうと、ミシェルは考える。

余計な事を除けば、日常自体には、そんなに変わっていない筈だ。


主人の為の支度を済ませ、ユークラウドの横で売り物を作り、「ミシェルだけに任せてる訳にはいかないわ」なんて言って仕事を取っていく主人の家事の手伝いをし、忙しい主人の代わりにユークラウド面倒を見て、主人の労を労い、ユークラウドが寝るまで付き添う。

以前とは何1つ変わらない筈なのに、その1つ1つが今の彼女にとって輝いて見えた。


逆に、変わったと言えば、主人がミシェルに何も言わず、ベッドの模様替えをした事くらいか。

家の外の出来事なら、お隣に家に人が住み始めた何て事も当てはまるだろう。


他には、日々は変わらないが、気付かなかった事に気付いたなんて違いもある。

主にユークラウドの行動について。


何と無くだが、ユークラウド様は私の言う事を感覚的に分かってる気がする、というのがミシェルの見解。

ミシェルがお話を読み聞かせているときは、黙って聞いているし、家の中で、一度念入りに探索した場所を、二度目はスルーする。

全然泣きませんねぇとミシェルが褒めると、怪訝に思われてると勘違いしたかの様に、次の日から泣く事が増えた様な気もした。


まるで、この年から、多くの事を理解している様な行動だった。

もしかしたら、物事を感覚的に捉える能力に長けているのかも知れない。

ユークラウド本人にその気はないだろうが、ミシェルの心は何度も癒されていた。


生まれ付き、魔力量が多いと、脳の成長が早いと言われており、ユークラウドもそれに当てはまるかも知れない。

決しておかしな事では無く、寧ろ、それが本当なら、生まれつき、ユークラウドは多くの魔力を保有しているという事になり、喜ばしい事である。

もしそうなら、きっと、主人と同じで、優秀で優しい子に育つのだろう、と。


そこまで考えて、漸く、ミシェルは、自分の中の何が変わったのか分かった。

ミシェルという人間は、少し前まで、主人史上主義とも呼べるほど、主人を盲信する人間だったのだ。

それが今では、ユークラウドの将来をこんなにも楽しみにしている。

それが、唯一無二の答えだった。


その時のミシェルは、自分が数年後、ユークラウドが上手く魔法を使えず、教えるのに四苦八苦する羽目になり、自分の非力さに膝を抱えて落ち込む事になるなんて、知る由は無い。




その後、主人のお腹の子が順調に大きくなり、ユークラウドの面倒を見る事が増えたり、主人のケアをする為に、お隣にユークラウドを預ける等の出来事がありつつも、無事に主人の第二子である女の子が産まれる事になる。


産まれた子はクリスティーナと名付けられ、何処か主人の面影を感じさせた。

髪の色は主人とあの男を足して割った様な、淡い黄色だったが、嫌だなんて思うことは無く、

ただただ、嬉しそうな主人と、産まれてきた女の子と、どこと無く誇らしそうにするユークラウドと一緒にいれる事を幸せに感じていた。

ミシェル


魔術型


属性魔法適正

「風」「土」


状態魔法適正

強化系列「治癒」

付与系列「付与」


親は居らず、姓は存在しない。

5歳の頃に主人に引き取られ、10年以上フェイディ家に使えていたメイド。

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